2012 Fiscal Year Research-status Report
癌の増殖と転移におけるコラーゲン分解と3型コラゲナーゼ/MMP13の関与
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23590069
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
稲田 全規 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80401454)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平田 美智子 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 講師 (40544060)
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Keywords | 生化学 / 病態生理学 |
Research Abstract |
3型コラゲナーゼ(マトリックスメタロプロテナーゼ13: MMP13)は骨・軟骨の主基質であるコラーゲンを分解する酵素であり、我々は本酵素の遺伝子欠損マウス(MMP13KO)を世界に先駆けて作成した。最近、悪性黒色腫(B16メラノーマ)を用いた癌の増殖と転移実験において、腫瘍形成と組織破壊がMMP13KOにおいて起こりにくいことを見出した。本課題では、癌の転移と腫瘍形成における宿主が産生するMMP13の関与を明らかにすることを目的とする。本年度はヒト由来癌細胞を用いた骨転移・肺転移と固形腫瘍形成の評価系の確立を行った。In vivo細胞スクリーニング解析において、ヒト乳癌(MDA-MB231)およびヒト前立腺癌(LNCaP)細胞をヌードマウスに移入後に、転移成立までの期間の生育を行った。体重計測によるモニタリング及び、軟X線検査による判定の結果、骨転移の成立を確認した後に、骨転移巣から癌細胞を回収して細胞株を得た。これら転移実験を繰り返して、ほぼ100%の確率で骨と肺に転移する細胞株を獲得した。これら細胞株を尾静脈より移入し、骨転移の局所観察を行った。その結果、癌細胞を移入したヌードマウスでは顕著な肺転移と骨転移を起こし、骨転移巣では骨吸収亢進による骨破壊をマイクロCT解析により認めた。また、肺転移巣では、肺実質の破壊と癌細胞増殖が確認された。これら転移の局所では、コラーゲン分解が促進され、転移の発生ならびに骨及び肺破壊が著しく亢進した。さらに、In vivo レーザーイメージングにより、これら骨破壊は血管新生の亢進を伴うことを明らかとした。また、In vitroメカニズム解析では、上記のヒト癌細胞を用いた検討では、MMP13産生、VEGF産生、FGF産生は全て亢進し、血管管腔形成および癌細胞の浸潤活性の亢進はIn vivo試験と同様の傾向を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度、当初の計画である、ヒト由来癌細胞を用いた骨転移・肺転移と固形腫瘍形成の評価系の確立では、In vivoモデルを用いたヒト乳癌(MDA-MB231)およびヒト前立腺癌(LNCaP)細胞のスクリーニング解析を行った。通常、転移実験においては、種々の器官に転移が拡散することが多く、特に肺転移の際には呼吸不全が伴うことによって、癌細胞のスクリーニングに至らずに致死マウスが大部分を占めることにより、In vivoスクリーニングが進まないことが認められる。本実験系では、体重計測によるモニタリング及び、軟X線検査を組み合わせた正確な画像診断により、非常に高効率に骨転移性及び肺転移性癌細胞株をそれぞれ得ることが達成され、これら転移実験を繰り返して、ほぼ100%の確率で骨及び肺に転移する細胞株を獲得した。これら結果より、今年度の計画達成度は計画以上に進展し、平成25年度の課題実施に向けて、安定した転移能を有する乳癌細胞の株化に成功し、安定的な骨転移を実験的に評価が可能となった。また、前立腺癌についても同様に骨転移を起こす細胞株を取得し、転移率を高める選択・株化の段階となっている。これら成果は平成25年度の本課題を円滑に進め、より前倒しの課題実施を可能とするものである。これら理由により、当初の計画以上に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、ヒト由来癌細胞(乳癌・前立腺癌)の骨へ100%の確率で転移する高転移株を株化・維持し、ヌードマウスへの移入実験及び新規MMP13阻害剤を用いた基礎検討を行う。 具体的には、研究協力者である、米国ハーバード大学のKrane博士のグループと共に開発を進めてきた、MMP13阻害剤を用いた検討を進める。平成24年度に株化した100%の確率で骨転移と肺転移を起こすヒト乳癌細胞(MDA-MB231)およびヒト前立腺癌細胞(LNCaP)を用い、ヌードマウスへの移入実験を実施し、MMP13阻害剤を投与して、骨転移と肺転移への阻止効果を、In vivo発光イメージングにより調べる。また、MMP13阻害剤の投与実験では、骨転移・肺転移・固形腫瘍・延命の各項目についての、マウス一個体ごとのIn vivo評価を行い、転移抑制剤としての創薬展開を図る。研究計画の変更、あるいは研究を遂行する上での障壁は認められず、順調に課題を実施している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(29 results)