2012 Fiscal Year Research-status Report
ペルオキシソーム膜形成システムの解析とナノメディシンへの展開
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23590072
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
今中 常雄 富山大学, 大学院医学薬学研究部(薬学), 教授 (50119559)
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Keywords | ペルオキシソーム / グリコソーム / ペルオキシソーム膜形成 / 膜タンパク質局在化 / トリパノソーマ感染症治療薬 |
Research Abstract |
以下の2つのテーマについて研究を展開し、次の成果を得た。 ①ペルオキシソーム膜タンパク質局在化の分子基盤 1.ペルオキシソーム膜形成にはPex3pとPex19pが重要な役割を担っている。またPex3pの構造と存在状態の解析を通して、mPTS受容体やトランスロコンなどのペルオキシソーム膜タンパク質局在化に必要な因子がPex3pと相互作用している可能性を示した。そこでPex3p結合タンパク質を網羅的に同定するため、human brain cDNAライブラリ-を用い、yeast two-hybrid法によりPex3p結合タンパク質を同定する系を構築した。昨年度作製したHis-Pex3p発現酵母を用いたpull down assay系によるPex3p結合タンパク質の解析と合わせて、ヒトならびに酵母におけるPex3p結合タンパク質を解析中である。 ②原虫ペルオキシソーム(グリコソーム)タンパク質の局在化機構に基づく治療薬開発 1.ペルオキシソーム(グリコソーム)形成にはPex5pとPex14pの相互作用を必要とする。よって、原虫選択的にその相互作用を阻害する化合物は、原虫治療薬の候補となりうる。昨年度、大腸菌発現系を用いヒトならびにトリパノソーマPex5p-His、GST-Pex14pを精製し、その相互作用を定量化するELISA assayを作製したが、より再現性がよく、精度の高いassayシステムに改善した。化合物ライブラリーは東大創薬イノベーションセンターから入手し、スクリーニングの準備ができた。 2.Pex3pとPex19pの相互作用はペルオキシソーム膜形成に必須であるが、トリパノソーマではPex3pに相当するタンパク質が同定されていない。今年度も引き続き、精製したトリパノソーマPex19pをリガンドとして、トリパノソーマPex19p結合タンパク質を検索している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.yeast two-hybrid 法によるヒトPex3p結合タンパク質スクリーニング系を構築したので、効率よくPex3p結合タンパク質を同定し、目的とする遺伝子をクローニングすることを迅速に行えるようになった。 2.トリパノソーマ治療薬をスクリーニングするためのELISA assay系について、 バリデーション等を改善することができた。 3.候補化合物発見後のトリパノソーマへの作用ならびにトリパノソーマ感染マウスでの実験について、具体的な共同研究の打ち合わせができた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの進展状況を踏まえ、以下の2つの項目を中心に解析を行う。 ①ペルオキシソーム膜タンパク質局在化の分子基盤 Pex3p-Hisを導入したPichia pastorisならびにhuman cDNAライブラリーを用いたyeasy two-hybrid法により、Pex3pと相互作用しているタンパク質を同定する。同定したタンパク質をノックアウト(酵母)、ノックダウン(ヒト細胞)することにより、ペルオキシソーム膜タンパク質のペルオキシソームへの輸送低下を指標として、mPTS受容体、トランスロコン候補タンパク質を同定する。 ② 原虫グリコソームタンパク質の局在化機構に基づく治療薬の開発 トリパノソーマPex5p-Pex14pの相互作用を阻害することを指標に、(ヒトPex5p-Pex14p相互作用をコントロールとし)治療薬候補化合物をスクリーニングする。候補化合物については、その効果を培養トリパノソーマで検証し、感染動物での実験へと進める。 一方、トリパノソーマPex19p-HisをリガンドとしてPex19p結合タンパク質を同定する。同定したタンパク質の遺伝子をクローニングし、トリパノソーマにそのsiRNAを導入し、グリコソーム膜形成にかかわること、トリパノソーの生育に影響を与える可能性を検討する、生育阻害が検証できれば、ヒトとトリパノソーマ間でのPex3p(Pex19p結合タンパク質)とPex19pの結合阻害実験を行うELISA系を構築する。膜形成阻害の方がトリパノソーマにとってより致死的と推定されるので、このELISA系の確立にも取り組む。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は、①酵母Pichia pastorisにPex3p-Hisを発現する株ならびにhuman cDNAライブラリーを用いたyeast two-hybrid法により、Pex3p結合タンパク質を見出し、ペルオキシソーム膜形成を制御する新たな因子を同定する。②ヒトならびにトリパノソーマのPex5p、Pex14pの結合を定量化するELISA assay系を用いて、トリパノソーマ感染治療薬の候補化合物を発見する。本年度は、バリデーション等の検討が必要であり、化合物スクリーングは平成25年度になった。よって、そのための消耗品費を平成25年度に繰り越した。繰越金555,000円を併せた直接経費1,755,000円について、1,655,000円を消耗品費(原虫治療薬候補化合物スクリーニングを含めた生化学一般試薬、遺伝子関連試薬、培養関連試薬・器具、実験動物・飼料費)とする。また、100,000円を旅費として計上する。
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