2012 Fiscal Year Research-status Report
大麻および痩身薬などゲートウェイドラッグの乱用を迅速に判定する方法の開発
Project/Area Number |
23590055
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Research Institution | Hoshi University |
Principal Investigator |
斉藤 貢一 星薬科大学, 薬学部, 教授 (40386347)
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Keywords | 法科学 / 大麻 / 脱法ハーブ / 痩身薬 / ゲートウェイドラッグ / スクリーニング / 分析法 |
Research Abstract |
近年の指定薬物の大半は,合成カンナビノイド系や合成カチノン系薬物である。合成カンナビノイド系薬物は,植物に混ぜ合わせた,いわゆる「脱法ハーブ」と呼ばれる商品として主に流通している。また,合成カチノン系薬物は,主に粉末や液状のアロマオイルとして販売されている。本研究では,合成カンナビノイド系および合成カチノン系薬物を測定対象とした,DART-TOF-MSによる迅速スクリーニング法の有用性について検討した。 溶液または固体状の試料をDART-TOF-MSに導入したところ,いずれの試料も測定を開始してから数秒以内に各薬物の[M+H]+のピークがリアルタイムで確認され,試料形態(液体,固体)によらずに,薬物の精密質量測定が可能となった。また検出感度については,各薬物の絶対量として5μgあれば測定できることが確認された。 実試料とした脱法ハーブ製品(20検体)および植物の葉(101検体)について,いずれも前処理をすることなく,そのままDART-TOF-MSに導入して測定した結果,全ての脱法ハーブ製品には,さまざまな合成カンナビノイド系および合成カチノン系薬物が含有されていることが分かった。また,外観から大麻の葉と推察された植物の生葉を測定した結果,テトラヒドロカンナビノールの含有が示唆され,全て大麻であると判定された。また,上記の脱法ハーブ製品のマススペクトルは大麻のマススペクトルとは異なり,識別が可能であることが確認された。 本研究で検討したDART-TOF-MSによる薬物スクリーニング法は,平成21年以降に新たに指定薬物となった合成カンナビノイド系および合成カチノン系薬物に対応したものであり,今後,司法警察において本法を適用することで,捜査初期段階での脱法ハーブ系薬物の鑑別が容易になると共に,捜査の効率化への寄与が期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度の研究実績では,本研究課題に挙げている「痩身薬」の代表的な成分であるα-リポ酸の分析を行って,学会と学術雑誌で発表した。更に,平成24年度では,上記の「研究実績の概要」で述べたように,ゲートウエイドラッグとしての乱用が懸念される脱法ハーブや大麻の迅速なスクリーニング分析法を構築し,本研究内容について,別紙に示すように学術雑誌への掲載を達成した。本研究内容は科学捜査研究所職員との共同研究で行ったものであり,実際に,司法警察において押収した薬物鑑定において信頼性と実用性が十分に高い方法であることが確認されたことから,本年度の研究課題に対する達成度は高いと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度に分析対象とした痩身薬(α-リポ酸)の他に,ゲートウエイドラッグとして乱用される恐れのある痩身薬成分についても,迅速で信頼性の高い分析法を構築する。 また,平成25年3月に包括指定された合成カンナビノイドなどの薬物(全851種類)についても,これまでの研究成果を応用して迅速に検出する分析法の構築を検討する。 更に,唾液や毛髪などいわゆる“非侵襲的な生体試料”を分析することで,上記の違法薬物使用の有無について判定できる方法を検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
痩身薬成分や合成カンナビノイドの分析を行うためには“標準品”が必要となり,更に,GC/MSやLC/MSなど,高精度な装置で分析を行うためには各標準品の安定同位体や分離分析に必要なHPLCカラムやGCカラムも必要になることから,次年度の研究費は,これら試薬など消耗品の購入を主として当てる。
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Research Products
(7 results)