2012 Fiscal Year Research-status Report
がん微小環境におけるTNF-α→TAK1シグナルはなぜ転移を促進するのか
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23590071
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
櫻井 宏明 富山大学, 大学院医学薬学研究部(薬学), 教授 (00345571)
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Keywords | TNF / TAK1 / EGFR / EphA2 / がん / MAPK / 炎症 / リン酸化 |
Research Abstract |
炎症性サイトカインTNFによって活性化されるキナーゼTAK1よるがん悪性化機構の解析を進めている。我々は、これまでにEGFRのThr-669がERKを介して、またSer-1046/7がp38を介してリン酸化制御されていることを報告してきた。 そこで今年度は、TAK1によってリン酸化される新たなチロシンキナーゼ型受容体を探索した。その結果、Eph受容体ファミリーに属するEphA2が見出された。EphA2は腫瘍内で過剰発現しており、リガンド非依存的な活性化機構に注目が集まっている。そこで、まずリン酸化部位を検討した結果、Ser-897であることがわかった。リン酸化は、TNF刺激後20分ごろをピークとし、60分後にはほとんど脱リン酸化された。次に、TAK1の下流シグナルを検討した結果、ERK経路の阻害剤で完全に抑制された。一方、Ser-897をリン酸化することが報告されているPI3K-Akt経路の阻害剤ではまったく抑制されなかった。したがって、EphA2のリン酸化は、EGFRと同様にMAPKを介していることがわかった。同様に、KRASやBRAFの活性化変異があるヒトがん細胞株を用いて検討した結果、恒常的なERK活性化によりEphA2のリン酸化が起こっていることが明らかとなった。 以上の結果から、EGFRだけでなくEphA2もMAPKを介してリン酸化されることがわかった。今後、ERKによるEphA2リン酸化の分子機構をより詳細に解析するとともに、リン酸化がん悪性化における役割を解明していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
炎症シグナルによるTAK1活性化が、どのようなメカニズムでがん悪性化を引き起こしているのかを解析している。これまでに、チロシンキナーゼ型受容体EGFRの制御を報告していきたが、今年度は新たにEphA2の関与を明らかにした。がん悪性化におけるチロシンキナーゼ型受容体の制御機構の解明は極めて重要な課題であり、それに向けて順調に新しい情報を提供できつつあるため、「おおむね順調に進展している。」とした
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに引き続き、TAK1の下流シグナルによるチロシンキナーゼ型受容体の制御機構の解析を進める。特に、EGFRとEphA2の解析に注力するが、加えて他のチロシンキナーゼ型受容体も制御されている可能性も検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究成果は期待通りに出ているが、今年度には薬学部の耐震改修工事のため約半年間仮説の研究室で実験を行ったため、一部の実験は次年度に行うことにした。年度末に改修後の研究室に戻ったため、残っている実験とともに来年度の実験計画を実施できるものと思われる。したがって、次年度に使用するものも含めて、研究費は予定通り試薬類などの消耗品を中心に充当する。また、次年度が最終年度となることから、研究成果の公表のための出張旅費等に充てる。
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Research Products
(2 results)