2011 Fiscal Year Research-status Report
食道扁平上皮癌特異的なmicroRNAの機能解析及びその分子メカニズムの解明
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23590076
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
土屋 創健 熊本大学, 生命科学研究部, 助教 (80423002)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | microRNA |
Research Abstract |
食道扁平上皮癌(Esophageal squamous cell carcinoma; ESCC)の臨床サンプル(n = 82)におけるmicroRNAの発現量を網羅的に正常組織と比較したところ、発現量が有意に異なるmicroRNAとして、miR-B(仮名)及びmiR-L(仮名)を同定した。しかしながら、ESCCやその他のがんにおけるこれらのmicroRNAの機能・役割はまったく不明である。microRNAは相補配列依存的にmRNAの3’UTRに結合し、その標的mRNAの分解もしくは翻訳を阻害することにより機能を発揮することから、miR-B及びmiR-LのESCCにおける機能・役割及びそのメカニズムを明らかにするために、まずこれらのmicroRNAのESCC特異的な標的mRNAの同定を行った。ESCC細胞株、KYSE-170に上記の合成microRNAをそれぞれ導入した際の網羅的なmRNA発現量変化を捉え、それぞれの導入により3倍以上発現量が低下し、さらに3’UTRにこれらのmicroRNAの標的となりうる塩基配列を有するものだけを抽出したところ、それぞれ18(miR-B)、17個(miR-L)の標的候補mRNAを見いだした。種々のバイオインフォマティクス手法を用いて同定された上記の標的遺伝子の機能等を解析した結果、miR-Lが癌細胞の増殖に関与する可能性が強く示唆された。そこで、細胞生存・増殖の指標であるWST-1 assayを用いてmiR-Lが癌細胞の増殖に及ぼす影響を調べたところ、miR-Lの導入がESCCの細胞増殖を有意に阻害することが見いだされ、miR-Lは腫瘍抑制microRNAとして機能していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題は3年計画の一年目に該当し、本年度においてESCCに特異的なmiR-B及びmiR-Lの標的RNA候補を網羅的に同定し、それを基にESCCにおけるmiR-BもしくはmiR-Lの機能やその分子メカニズムの高次の予測を行い、miR-BもしくはmiR-Lの機能解析を行う計画であった。その結果、本年度において、miR-B及びmiR-Lの標的RNA候補を網羅的に同定し、そこからmiR-B及びmiR-Lの機能予測を行った結果、miR-Lが癌細胞の増殖を有意に抑制する事を見いだした。従って、本研究課題は計画に沿って順調に進行しており、現在までの達成度は「おおむね順調に進展している」であると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題はmiR-B及びmiR-Lにおける標的mRNAの同定を行い、バイオインフォマティクス手法を用いてmiR-B及びmiR-LのESCCにおける機能・役割を予測し、その検証を行うことを計画している。そのため、同定された標的mRNAから予測されたmicroRNAの機能・役割に準拠して解析する実験の内容・順番がかわるため、比較的短期間においては使用する費用も実験ごとに変わってくる。本年度は予算消化を必要以上に考慮せずに純粋に成果・効率を最優先して予測された結果に基づいた解析を行うことが可能であったため、結果的に費用のあまりかからない癌細胞の増殖における解析を優先して行い、未使用の予算が生じた。しかしながら、上記はまさに基金化における恩恵であり、時間・効率・労働において無駄のない研究の推進が可能であった。未使用額に関しては、次年度以降にmiR-B及びmiR-Lさらにはこれらの標的遺伝子の機能・役割の解明を行う際に適切に使用するものである。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
未使用額に関しては次年度の予算とあわせて、次年度以降にmiR-B及びmiR-Lさらにはこれらの標的遺伝子の機能・役割の解明を行う上で適切に使用する計画である。
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