2012 Fiscal Year Research-status Report
イノシトールリン脂質脱リン酸化酵素欠損細胞を用いた小胞輸送系の解析
Project/Area Number |
23590078
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
櫨木 修 広島大学, 医歯薬保健学研究院(薬), 教授 (80142751)
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Keywords | イノシトールリン脂質 / RAW264.7 / 貪食 / ザイモザン / 72-5ptase / PTEN / SHIP |
Research Abstract |
本研究は, 食作用・飲作用の過程を制御するイノシトールリン脂質代謝酵素ネットワークの全貌を理解することを目的としている。このために,特定のイノシトールリン脂質脱リン酸化酵素に特異的な shRNA を安定発現させた一群の細胞クローンを作成し,食作用・飲作用に伴う小胞膜輸送の変化と細胞内リン脂質の時空間的挙動の変化を網羅的に解析している。 平成23年度においては,RAW264.7 細胞を親細胞とし,イノシトールリン脂質 5’-位脱リン酸化酵素(72-5ptase, SHIP-1, SHIP-2, synaptojanin2, SKIP)の欠損細胞を作成し、これらの細胞が IgG 受容体を介して赤血球を貪食する過程における PtdIns(3)P の動態を観察した。平成24年度においては,新たにイノシトールリン脂質 3’-位脱リン酸化酵素(MTM1, MTMR2, Sac1, Sac3)の欠損細胞の作成に着手する一方,すでに興味深い表現型を観察している細胞群(PTEN, 72-5ptase, SHIP-1, SHIP-2 などの欠損細胞)については,現象の当該酵素依存性を証明するために,標的とする配列が異なる shRNA を用いて新規欠損細胞クローンを作成した。また,これらの細胞による zymosan の貪食過程についても検討し,形成されたばかりの食胞の表面に出現する PtdIns(3,4)P2 の寿命が,赤血球の貪食時と比較して極めて長いという特徴を観察した。この現象の機構と生理的意義について,今後,明らかにする必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究企画の中で,全てのイノシトールリン脂質脱リン酸化酵素について欠損細胞を作成するという作業は順調に進んでいる。また,zymosan 貪食時には PtdIns(3)P, PtdIns(3,4)P2, PtdIns(3,4,5)P3 の時空間的挙動を観察しやすいことを発見した。今後,各欠損細胞におけるこれらリン脂質の他,Rab family members や endosome markers 等の挙動についてもあわせて観察していく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
すでに作成したイノシトールリン脂質脱リン酸化酵素欠損細胞群における PtdIns(3)P, PtdIns(3,4)P2, PtdIns(3,4)P2 の挙動については,赤血球と zymosan を比較しつつ検討を進める。際立って興味深い表現型を示す PTEN, 72-5ptase 欠損細胞については特に詳細な検討を行う。また,当初の実験計画どおり,各 3’-位脱リン酸化酵素アイソザイムの欠損細胞を順次作成していく。PtdIns(3,4,5)P3 の挙動については,当初,文献的根拠から使用を予定していたプローブが正しく機能していないという問題点が浮上した。研究の最終年度になるが,新たな課題として,最適なプローブの開発研究を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究では,多種類の細胞クローンを作成する関係上,多量の『遺伝子操作関連試薬』『トランスフェクト試薬』『細胞培養試薬・器具』『ウェスタンブロット用抗体・検出試薬』等を使用する。このため,研究費の大部分はこれら消耗品の新規購入に充てる。研究の最終年度となるため,学会発表のための旅費の他,論文投稿に関わる費用としても一部を支出する予定である(それぞれ 50千円,100千円を予定している)。
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Research Products
(6 results)