2011 Fiscal Year Research-status Report
分子軌道計算による熱力学的パラメーターに基づく新規抗酸化物質の開発
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23590064
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Research Institution | National Institute of Radiological Sciences |
Principal Investigator |
中西 郁夫 独立行政法人放射線医学総合研究所, 重粒子医科学センター, 主任研究員 (70356137)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 活性酸素種 / 抗酸化物質 / ラジカル / 有機化学 / 計算化学 |
Research Abstract |
生活習慣病予防や抗加齢、さらには放射線防護へ応用可能な新規抗酸化物質を開発する目的で、ビタミンEの基本骨格である2,2-dimethylchroman-6-ol (DMC)に種々の置換基を導入したDMC誘導体を分子設計した。これらのDMC誘導体に対し、密度汎関数法(DFT: Density Functional Theory)によりフェノール性水酸基のO-H結合解離エネルギー(D(HT))およびイオン化エネルギー(IP)を計算した。得られた計算値をビタミンE (α-トコフェロール)のD(HT)値およびIP値と比較した。その結果、フェノール性OH基のオルト位にアミノ基を有するDMC誘導体のD(HT)値は、ビタミンEに比べて顕著に低下したのに対し、メタ位にアミノ基を導入するとD(HT)値は大きくなった。一方、IP値の場合には、オルト位にアミノ基を導入すると大きくなり、メタ位にアミノ基を有する誘導体では顕著に低下した。クロロ基の場合には、オルト位、メタ位のいずれに導入しても、D(HT)値とIP値はともに大きくなった。アミノ基の導入でD(HT)値やIP値が低下したDMC誘導体については、ビタミンEよりも優れたフリーラジカル消去活性が期待できる。以上の結果を、2011年11月にアトランタで開催された米国フリーラジカル生物医学会議(SFRBM: Society for Free Radical Biology and Medicine)などで発表した。現在、東京理科大学薬学部との共同研究でアミノ基やクロロ基を有するDMC誘導体を合成し、フリーラジカル消去活性について検討中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度には、種々の置換基を有する2,2-dimethylchroman-6-ol (DMC)誘導体を分子設計し、それらのフェノール性水酸基のO-H結合解離エネルギー(D(HT))およびイオン化エネルギー(IP)を密度汎関数法(DFT: Density Functional Theory)により計算する計画を立て、予定どおり完了した。また、アミノ基やクロロ基を有するDMC誘導体についても、いくつかはすでに合成を完了しており、所属研究機関の震災対応業務でわずかな遅れが生じたものの、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続きDMC誘導体の合成を行い、得られたDMC誘導体のフリーラジカル消去活性を評価する。フリーラジカル消去活性の評価には室温でも比較的安定なガルビノキシルラジカルや2,2-diphenyl-1-picrylhydrazyl (DPPH)ラジカルを用いる。まず、合成したDMC誘導体がこれらのフリーラジカルを消去できるかどうかをフォトダイオードアレイ分光光度計で観測する。フリーラジカルの消去が確認された場合には、ストップトフロー分光測定装置を用い、フリーラジカルに由来する吸収の吸光度の経時変化から二次反応速度定数(k)を決定する。次に、平成23年度に計算したD(HT)値またはIP値とk値との相関性を調べる。相関関係がある場合には、他の置換基を導入した化合物についてもDFT計算によりそのフリーラジカル消去活性を予想する。以上の実験で得られた結果を、9月にロンドンで開催される国際フリーラジカル学会や11月にサンディエゴで開催されるSFRBMをはじめとする国内外の学会で積極的に発表し、成果を学術雑誌に投稿する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は、DMC誘導体の合成およびフリーラジカル消去活性の測定が中心となるので、試薬類やガラス器具、分光計のランプなどの消耗品の購入に570千円使用する予定である。また、研究成果に発表を目的として、9月にロンドンで開催される国際フリーラジカル学会や11月にサンディエゴで開催されるSFRBMをはじめとする国内外での学会に出席するための旅費および参加費に630千円使用予定である。当初予定していた謝金50千円は、人材の確保が困難な状況のため、消耗品費に変更した。また、所属研究機関の震災対応業務による研究の遅延により生じた平成23年度からの繰り越し分も消耗品費に使用する予定である。
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Research Products
(17 results)