2012 Fiscal Year Research-status Report
酸化ストレスの画像化のためのSPECTプローブの開発
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23590041
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
鈴木 紀行 千葉大学, 薬学研究科(研究院), 准教授 (10376379)
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Keywords | 酸化ストレス / バイオイメージング / SPECT / 癌 |
Research Abstract |
本研究は、生体深部組織における酸化ストレスの非侵襲的なバイオイメージングを目的とし、それを可能とする新規SPECTプローブの開発を行い、様々な酸化ストレス関連疾患の画像診断へ応用することを目指している。 平成24年度には、前年度までに行ったプローブの設計・合成およびin vitroにおける評価という成果を引き継ぎ、それらの候補化合物の生体内での挙動について検討を行った。まずは個体での評価に先だって、生体内の主要な活性酸素発生源であるキサンチンオキシダーゼやミエロペルオキシダーゼを用いて、酵素的に産生される活性酸素を、それらのプローブ候補化合物で補足が可能かを検討した。その結果、いくつかの候補化合物について酵素反応よって効率的に分子変換が起こり、分子全体のpKaが大きく変化することを示した。すなわち、酸化ストレスのイメージングのためのプローブとしての基本的な性能を有するという結果を得た。また、これらの候補化合物について放射性同位体による標識の反応条件の検討を行い、ヨウ素125を導入した標識体を合成した。 また、酸化ストレスによる肝障害を可視化するためのプローブの設計・合成も別途行い、近年、肝の酸化ストレス障害によって活性が低下すると考えられているBSEP受容体の基質であるタウロコール酸に放射性同位体標識部位を結合した誘導体を合成した。これらのタウロコール酸誘導体については、BSEP受容体を発現したベシクルによってその輸送能を検討し、内在性の基質に較べ若干輸送能は劣るものの、SPECTイメージングを行うために十分なBSEP親和性を有することが確認された。この肝障害のSPECTプローブについても、放射性同位体による標識の反応条件の検討を行い、ヨウ素125を導入した標識体を合成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究計画は酸化ストレスの非侵襲的なバイオイメージング可能とする新規SPECTプローブの開発を目的とし、平成23年度にはその基礎的な検討を行い、平成24年度にはその成果に基づき生体内での挙動を明らかにすることを目的としていた。その計画に従い、平成24年度には酵素化学的な検討を行った結果、目標を概ね達成することが出来た。また、個体への適用に向けての準備段階として放射性同位体による標識の反応条件の検討を行い、ヨウ素125を導入した標識体を合成した。これらのことから、本年度の目標は達成したと考えた。また、酸化ストレス障害に関連して肝障害に注目し、当初の計画には組み込んでいなかった、肝の酸化ストレス障害による胆汁うっ滞を可視化する、新たなプローブ候補化合物も得ることが出来た。このような理由で、本研究は当初の計画以上に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度には化学的な反応性の検討を行い、平成24年度にはそれをうけて酵素化学的検討を行い、生体内におけるプローブ候補化合物の挙動の検討を行った。平成25年度にはそれを更に拡張し、培養細胞を用いて候補化合物の細胞内への取り込み速度と蓄積量の評価を行う。その際、細胞で酸化ストレス状態を引き起こすような処理を行い、無刺激の細胞と比較検討する。特に、一重項酸素は活性化した好中球のミエロペルオキシダーゼにより生成することから、一重項酸素への選択制は炎症を起こした組織のイメージングを考える上で重要である。この点を鑑み、血液より分離した好中球にブラジキニン処理を行うことで活性化し、プローブの蓄積性に変化がみられるかなどの検討を詳細に行う。また、これらの結果をプローブのデザインにフィードバックし、導入する置換基やその置換位置、さらにはプローブのデザインそのものを見直すことも検討する。 そして最終的には、デザイン・合成・評価を行い最適化されたプローブについて様々な病態モデル動物を用いてin vivo イメージングを行い、候補化合物の実際のSPECTプローブとしての有用性の評価を行う。小動物用SPECT装置は千葉大学薬学部にすでに設置され運用されているため、スムーズにin vivoイメージング実験を行う事が可能である。その際、動脈硬化症などの循環器疾患、脳梗塞や心筋梗塞などの虚血性疾患、さらには糖尿病や癌といった酸化ストレス関連疾患を広く検討し、病態と酸化ストレスとの関連を個体レベルで明らかにし、それら疾病の診断への応用を図る。 また、そのin vivoイメージングの結果から、個体へ適用した際の分布や排泄などの体内動態をも考慮してプローブ構造のさらなる最適化を行い、最終的には臨床に適用可能なSPECTプローブを目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度以降には培養細胞を用いた実験と共に実験動物を用いた個体での動態検討を計画しているため、細胞培養に必要な消耗品と共に、実験動物や動態解析に必要な試薬・器具・消耗品を購入する。また、プローブ候補化合物を放射性同位体標識するための放射性同位体、主にI-125の購入を予定している。さらに、動態解析の結果をプローブのデザインにフィードバックし、より適切なプローブの設計・合成を行うために、有機合成に必要な試薬・器具・消耗品を購入する。また、本研究成果を発表するために、国内学会3件・国際学会1件への参加および研究成果報告を計画している。
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Research Products
(5 results)
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[Journal Article] A new 2-aryl-1,4-naphthoquinone-1-oxime methyl ether compound induces microtubule depolymerization and subsequent apoptosis.2012
Author(s)
H. Sato, R. Yamada, M. Yanagihara, H. Okuzawa, H. Iwata, A. Kurosawa, S. Ichinomiya, R. Suzuki, H. Okabe, T. Yano, T. Kumamoto, N. Suzuki, T. Ishikawa, K. Ueno.
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Journal Title
J. Pharmacol. Sci.
Volume: 118
Pages: 467-478
DOI
Peer Reviewed