2011 Fiscal Year Research-status Report
膜タンパク質の再構成マトリックス材料となる含フッ素擬環状型人工脂質の開発
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23590039
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
高木 俊之 独立行政法人産業技術総合研究所, 幹細胞工学研究センター, 主任研究員 (10248065)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | 擬環状脂質 / フッ素化脂質 / ペルフルオロアルキル基 / 膜タンパク質 / バクテリオロドプシン / 単分子膜 / 二分子膜 / ベシクル |
Research Abstract |
本研究では、安定人工脂質膜の設計・機能評価、膜タンパク質ハンドリング剤の設計・機能評価、人工脂質・膜タンパク質複合化、複合体の機能性基板への固定化・機能評価により、安定な脂質・膜タンパク質複合体を利用したバイオセンサの開発研究を行うことを目的とした。人工脂質として含フッ素擬環状型人工脂質を提案し、含フッ素擬環状人工脂質の合成経路の確立(高純度・高収量で多種多様な脂質群の合成可能な経路探索)を行った。 二鎖型炭化水素系(天然型)脂質の含フッ素化体、擬環状型炭化水素系脂質および同じ炭素骨格を有する含フッ素擬環状脂質(親水基はホスホコリン基)の合成を試みた。まず初めにアルキル鎖の炭素鎖長14のDMPCの含フッ素脂質合成を検討し、アルキル鎖末端にペルフルオロブチル基(F4)およびペルフルオロエチル基(F2)を導入できる高効率な合成経路を確立した。炭化水素系擬環状脂質の合成において、中間体での純度および収量の低下が見られたが、最終目的物を得ることに成功した。本合成経路を基に含フッ素擬環状脂質合成を検討している。 合成した含フッ素脂質の界面特性評価として、Wilhelmy法による平衡拡張圧(πe)測定、示差走査熱量(DSC)測定および環境変化敏感プローブを用いた蛍光測定を行った。機器測定の結果から、ペルフルオロアルキル基の導入により気水界面における単分子膜安定性が向上すること、ゲル-液晶相転移温度はペルフルオロアルキル基の導入により低くなること、膜表層付近の流動性が高いこと、などの知見を得た。さらに膜タンパク質バクテリオロドプシン(bR)の再構成基材としての有用性として、含フッ素脂質膜へのbRの再構成条件の検討を行い、bRの再構成膜の作製に成功(紫外・可視吸光(UV)測定および円偏光二色性(CD)測定により確認)した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
震災により大型機器(NMR、ドラフトなど)などの使用制限、輪番停電などの節電対策により、当初の研究予定を大幅に遅れるものと考えられた。しかしながら、最終目的物である擬環状脂質の合成に成功したこと、比較対照となる含フッ素脂質への膜タンパク質の再構成に成功したことからおおむね順調に進行していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度の合成条件を基に、含フッ素擬環状型およびその比較対照となる炭化水素系擬環状型脂質の合成を試みる。さらに種々の機器測定による界面特性評価を行い、膜タンパク質再構成膜として利用できる高配向秩序で適度な膜流動性を有するマトリックスを目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
目的化合物合成に必要な有機試薬(フッ素試薬など)および有機溶媒、実験器具(ガラス器具など)の購入、さらに物性測定時に超純水を大量使用するため超純水製造装置を購入を予定している。また、得られた成果を国際学会で発表するための経費も計上している。
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