2011 Fiscal Year Research-status Report
ペルオキシソーム膜形成システムの解析とナノメディシンへの展開
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23590072
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
今中 常雄 富山大学, 大学院医学薬学研究部(薬学), 教授 (50119559)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | ペルオキシソーム / グリコソーム / ペルオキシソーム膜形成 / タンパク質局在化 / 原虫治療薬 |
Research Abstract |
(1)ペルオキシソーム膜タンパク質局在化の分子基盤と(2)原虫ペルオキシソーム(グリコソーム)タンパク質の局在化機構に基づく治療薬開発に関する研究を展開し、以下に示す成果を得た。1.ペルオキシソーム膜形成にはPex3pとpex19pが関与する。ヒトPex3p・Pex19p複合体の結晶構造解析より、Pex19pとPex3pとの結合様式を明らかにした。さらに、Pex3p分子表面のαヘリックスを介してmPTS受容体やトランスロコンなどのペルオキシソーム膜タンパク質が相互作用している可能性を示した。そこで、mPTS受容体などのPex3p結合タンパク質を同定するため、Pex3pを欠損させた酵母Pichia pastorisにPex3p-Hisを発現する株を作製した。現在、pull down法によりPex3p結合タンパク質を検索中である。2.ペルオキシソーム形成にはPex5pとPex14pの相互作用を必要とする。よって、原虫選択的にその相互作用を阻害する化合物は、原虫治療薬の候補となりうる。そこで、大腸菌発現系を用い、ヒトならびにトリパノソーマのPex5p-His、GST-Pex14pを発現・精製した。次いで、GST-Pex14pをプレートに固定し、Pex14pとPex5pとの結合量を定量化するELISA assay系を構築した。トリパノソーマPex5pとPex14pの相互作用を選択的に阻害する化合物のスクリーニングを行う準備ができた。3.Pex3pとPex19pの相互作用はペルオキシソーム膜形成に必須であるが、トリパノソーマではPex3pに相当するタンパク質が同定されていない。そこで、大腸菌で発現・精製したトリパノソーマPex19pをリガンドとして、トリパノソーマPex19p結合タンパク質を検索している。今後、Pex3pとPex19pを用いたELISA系も構築する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.酵母Pichia pastorisにPex3p-Hisを発現する株を作製することにより、効率よくPex3p結合タンパク質を同定し、遺伝子をクローニングすることが可能になった。2.トリパノソーマ治療薬をスクリーニングするためのELISA assay系を確立できた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度の進展状況を踏まえ、以下の2項目を中心に解析を行う。(1)ペルオキシソーム膜タンパク質局在化の分子基盤 Pex3p-Hisを導入したPichia pastorisを用い、Pex3pと相互作用しているタンパク質を分離し、LC/MS/MSにより、タンパク質を同定する。同定したタンパク質遺伝子をクローニングし、目的タンパク質をノックアウトしたPichia pastorisを作製する。ペルオキシソーム膜タンパク質のペルオキシソームへの輸送低下を指標として、mPTS受容体、トランスロコン候補タンパク質を同定する。(2) 原虫ペルオキシソーム(グリコソーム)膜タンパク質の局在化機構に基づく治療薬の開発 トリパノソーマPex19p-HisをリガンドとしてPex19p結合タンパク質を精製し、LC/MS/MSにより、そのタンパク質を同定する。目的遺伝子をクローニングし、トリパノソーマにsiRNAを導入し、タンパク質をノックダウンする系を確立する。次いで、[35S]メチオニンを用いたパルスーチェイス実験を行い、グリコソーム膜タンパク質のグリコソームへの輸送に関与する分子であることを実証する。一方、ヒトとトリパノソーマでのPex5pとPex14p、Pex3p(Pex19p結合タンパク質)とPex19pの結合阻害実験を行うELISA系を用い、トリパノソーマPex間の結合を選択的に阻害する化合物を検索する。東北大学薬学部ならに和漢医薬学研究所の有する化合物ライブラリーを中心にスクリーニングする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度は、(1)Pex3p結合タンパク質を同定するためにPex3pを欠損させた酵母Pichia pastorisにPex3p-Hisを発現する株を作製すること、(2)ヒトならびにトリパノソーマのPex5p-His、GST-Pex14pを調製し、Pex14pとPex5pとの結合量を定量化するELISA assay系を構築することに集中した。その結果、Pex14pとPex5pとの結合を阻害する化合物スクリーングは平成24年度になった。よって、そのための消耗品費を平成24年度に繰り越した。繰越金644,050円を併せた直接経費1,844,050円について、1,744,050円を消耗品費(原虫治療薬候補化合物スクリーニングを含めた生化学一般試薬、遺伝子関連試薬、培養関連試薬・器具、実験動物・飼料費)とする。また、100,000円を旅費として計上する。
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