2011 Fiscal Year Research-status Report
転写因子を用いた糖鎖シグナルの制御によるがん悪性形質の抑制
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23590070
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Research Institution | Nagaoka University of Technology |
Principal Investigator |
佐藤 武史 長岡技術科学大学, 工学部, 助教 (30291131)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
古川 清 長岡技術科学大学, 工学部, 教授 (10190133)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 転写因子 / がん / 悪性形質 / 腫瘍形成 / 糖鎖 / 糖タンパク質 / シグナル伝達 |
Research Abstract |
細胞表面に存在する複合糖質の構造は、細胞のがん化で一変する。この糖鎖シグナルは、がん細胞の悪性形質の発現に深く関わっている。一方、転写因子Sp1は糖転移酵素を含む様々なハウスキーピング分子の遺伝子の転写を制御するが、種々のがん細胞で発現が増大することが報告されている。本研究では、Sp1の発現を制御することで生じる糖鎖修飾の変化と、がん細胞の悪性形質の発現との関係を分子レベルで明らかにする。A549ヒト肺がん細胞においてSp1をノックダウンすると、β-1,4-結合したガラクトース残基と結合するRCA-Iや2,6分岐側鎖を含む高分岐N-型糖鎖と結合するL-PHAとの結合性は、対照細胞に比べて分子量80-90 K及び120 Kの糖タンパク質で低下した。抗体を用いて糖鎖修飾が変化した糖タンパク質を解析したところ、分子量80-90 Kの糖タンパク質はLAMP-1、120 Kの糖タンパク質はE-カドヘリンであることが判明した。蛍光標識抗体を用いて解析したところ、A549細胞ではLAMP-1は細胞表面に発現していないことが判明した。次に、Sp1のノックダウンによる糖鎖修飾の変化の背景を解析するため、RT-PCRにより糖転移酵素遺伝子の発現を解析した。その結果、糖鎖のガラクトシル化に関与するβ-1,4-GalTファミリーの中で、β-1,4-GalT I, III, Vの遺伝子発現はSp1のノックダウンによって減少する傾向が見られた。一方、Sp1のノックダウンによって幾つかのシグナル伝達分子でリン酸化レベルが変化することが判明した。さらに、Sp1ノックダウン細胞ではヌードマウスの皮下での腫瘍形成が著しく抑制された。本研究から、A549細胞においてSp1をノックダウンすると、主にE-カドヘリンの糖鎖修飾とシグナル伝達分子のリン酸化が変化し、腫瘍形成が抑制されることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度は、ヒト肺がん細胞から樹立したSp1ノックダウン細胞における糖鎖修飾が変化した分子の同定、及び糖鎖修飾の変化に関わる糖転移酵素の候補の絞り込みに成功した。現在、候補として絞り込んだ糖転移酵素遺伝子のプロモーター領域を単離し、Sp1のノックダウンによるプロモーター活性の変化の有無を解析中である。さらに、Sp1ノックダウン細胞はヌードマウス皮下における腫瘍形成が著しく抑制されることを見出した。また、対照細胞とSp1ノックダウン細胞においてシグナル伝達分子のリン酸化の変化の有無を解析したところ、Sp1のノックダウンによって幾つかのシグナル伝達分子でリン酸化レベルが変化することが判明した。以上の研究成果から、研究目的を、おおむね順調に達成できたと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
糖鎖修飾が変化したE-カドヘリンに着目して、この分子とSp1ノックダウン細胞の運動能や浸潤能との関わりを解析する。Sp1ノックダウン細胞によってヌードマウス皮下に形成された腫瘍やその周辺の新生血管の状態を観察し、Sp1のノックダウンによる腫瘍形成抑制のメカニズムをより詳細に解析する。Sp1のノックダウンによって生じる糖鎖修飾の変化を担う糖転移酵素を同定するために、リアルタイムPCRによって糖転移酵素遺伝子の発現を定量的に解析する。Sp1のノックダウンによって、リン酸化が変化したシグナル伝達分子を詳細に解析する。ヒト肺がん細胞以外のがん細胞から、Sp1ノックダウン細胞の樹立し、糖鎖修飾の変化の有無を解析する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
【当該研究費が生じた状況】実験の効率化を図った結果、当初使用を予定していた研究費を一部使用することなく、平成23年度の研究実施計画をおおむね達成できた。【翌年度以降に請求する研究費と合わせた使用計画】幾つかの研究実施計画について、より詳細に解析するため、また平成23年度から継続している研究実施計画があるので、翌年度以降に請求する研究費と合わせて使用する。
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Research Products
(2 results)