2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23590053
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Research Institution | Hoshi University |
Principal Investigator |
高山 幸三 星薬科大学, 薬学部, 教授 (00130758)
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Keywords | 錠剤データベース / ニューラルネットワーク / サポートベクターマシン / 主薬物性 / 製剤特性 / 硬度 / 崩壊時間 / 溶出時間 |
Research Abstract |
従来までの研究により、直打法を用いて調製した錠剤672種に対して計測したデータに、一般回帰ニューラルネットワーク(GRNN)を適用することで、主薬物性、粒子物性及び主薬含量から、錠剤硬度、崩壊時間及び溶出時間を高精度に予測できることを明らかにした。GRNNは、入力層、第1中間層(動径層)、第2中間層(回帰層)及び出力層からなる4層型ニューラルネットワーク(NN)であり、予測力と頑健性に優れるという特徴を有している。その他のNNとして線形(LIN)、動径基底関数(RBF)、多層パーセプトロン(MLP)による予測を試み、GRNNとの予測能を比較した。その結果、LINやRBFは予測精度が低く実用性に乏しかった。MLPはGRNNと同等の予測能を示したが、再現性に欠けるため、予測の頑健性の点でGRNNの方が優れていた。 平成24年度は、直打法よりも汎用性の高い湿式顆粒圧縮法を用いて、新たに錠剤702種を調製し、主薬物性、顆粒物性及び錠剤特性を測定した。平成23年度のデータと併せ、総数1374セットからなる錠剤データベースを構築した。コホネン自己組織化マップ(SOM)によりデータベースの内部構造を分析した結果、錠剤データは大きく製法(直打法と湿式顆粒圧縮法)により2分され、さらに、主薬物性と粒子物性及び主薬含量により、細分類されることが示された。SOMの出力マップには大きな偏りは見られず、錠剤データ間のバイアスは少ないことが示唆された。 製剤特性の予測には、GRNNに加えて、サポートベクターマシン(SVM)を新たに導入し、錠剤特性の高精度予測を試みた。SVMではデータを分類する分離超平面を求めるため、その予測は汎化力に優れている。錠剤データを解析した結果、GRNN、SVMともに錠剤特性を高精度に予測できることが示され、これより実用化に耐える優れたデータベースが構築されたと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本邦では錠剤調製にあたり湿式顆粒圧縮法が汎用されている。平成23年度の研究により直打法による錠剤データベースを構築したが、平成24年度は湿式顆粒圧縮法を採用し、性質の異なる5種類の主薬について、配合量を20~60%とした錠剤702種を調製した。直打法に比べると錠剤の製造工程が複雑なため、主薬は5種類に限定されたが、従来のデータと併せると、現在までに1374セットからなる錠剤データの集積に成功した。また製剤特性の予測手法として、一般回帰ニューラルネット(GRNN)に加えて、線形ニューラルネット(LIN)、動径基底関数(RBF)、多層パーセプトロン(MLP)及びサポートベクターマシン(SVM)を導入した。その結果、LIN及びRBFは予測能が弱く実用に耐えるツールにはなり得ないことが判明した。またMLPの予測能は、GRNNと同程度に優れているが、最適構造の探索には膨大な計算時間が必要であり、また再現性に欠けるという欠点のあることが見いだされた。一方、GRNNは高精度で安定な予測能を示し、計算も瞬時に終了する。GRNNは様々なケースに問題無く対処可能な実用性に優れる予測ツールとして活用できることが確認された。さらに、SVMはGRNNに比べ遜色の無い予測能と再現性を示し、両手法ともに実用に耐える優れた予測ツールとなることが示された。このことは、未知化合物を主薬とする錠剤の調製条件を探索する上で、GRNNとSVMを併用できることを示唆するものである。上記のように、本研究は最終年度の研究目標達成に向けて順調に推移している。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究ではこれまでに、錠剤の調製手法として直打法と湿式顆粒圧縮法を選択し、14種類の主薬についてデータベースの構築を行った。蓄積された直打法、湿式顆粒圧縮法によるデータを併せると、1374セットからなる錠剤データベースの構築に成功している。しかし湿式顆粒圧縮法は製造工程が複雑で、これまでに調製できた主薬は5品目に止まっている。今後は、様々な未知化合物に対処な可能な汎用性の高い錠剤データベースとするため、さらに数種類の性質の異なる主薬を用いた錠剤を湿式顆粒圧縮法により調製し、完成度の高い錠剤データベースの構築を目指す。 錠剤特性の予測能に加えて、錠剤特性を支配する普遍的要因(重要品質特性)の解明にも着手する必要がある。現在、力学シミュレーションにより推定された錠剤内残留応力が、硬度や摩損度、崩壊性等の錠剤特性に密接に関わることを見いだしており、残留応力の高感度測定法についても、様々な角度から検討を進めている。上記の錠剤データベースに新たな力学シミュレーション及び残留応力計測データを加えることで、科学的根拠に基づく錠剤の設計技術を確立する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(12 results)