2011 Fiscal Year Research-status Report
医薬品の酸素酸化防止を目的としたナノサイズ粉末コーティング法に関する研究
Project/Area Number |
23590061
|
Research Institution | Matsuyama University |
Principal Investigator |
山内 行玄 松山大学, 薬学部, 助教 (10461378)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | メカノケミカル / 粉末コーティング / 電子スピン共鳴 / メカノラジカル / 固体プラズマ |
Research Abstract |
今日,容易に加水分解や酸化分解を受ける薬剤を保護し,安定性を向上させるため,糖衣コーティング,ゼラチンコーティング等,様々な製剤設計が実施されている.技法としては,幾つか知られており,既に実用化されているものもあるが,工程操作の煩雑さや均一性,コスト等多くの技術的課題を残している。著者は,酸素存在下では瞬時にパーオキシラジカルに変換する高分子粉末のメカノラジカルが,結晶性の糖粉末とともに振動混合処理すると大気中でも長時間安定に存在することを見出した.この結果は,両粒子表面の分子間相互作用により,高分子ラジカルが酸素から保護されたことを示唆しており,完全ドライプロセスによる"粉末コーティング"の一種としての応用が期待できる.そこで,本メカニズムの解明を目的として,モデル高分子としてメタクリル系高分子(ポリメタクリル酸,ポリメタクリル酸メチル)を,固体添加物として糖類の一つであるmyo-イノシトールをそれぞれ選択し,無酸素雰囲気中,両者を混合粉砕し,生成する高分子ラジカルの無酸素中および空気中での安定性について検討した.その結果,生成ラジカルが空気に曝されると短時間で消失するポリメタクリル酸をイノシトールと混合粉砕した場合,生成したメカノラジカルは,室温中酸素存在下においても数日間存在することが示された.一方,ポリメタクリル酸メチルの場合は,粉砕中のイノシトールの有無に関わらず,生成ラジカルの空気中での安定性にほとんど差異がみられなかった。さらに,各種機器を用いた固体分析の結果,ポリメタクリル酸のカルボキシル基とイノシトールの水酸基による固体分子間水素結合網の形成が認められた.したがって,高分子と低分子固体添加物との混合粉砕による高分子ラジカルの酸素酸化反応抑制は,高分子と固体添加物との分子間相互作用による水素結合網の形成が酸素透過を抑制することに起因するものと考えられた.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
高分子/結晶性低分子固体粉末系を用いた分子間相互作用のメカニズム・精密性の解明は,本課題遂行の基盤となる検討項目である.初年度は,複数の高分子を用いて,酸素透過抑制効果の有無や程度を把握することを主に検討した.さらに,各種機器を用いて固体分析を実施した結果,高分子と固体添加物との分子間相互作用による水素結合網の形成が認められ,仮説が立証された。現時点において,申請時当初の予定通りの進行状況である.
|
Strategy for Future Research Activity |
高分子と低分子固体添加物との混合粉砕による高分子ラジカルの酸素酸化反応抑制は,高分子と固体添加物との分子間相互作用による水素結合網の形成が酸素透過を抑制することに起因することが明らかになった.したがって,次年度以降は,低分子化合物に関して,糖類,アミノ酸,有機酸など拡大して検討を行い,高分子の種類と混合粉砕する種々の化合物を系統的に分類し,分子間相互作用の効果を最大限に引き出すことが出来る最適な化合物の組み合わせ,および,混合比,処理条件などを詳細に検証する予定である.
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本課題一連の実験を遂行することになるグローブボックス(\1,000,000)を購入する予定である.現有のものに加え,1台増設することにより,実験効率を大幅に上げることが可能となる.それ以外は,概ね申請時当初の予定通りである.
|
Research Products
(2 results)