2011 Fiscal Year Research-status Report
酸化ストレスの画像化のためのSPECTプローブの開発
Project/Area Number |
23590041
|
Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
鈴木 紀行 千葉大学, 薬学研究科(研究院), 准教授 (10376379)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | 酸化ストレス / バイオイメージング / SPECT / 癌 |
Research Abstract |
本研究は、生体深部組織における酸化ストレスの非侵襲的なバイオイメージングを目的とし、それを可能とする新規SPECTプローブの開発を行い様々な酸化ストレス関連疾患の画像診断への応用を目指している。 平成23年度には、プローブの設計・合成およびそのin vitroにおける評価を行った。このプローブには体内動態を制御するスイッチが必要となるが、そのための活性酸素種との反応部位として、活性酸素種の芳香族ipso位置換反応を受けるフェノキシフェノール骨格を組み込み、またSPECTのための放射性同位体標識部位としてヨードフェニル基を有する幾つかの候補化合物を合成し、そのcold体についてOHラジカルや次亜塩素酸などの生体内で生成する活性酸素種との反応性の検討を行った。その結果、いくつかの候補化合物について活性酸素種よって効率的に分子変換が起こり、分子全体のpKaが大きく変化することを示した。すなわち、酸化ストレスのイメージングのためのプローブとしての基本的な性能を有するという結果を得た。 また、本研究は画像診断の対象として特に癌をその目標に置いているが、癌組織は多くの場合低酸素状態になっており、また正常組織よりもpHが低いになっていることが知られている。申請者は上述の活性酸素種SPECTプローブの開発の中で、低酸素状態と低pH状態が同時に起こったときにのみ構造変化が起こる、全く新しいバイオイメージングプローブの候補化合物を得ており、より正確性・信頼性の高い画像診断薬へ、さらには治療薬へと展開すべく、この低酸素状態・低pHデュアルプローブについてもさらなる検討を加えていく予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初、平成23年度の研究計画においては酸化ストレスの非侵襲的なバイオイメージング可能とする新規SPECTプローブの開発を目的とし、その基礎的な検討を行う事を予定していた。そして、その計画に沿って、プローブの設計・合成およびそのcold体のin vitroにおける評価を行った。その結果得られたプローブ候補化合物は酸化ストレスのイメージングを行うに十分な活性酸素種との反応性を有するとの結果を得ており、この点で本年度の目標は達成したと考えた。また、それらのプローブ候補化合物を合成し、評価していく中で当初の計画には組み込んでいなかった、低酸素状態と低pH状態に対して集積していく、新たなプローブ候補化合物も得ることが出来た。この候補化合物は画像診断のみならず、組織選択性の高い治療薬など、様々な応用が考えられる。このような理由で、本研究は当初の計画以上に進展していると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
前年度に行った化学的な反応性の検討から、本年度には生体内での反応性の検討へと移行する予定である。まずは培養細胞を用い、候補化合物の細胞内への取り込み速度と蓄積量の評価を行う。その際、細胞で酸化ストレス状態を引き起こすような処理を行い、無刺激の細胞と比較検討する。特に、一重項酸素は活性化した好中球のミエロペルオキシダーゼにより生成することから、一重項酸素への選択制は炎症を起こした組織のイメージングを考える上で重要である。この点を鑑み、血液より分離した好中球にブラジキニン処理を行うことで活性化し、プローブの蓄積性に変化がみられるかなどの検討を詳細に行う。また、これらの結果をプローブのデザインにフィードバックし、導入する置換基やその置換位置、さらにはプローブのデザインそのものを見直すことも検討する。 そして最終的には、デザイン・合成・評価を行い最適化されたプローブについて様々な病態モデル動物を用いてin vivo イメージングを行い、候補化合物の実際のSPECTプローブとしての有用性の評価を行う。小動物用SPECT装置は千葉大学薬学部にすでに設置され運用されているため、スムーズにin vivoイメージング実験を行う事が可能である。その際、動脈硬化症などの循環器疾患、脳梗塞や心筋梗塞などの虚血性疾患、さらには糖尿病や癌といった酸化ストレス関連疾患を広く検討し、病態と酸化ストレスとの関連を個体レベルで明らかにし、それら疾病の診断への応用を図る。 また、そのin vivoイメージングの結果から、個体へ適用した際の分布や排泄などの体内動態をも考慮してプローブ構造のさらなる最適化を行い、最終的には臨床に適用可能なSPECTプローブを目指す。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
24年度以降には培養細胞を用いた実験を計画しているため、細胞培養に必要な消耗品を購入する。また、これ以降は候補化合物を放射性同位体標識したプローブを用いることになるため、放射性同位体、主にI-125の購入を予定している。また、放射性同位体標識したプローブの体内動態を評価するための実験動物の購入も予定している。
|