2012 Fiscal Year Research-status Report
分子軌道計算による熱力学的パラメーターに基づく新規抗酸化物質の開発
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23590064
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Research Institution | National Institute of Radiological Sciences |
Principal Investigator |
中西 郁夫 独立行政法人放射線医学総合研究所, 重粒子医科学センター, 主任研究員 (70356137)
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Keywords | 活性酸素種 / 抗酸化物質 / ラジカル / 有機化学 / 計算化学 |
Research Abstract |
生活習慣病や抗加齢、さらには放射線防護へ応用可能な新規抗酸化物質を開発する目的で、ビタミンEの基本骨格である2,2-dimethylchroman-6-ol (DMC)に種々の置換基を導入したDMC誘導体を分子設計した。今年度は、東京理科大学薬学部との共同研究で、アミノ基やクロロ基を有するDMC誘導体を合成した。活性酸素種のモデルとしてガルビノキシルラジカルを用い、アセトニトリル中、得られたDMC誘導体のラジカル消去の二次反応速度定数(k)をストップトフロー法により決定した。その結果、クロロ基を導入したDMC誘導体のk値は、α-トコフェロール(ビタミンE)よりも顕著に低下したのに対し、アミノ基を導入したDMC誘導体のラジカル消去活性は、α-トコフェロールよりも顕著に向上した。また、電子スピン共鳴(ESR)法により、アミノDMC誘導体のラジカル消去によって生成するフェノキシルラジカルの検出に成功し、電子構造のキャラクタリゼーションを行った。その結果、不対電子はアミノDMC誘導体のベンゼン環全体に非局在化しており、これがフェノキシルラジカルを安定化することにより、ラジカル消去活性が顕著に向上したと考えられる。得られたDMC誘導体のk値の対数(log k)は、前年度に密度汎関数法によって計算したフェノール性水酸基のO-H結合解離エネルギーD(HT)と良好に相関し、D(HT)が小さいほどlog k値が大きくなった。このことから、D(HT)が小さくなるような分子設計を行うと、高活性なDMC誘導体が得られることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度には、東京理科大学薬学部との共同研究で、当初の予定どおり種々の置換基を有する2,2-dimethylchroman-6-ol (DMC)誘導体を合成し、それらのラジカル消去活性を比較的安定なガルビノキシルラジカルを用いて評価した。得られた成果は、学術雑誌に論文に掲載され、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
抗酸化物質は、酸化還元活性を示す金属イオン存在下では、逆に活性酸素種を発生し、プロオキシダント効果を示す可能性がある。そこで、前年度までに合成した2,2-dimethylchroman-6-ol (DMC)誘導体のプロオキシダント活性について検討する。鉄イオンと過酸化水素の存在下、pBR322DNAは、この反応(Fenton反応)系で生成するヒドロキシルラジカルによってスーパーコイル型(Form I)からニック型(Form II)に切断される。ここにDMC誘導体を加え、ニック型が増えればプロオキシダント活性を有することが明らかとなる。このような方法で、プロオキシダント効果に対する構造活性相関についても検討を行い、毒性の低い抗酸化物質の開発を目指す。 また、前年度同様、新規抗酸化物質の設計および合成も行う。 一方、我々は、放射線照射でラットの胸腺細胞がアポトーシスを起こすことにより細胞サイズが縮小する現象を利用し、抗酸化物質の細胞に対する放射線防護活性をスクリーニングする方法を発明した。そこで、得られたDMC誘導体について、この方法で放射線防護活性を評価し、その構造活性相関についても検討を行う。 以上の実験で得られた結果を国内外の学会で発表し、成果を積極的に学術雑誌に投稿する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は、新規抗酸化物質の合成に加え、既に合成した化合物のプロオキシダント効果を検討するための試薬類やガラス器具、分光計ランプなどの消耗品に570千円使用する予定である。また、研究成果の発表を目的として、9月に台湾で開催されるアジアフリーラジカル学会や11月にサンアントニオ(米国テキサス州)で開催されるSociety for Free Radical Biology and Medicine (SFRBM)をはじめとする国内外での学会に出席するための旅費および参加費に630千円使用予定である。
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Research Products
(46 results)