2012 Fiscal Year Research-status Report
微細エマルションによるポリフェノールの皮膚への効率的デリバリーとその機構
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23590060
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Research Institution | Kobe Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
北河 修治 神戸薬科大学, 薬学部, 教授 (00108911)
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Keywords | ポリフェノール / マイクロエマルション / レスベラトロール / エピカテキン / 皮膚デリバリー / 皮膚中分布 / ショ糖ラウリン酸エステル / テトラグリセリンラウリン酸エステル |
Research Abstract |
強い抗酸化作用を有するポリフェノールには皮膚の光老化防御作用が期待されているが、皮膚透過性が悪い。そのため前年度に引き続き、種々の界面活性剤を用いたマイクロエマルションを用いて、より効率的なポリフェノールの皮膚デリバリーを目指すとともに、ポリフェノールの物理化学的性質と皮膚での存在部位との関係を明らかにすることを、主としてユカタンマイクロピッグの皮膚を用いたin vitroでの実験によって試みた。 その結果、皮膚障害作用が弱いことが期待されるシュクロースラウリン酸エステルやテトラグリセリンラウリン酸エステルを用いたマイクロエマルションでは、前年度に利用していたTween80を界面活性剤とするマイクロエマルションに比べて、ポリフェノールの皮膚取り込み効率が高いことがわかった。その際、レスベラトロールのような親油性のポリフェノールについてはw/o型のマイクロエマルションが、(-)エピカテキンのような比較的親水性のポリフェノールについては、o/w型のマイクロエマルションがより効果的であることがわかった。真皮、表皮への分布については、分子量が小さく、親油性のものほど真皮に分布することがわかった。しかしながら、親油性のレスベラトロールは、真皮への移行性は高いものの、in vitroでの実験ではレセプター側への移行は極めて限られたものであり、真皮のタンパク質に結合してレセプター側へは移行しにくいことが推定された。逆に、(-)エピカテキンは、より親水性で分子量もレスベラトロールよりも大きいけれどもゆっくりと真皮へ移行した後、より多くの割合がレセプター側に移行することがわかった。したがって、光老化防御作用等を期待してポリフェノールを皮膚に適用する場合、このような部位移行性を考慮してポリフェノールを選択する必要性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、皮膚の光老化防御を目的としてポリフェノールの皮膚に対する効率的なデリバリーを可能とする微細エマルションの開発とその機構の解明である。in vitroでの結果ではあるが、現在までの研究により、皮膚障害が少ないことが明らかにされているショ糖ラウリン酸エステルあるいはテトラグリセリンラウリン酸エステルを界面活性剤として用いたマイクロエマルションが効率的なポリフェノールの皮膚取り込みを可能にすることを明らかにすることができた。 また、近年その生理作用から注目されているレスベラトロールについては、皮膚中では主に真皮に分布すること、また真皮からレセプター側への移動は非常にわずかであることがわかり、このことからレスベラトロールはコラーゲン分解酵素等が存在する真皮をターゲット部位として投与することが適切であることが推定された。このレスベラトロールを始めとして、ポリフェノールの分子量、親油性と皮膚中分布の特徴も明らかとなり、目的に応じたポリフェノールの選択が可能となった。 さらに、レスベラトロール等の親油性のポリフェノールについてはw/o型のマイクロエマルションが、(-)エピカテキン等の比較的親水性のポリフェノールについては、o/w型のマイクロエマルションがより効果的であることがわかった。この結果とポリフェノールはその両親媒性の性質から、界面付近に多く存在することが推定されることから、界面付近に高濃度のポリフェノールを保持するマイクロエマルションが皮膚表面に吸着し、その結果、濃度勾配が上昇することが、皮膚取り込みの増大の一因であることが推定された。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、引き続きin vitroにおける実験を行い、皮膚のスライス資料を調製することにより、ポリフェノールの皮膚での局在をより詳細に解明し、ポリフェノールの物理化学的性質との関係を明らかにする。 これまでの研究はin vitroにおけるものであり、in vivoにおいても検討を行い、ショ糖ラウリン酸エステルあるいはテトラグリセリンラウリン酸エステルを界面活性剤として用いたマイクロエマルションによるポリフェノールの皮膚取り込みについて効率性や局在に関して同様な結果が得られることを確認する必要がある。 また、ポリフェノールを含有する上記のマイクロエマルションのゲルを動物皮膚に塗布し、紫外線照射に伴う紅斑形成やシワの生成に対する有用性についても確認する必要がある。その際、ポリフェノールの物理化学的性質、フリーラジカル消去活性や皮膚での局在と作用との関係についても明らかにし、目的に応じたポリフェノールの使い分けができるようにしたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究費は実験動物(モルモット)購入費、ユカタンマイクロピッグ皮膚購入費、ポリフェノール購入費として充てるとともに、最終年度になるため研究を取りまとめた論文作成に充てたい。
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Research Products
(12 results)