2012 Fiscal Year Research-status Report
医薬品の酸素酸化防止を目的としたナノサイズ粉末コーティング法に関する研究
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23590061
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Research Institution | Matsuyama University |
Principal Investigator |
山内 行玄 松山大学, 薬学部, 准教授 (10461378)
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Keywords | メカノケミカル / 粉末コーティング / 電子スピン共鳴 / メカノラジカル / 固体プラズマ |
Research Abstract |
著者は,酸素存在下では瞬時にパーオキシラジカルに変換する高分子粉末のメカノラジカルが,結晶性の糖粉末とともに振動混合処理すると大気中でも長時間安定に存在することを見出した.この結果は,両粒子表面の分子間相互作用により,高分子ラジカルが酸素から保護されたことを示唆しており,完全ドライプロセスによる“粉末コーティング”の一種としての応用が期待できる.研究実施初年度となる昨年は、モデル高分子として選択したメタクリル系高分子と、固体単糖類の一種であるmyo-イノシトールを用いて固体分散体をドライプロセスにて調製し、前もって発生させた高分子のメカノラジカルの酸素反応性を精査した。結果として、高分子と固体低分子間の強固な水素結合のネットワーク形成による粉末内への酸素拡散抑制効果が確認された。そこで、本年は、myo-イノシトールを、他の水素結合能を有する各種低分子化合物に変えて、本技術の有効範囲拡大の可能性を探索した。そこで、myo-イノシトールの代わりに、グルコース、ショ糖、乳糖などの糖類およびグリシン、アラニンなどのアミノ酸を選択し、メタクリル系高分子と固体分散体を同様に調製した。その結果、単糖類においては、myo-イノシトール=グルコース〉>ショ糖=乳糖 の順で酸素拡散抑制効果が大きく異なることが明らかになった。また、アミノ酸を用いた場合、いずれもある程度の酸素拡散抑制効果が見られたものの、myo-イノシトールに代替する程の抑制能を有するものが発見できなかった。さらに、いずれの低分子化合物も、その添加量に従って、効果の向上が確認された。調製した各固体分散体の物性評価等総合的に考察した結果、全方向に水酸基が配置した特徴的な立体構造を有する単糖類の固体コーティングカプセル構造の形成が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度に、高分子/結晶性低分子固体粉末系を用いた分子間相互作用のメカニズムが、粉末間の緻密な水素結合ネットワークの形成によるものであることを明らかにした。そこで本年度は、得られた知見より、本システムの拡大適用可能範囲を把握するため、数種類の低分子化合物を用いて、構造特異性と酸素拡散抑制効果の相関を検討した。その結果、ある程度の構造-抑制効果相関および、効果発現に要する結晶性低分子固体粉末添加量などが明らかになった。しかしながら、本メカニズムによる酸素拡散抑制効果と粉末添加量の定量解析には、さらに詳細な実施例が必要と考えられ、次年度初期に追加実験を実施する予定にしている。
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Strategy for Future Research Activity |
高分子と低分子固体添加物との混合粉砕による高分子ラジカルの酸素酸化反応抑制は,高分子と固体添加物との分子間相互作用による水素結合網の形成が酸素透過を抑制することに起因することが明らかになった.さらに、その酸化反応抑制効果は添加する低分子添加化合物の構造に影響されることを明らかにした。したがって、次年度は、高分子の種類を系統的に分類し,分子間相互作用の効果を最大限に引き出すことが出来る最適な化合物の組み合わせ,および,混合比,処理条件などを詳細に精査する。さらに得られた知見を利用して、酸化反応に高感受性の薬剤を用いて、抑制効果を検証する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
概ね申請時当初の予定通りである。
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Research Products
(4 results)