2012 Fiscal Year Research-status Report
膜透過技術を搭載したバイオ医薬の非侵襲的デリバリーの創製と臨床開発への橋渡し研究
Project/Area Number |
23590056
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Research Institution | Kobe Gakuin University |
Principal Investigator |
武田 真莉子 神戸学院大学, 薬学部, 教授 (70257096)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高山 幸三 星薬科大学, 薬学部, 教授 (00130758)
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Keywords | ドラッグデリバリー / バイオ医薬 / 吸収促進 / バイオアベリラビリティ / インスリン / 経口投与 |
Research Abstract |
本研究はバイオ薬物の生体膜透過性を強力に改善する新規機能素子:細胞膜透過性ペプチド(CPP)を利用した非侵襲的デリバリーシステムの創製を確立し、臨床開発を早期に実現するための橋渡しとなる研究の遂行を目的とする。この研究成果はバイオ医薬のための非侵襲的デリバリーシステム創製のブレイクスルーになると期待され、早期の臨床試験の実施を目指している。 これまでに申請者は、CPPをバイオ薬物と物理的に混合するだけでバイオ薬物の経粘膜BAを著しく上昇させることをin vivoで明らかにした。一般的にはCPPはターゲット分子と化学的に架橋して用いられるが、架橋しなくても同じ程度かあるいはそれ以上の効果になるとを明らかにしたことが画期的な点である。この手法は簡便であり、またターゲット分子の薬理活性にほとんど影響しないという利点がある。また、CPPの効果は分子間相互作用に基づくことを表面プラズモン共鳴法により詳細に明らかにすることで、最適なデリバリーシステム創製への基礎を確立した。このような研究例は他にほとんど無く、極めて独創的な点である。また、我々はバイオ薬物の経粘膜BA enhancerとして特に作用の強いCPPとしてR8およびペネトラチンを見出してきた。ペネトラチンは、インスリン以外に様々な種類のバイオ薬物のBA enhancerとして働き、ワクチン開発にも有用性が高いことを明らかにしてきた。さらに、in silico解析による新規のBA enhancer 素子の探索の結果、ペネトラチンの構造改変体の中にはオリジナルのペネトラチンより3倍強力なアナログを発見し、これを特許化した。また昨年度は、連続投与による毒性試験を開始し、30日間の投与においても局所的にも全身的にも毒性が認められないことを確認した。これらの成果は、最終年度の研究計画を遂行する基礎的知見として役立つものと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度の研究計画についてはほぼ予定通りの計画を終了できたため、24年度はその研究成果を国内外の学会で発表し論文化することに注力した。 平成24年度以降の研究計画では、1)毒性試験:CPPを単回および慢性投与後の粘膜の組織学的評価および単回および繰り返し投与のラットにおける毒性試験、ならびに2)新規インスリン非侵襲的デリバリーシステム投与後のインスリン体内動態のPET イメージングによる解析を計画している。 1)については、ラットを用いた単回および中期繰り返し投与の投与実験は終了し、血中の炎症性バイオマーカーおよび免疫原性のバイオマーカーの経日的変動の解析、鼻粘膜標本の形態学的解析を行う段階に至っている。この実験では、3種類のペネトラチン誘導体について、高投与量および低投与量をラットに単回ならびに30日間一日2回連続経鼻投与実験により評価を行った。鼻粘膜組織の組織学的検査ならびにバイオマーカーの経日的変動の結果から、局所的にも全身的にも何ら毒性が認められないことを確認した。 2)については、経口投与のPET イメージング実験系の確立を行った。PET イメージングの経口投与実験においては、従来より用いているペントバルビタールなどのような簡便な麻酔が使用できないため、プロポフォールなど消化管に影響をしない麻酔を用いた実験系への変更が必要であり、その条件を詳細に検討した。 以上のように平成24年度は前年度の研究結果を基盤として、予定した研究を順調に遂行しており、(2)概ね順調に進展していると、自己評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで概ね順調に研究を実施出来たため、平成25年度は、毒性試験結果の解析をさらに進める予定である。また、昨年度得られた結果を論文にまとめることにも注力する。 CPPによる吸収促進機構の解明については、引き続きin vitro実験により検討を進める。特に今年度は、CPP存在下での消化管液中ならびに血液中でのインスリンの安定性に対する影響に着目し、LC-MSを使って分解挙動を詳細に解析する。さらに、CPPのデリバリー素子としての可能性を検討するため、分子量、荷電状態、粒子サイズ別に、それぞれ蛍光ラベル化した物質を用いてCPPの有効性・応用性を検討する。これらの解析については、表面プラズモン共鳴法も併用して、CPPと各種物質との結合性を解析しながら評価する。 また、ラット腸管の組織固定を行い、小腸粘膜内でのインスリンならびにCPPの局在について免疫染色を行って解析する。 さらに、新規インスリン非侵襲的デリバリーシステム投与後のインスリン体内動態のPETイメージングによる解析についても、試験製剤を用いて 予備実験を行うなど、本試験への準備を開始する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本計画における研究費の使途については、平成25年度は、消耗品の購入を中心とし、主要な支出は、各種バイオ薬物の購入、バイオ薬物 血中濃度測定のためのキット、細胞膜透過ペプチドの合成委託費用、各種in vitro実験並びに動物実験にかかる消耗品費である。バイ オ薬物はそれ自身が高額であり、また、血中濃度測定はエンザイムイムノアッセイで行うためこれも高額である。また、細胞膜透過ペ プチドはすべて合成委託となるため高額であり、消耗品費の大部分はこれらのタンパク質・ペプチドを購入することに充当される。 さらに、成果発表費用として研究論文の英文校閲費用、および学会での成果発表費用として国内旅費を計上している。
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Research Products
(13 results)