2011 Fiscal Year Research-status Report
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23590053
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Research Institution | Hoshi University |
Principal Investigator |
高山 幸三 星薬科大学, 薬学部, 教授 (00130758)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 錠剤データベース / 拡張シンプレックス / 自己組織化マップ / ニューラルネットワーク / サポートベクターマシン / 硬度 / 崩壊時間 |
Research Abstract |
拡張シンプレックス探索法を用いて、優れた特性を有するプレセボ錠の処方設計を行った。その結果、硬度と崩壊性に優れるプラセボ錠の最適な調製条件を見いだすことに成功した。最適解の硬度は7.5kg、崩壊時間は9.7秒であり、探索の出発点として用いた標準処方(硬度=6.4kg、崩壊時間=24秒)に比べて大幅な改善が見られた。次に14種類の物性の異なる原薬を選択し、これらを最適化プラセボ処方に10~80%配合した錠剤を調製した。原薬物性として、融点、溶解度、比表面積、平均粒子径、粒子径分布を測定し、さらに錠剤特性として、基準化した硬度(TS)と崩壊時間(DT)を測定した。コホネン自己組織化マップにより錠剤データベースの内部構造を解析した結果、原薬物性により錠剤特性を数種の特徴的なクラスターに分類することができた。例えば、テオフィリンは配合量に依らず同一のクラスターに分類され、錠剤特性に対する影響の少ない原薬であることが示された。一方、アセトアミノフェンは配合量の変化に応じてクラスターが大きく変化し、製剤化には注意を要する原薬であることが示唆された。錠剤データベースから効率よく情報を引きだし、未知の原薬の錠剤調製条件を推定するためには、原薬物性から製剤特性を高精度に予測するシステムを構築する必要がある。本研究では、一般回帰人工ニューラルネットワーク(GRNN)に着目し、原薬物性の組み合わせから製剤特性の予測を試みた。GRNNは入力層、第1中間層(動径層)、第2中間層(回帰層)及び出力層からなる4層型ニューラルネットワークであり、他の人工ニューラルネットワークに比較すると、予測力と頑健性に優れるという特徴を有している。GRNNを適用した結果、製剤特性は高精度に予測され,現時点でのデータ数は限定されているものの、実用化に耐える優れたデータベースが構築されたと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた原薬の数を大幅に増やし、合計 14種類の原薬について配合量を10~80%とした錠剤112種類を調製し、原薬物性の測定と錠剤特性の測定を終了している。測定の繰り返し数を考慮すると、現時点で672セットからなる錠剤データベースが構築されている。コホネン自己組織化マップによりデータベースの内部構造を可視化した結果、バイアスの少ない優れたデータが収集されていることを確認した。製剤特性の予測手法としては、一般回帰人工ニューラルネットワーク(GRNN)を導入し優れた成果が得られた。しかし今後データ数の増加とともに、GRNNの欠点を補完する新たな計算技術を検討する必要がある。本研究では、サポートベクターマシン(SVM)を新たに導入し製剤特性の予測性について検討した。その結果、SVMを適用することによりGRNNと同様高精度な製剤特性の予測が可能であることを見いだした。また、原薬物性の製剤特性に対する影響を定量的に調べる目的で感度分析を実施した。その結果、錠剤の硬度に対しては、原薬の溶解度、比表面積及び配合量が、また崩壊時間に対しては、溶解度と配合量が強く影響することが明らかになった。上記のように本研究は順調に推移しており、当初の計画を大きく上回る研究成果が得られている。
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Strategy for Future Research Activity |
錠剤の調製方法には、湿式顆粒圧縮法、乾式顆粒圧縮法、直接粉末圧縮法(直打法)など様々な方法があり、とくに本邦では湿式顆粒圧縮法が汎用されている。現在までに構築した錠剤データは、いずれも直打法により製した錠剤について測定したものである。データベースの汎用性を高めるために、今後は湿式顆粒圧縮法により製した錠剤のデータの収集を行う必要がある。また、14種類の物性の異なる原薬について錠剤データベースの構築を行ってきたが、より汎用性の高いデータベースとするためには、さらに多くの原薬について実験し、錠剤データベースを拡充する必要がある。また製剤研究者が自由に利用できる環境を整えることも重要であることから、データベースへのフリーアクセスと解探索の無料化を必須の課題として推進する。学術論文によりデータベースの有用性と限界を明らかにするとともに、最終的にはWEB上での情報発信と収集を行える環境を整える。利用者は自らのデータを登録できるように設定し、データベースが常に更新される仕組みをつくる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
前年度までの研究成果に基づいて次年度に予定されている研究費を使用し、データベースの更なる拡充を図る。具体的には検討すべき原薬を50種類程度まで増やすことを考えている。また速溶性の錠剤に加えて徐放性製剤を加えることにより、実用に耐える高機能性製剤データベースの構築を行う。徐放性製剤の調製については、セルロース誘導体やポリエチレンオキシドなど、吸水してゲル化する高分子材料を用い、理想的な徐放パターンを示す製剤の最適な設計条件を探索する。これらデータの収集には膨大な実験数が必要であるため、次年度の研究費を充当し製剤の調製と物性の測定を行う。また、データベースの可視化と特性予測に供する新たな解析手法の導入についても検討する予定である。
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Research Products
(6 results)