2011 Fiscal Year Research-status Report
癌の増殖と転移におけるコラーゲン分解と3型コラゲナーゼ/MMP13の関与
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23590069
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
稲田 全規 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80401454)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平田 美智子 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (40544060)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 生化学 / 病態生理学 |
Research Abstract |
3型コラゲナーゼ(マトリックスメタロプロテナーゼ13: MMP13)は骨・軟骨の主基質であるコラーゲンを分解する酵素であり、我々は本酵素の遺伝子欠損マウス(MMP13KO)を世界に先駆けて作成した。最近、我々は悪性黒色腫(B16メラノーマ)を用いた癌の増殖と転移実験において、腫瘍形成と組織破壊がMMP13KOにおいて起こりにくいことを見出した。そこで、本課題では、癌の転移と腫瘍形成における宿主が産生するMMP13の関与を明らかにすることを目的とする。本年度は、B16細胞をMMP13KOマウスあるいは野生型マウスに移入し、骨転移・肺転移と固形腫瘍形成を比較した。In vivo解析において、マウスの尾静脈よりB16細胞を移入し、骨転移と肺転移を起こさせた。その結果、B16を移入した野生型マウスは顕著な肺転移と骨転移を起こし、骨転移巣では骨吸収亢進による骨破壊をマイクロCT解析により認めた。一方、MMP13KOでは、骨吸収とコラーゲン分解が促進されず、骨転移の発生ならびに骨破壊が著しく軽減した。肺転移巣では、コラーゲン分解を伴う散在性の転移が観察された。また固形腫瘍では、血管新生を伴う増殖を認めた。一方、MMP13KOマウスでは、転移巣の発生頻度、血管新生を伴う増殖のいずれも軽減した。In vitro解析において、野生型マウス由来の骨芽細胞および皮膚線維芽細胞にB16が接着すると、骨芽細胞における破骨細胞誘導因子(RANKL)の遺伝子発現が亢進し、線維芽細胞による血管新生誘導因子(VEGF)の産生が増大し、コラーゲン分解と組織破壊ならびに血管新生を促した。一方、MMP13KO由来細胞では、RANKL発現やVEGF産生、コラーゲン分解を起こりにくかった。これらの実績は、癌の増殖と転移における宿主由来MMP13の役割を示す成果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度、当初の計画である、B16細胞をMMP13KOマウスあるいは野生型マウスに移入し、骨転移・肺転移と固形腫瘍形成を比較するIn vivo解析ならびにIn vitro解析を実施し、宿主細胞が産生するMMP13が骨転移巣の骨吸収、肺転移のコラーゲン分解、腫瘍の血管新生に重要な役割を担うことを明らかにした。さらに、この当初計画に加えて、平成24年度の課題実施に向けて、安定した転移能を有する乳癌と前立腺癌の株化に着手し、安定的な骨転移形質を有する乳癌の株化に成功した。また、前立腺癌についても骨転移を起こしうる細胞を取得し、転移率を高める選択・株化の段階となっている。これら成果は平成24年度の本課題を円滑に進め、より前倒しの課題実施を可能とするものである。これら理由により、当初の計画以上に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は、ヒト由来癌細胞(乳癌・前立腺癌)の骨および肺へ100%の確率で転移する高転移株を株化・維持し、ヌードマウスへの移入実験を行う。骨転移・肺転移と固形腫瘍形成についてIn vivo解析する。さらに、MMP13KOマウスへの移入が可能なマウス由来の乳癌および前立腺癌を用いた検討も実施する。これら乳癌細胞および前立腺癌については、すでに骨転移および肺転移率の高い細胞の株化に成功しており、今後、円滑に課題実施できると判断している。また、In vivo解析に加え、In vitro解析も実施し、MMP13産生と癌細胞の浸潤、VEGF依存の血管新生に着目した機構解明を実施する。平成25年度は、ヒト癌細胞を移入したヌードマウスを用い、研究協力者Dr. Krane(ハーバード大学)と共同開発した、新規MMP13阻害剤の投与実験を実施し、骨転移・肺転移・固形腫瘍・延命についてIn vivo評価して、転移抑制剤としての創薬展開を図る。研究計画の変更あるいは研究を遂行する上での課題はなく、順調に課題実施している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
設備備品費については計上の予定はない。消耗品費については、動物(マウス、ヌードマウス)で500千円、試薬(生化学試薬、動物実験用、イメージング用の試薬)で300千円、器具(培養用滅菌器具、生化学実験用の器具、動物実験用の器具)で290千円の合計1,090千円の計上を予定している。
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Research Products
(21 results)