2012 Fiscal Year Research-status Report
がん抑制遺伝子によるETS転写制御因子MEFの発現制御機構の解明
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23590082
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
スイコ メリー・アン・ソテン 熊本大学, 大学院生命科学研究部, 助教 (20363525)
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Keywords | 癌抑制遺伝子 / 転写因子 / 翻訳後発現調節 / MEF / p53 / MDM2 / Rb |
Research Abstract |
昨年度までの検討で,癌抑制遺伝子p53は,E3ユビキチンリガーゼであるMDM2の発現上昇を介して,MEFタンパク質の発現を負に制御することを明らかにした.そこで,本年度は,その詳細な機構について種々の分子生物学的手法を用いて検討した.まず,MDM2がMEFと相互作用するか否かについて免疫沈降法を用いて検討した.その結果,MEFはそのN末端配列によってMDM2と相互作用することが明らかになった.次にMDM2がMEFの局在に対して与える影響について検討したところ,MDM2の過剰発現により,細胞質中のMEFの発現量が減少し,結果として,total MEF発現量が減少することを見いだした.このとき,核内のMEFの発現量はMDM2によって影響を受けないことから,MDM2は,細胞質中にプールされた,または,核内から細胞質中に移行してきたMEFの発現を特異的に減少させることが明らかになった.最後に,MDM2によるMEFの発現低下におけるp53依存性について,p53正常およびノックアウト細胞を用いた検討を実施した.その結果,p53ノックアウト細胞においてMEFの発現量は上昇したことから,p53はMEFの負の制御因子であることが改めて確認できた. 次に,別の癌抑制遺伝子であるRbに着目しMEFの発現調節に対する影響について確認したところ,Rbの過剰発現は,MEFの発現量を上昇させた. 以上,本研究は,ETS転写因子MEFが,種々の癌抑制遺伝子によって,制御されることを示す興味深い報告である.また,我々は,MEF自身も癌抑制遺伝子であることを既に報告しており,本報告は,このような癌抑制遺伝子間での相互制御調節の一端を明らかにするものである.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度は,癌抑制遺伝子p53によるMEFタンパク質の発現の負の制御機構の詳細について種々の分子生物学的手法を用いて検討することを想定し,研究に着手し,p53は,MDM2の発現上昇をを引き起こし,その後のMDM2-MEF相互作用が,MEFを負に制御するという詳細な貴校を明らかにできた.また,別の癌抑制遺伝子であるRbについても検討し,MEFの発現を正に調節することを明らかにした.全般として,当初の計画通りに進行している.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は,ETS転写因子MEFが,種々の癌抑制遺伝子によって,制御されることを示す研究内容であり,また,我々も,MEF自身が癌抑制遺伝子であることを既に報告している.このことは,癌抑制遺伝子間で相互の制御調節が存在することを意味しており,このような相互調節が生理的にどのような役割を担うかの詳細は明らかでない.一方.近年,がん幹細胞における転写因子HIF1の関与が強く示唆されるようになり,癌の調節機構を考える上で,興味深い.また,MEFは,正常幹細胞において,SOX2の発現を上昇させる働きを有することから,がん幹細胞においても重要な役割を担う可能性が高い.そこで,次年度は,がん幹細胞等における,癌抑制遺伝子間相互制御調節の一端を明らかにすることを目的とし,HIF1とMEFの相互調節機構に着眼し,研究を展開する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究で実施する実験のほとんどは,培養細胞系を用いた遺伝子導入実験,リポーターアッセイ,RT-PCR,免疫沈降法である.これらの実験には,遺伝子導入試薬(1本約3万円),Dual luciferase assay kit(1000回分,10万円)RT-PCR SYBR Green Kit(1反応1000円),抗体(1本約3-5万円)などを用いる予定である.また,本研究領域は,非常に進展がはやいため,日本癌学会およびアメリカ細胞生物学会に参加することで,研究の動向を探る.最終年度には論文の投稿を目標とする.
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Research Products
(10 results)