2011 Fiscal Year Research-status Report
生体膜脂質酸化ホメオスタシスの破綻による新規細胞死の実行経路の解明
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23590089
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
今井 浩孝 北里大学, 薬学部, 准教授 (50255361)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 細胞死 / 脂質酸化 / shRNAライブラリー / 阻害剤 / GPx4 / 急性心不全 |
Research Abstract |
生体膜脂質酸化ホメオスタシスの破綻による新規細胞死の実行経路を明らかにするために、化合物ライブラリーをスクリーニングしたところ、MEKやCDK4の阻害剤がヒットした。平成23年度は、生体膜脂質酸化ホメオスタシスの破綻のモデルをタモキシフェン誘導型PHGPx(リン脂質ヒドロペルオキシドグルタチオンペルオキシダーゼ)欠損MEF細胞を用いて行い、タモキシフェン添加後のPHGPx欠損時における細胞内の脂質酸化及び、CDK4の細胞内分布の変化、MEKのリン酸化基質であるERKのリン酸化の経時的変化について、蛍光プローブDCF、抗CDK4抗体及び抗リン酸化ERK抗体による免疫細胞染色法を用いて解析した。細胞内脂質酸化反応は24時間から36時間で最大となり、CDK4の核内への移行が36時間、ERKのリン酸化は36時間後から48時間後でみられた。実際に脂質の酸化を抑制できるトロロックス、CDK4阻害剤、MEKの阻害剤を用いた解析から、CDK4の核輸送、ERKのリン酸化、細胞内脂質酸化への影響を調べたところ、上述の時間経過で新たな細胞死シグナル経路が流れていることが確かめられた。一方で個体レベルではビタミンE添加食でレスキューできた心臓特異的PHGPx欠損マウスを通常食に変えた時に起きる急性心不全による突然死モデルを用いて、心筋細胞死の細胞死の性状について解析を行ったところ、TUNEL陽性ではあったが、DNAのラダーは見えず、カスパーゼ非依存的、非オートファジー性細胞死であり、MEF細胞でみられた新規細胞死様の細胞死が、in vivoでも同様にみられることが明らかとなった。shRNAライブラリーを用いた解析では、細胞死を抑制する候補shRNAをGene chipを用いて網羅的に解析を行ったところ、50遺伝子を超える候補遺伝子群を得ることに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書では、本年度は、PHGPx欠損により引き起こされる生体膜脂質の酸化ホメオスタシスの破綻が起因となる新規細胞死の実行経路を明らかにするために、主に3つの実験系を試みることにしていた。一つ目は、細胞死を抑制できる新たに見出した阻害剤の標的蛋白質の細胞死における挙動変化の解析、2つ目は、組織特異的PHGPx欠損マウスを用いて実際に同様な細胞死がIn vivoでも起きているのかの検証、さらにshRNAライブラリーを用いた細胞死の実行に関与する遺伝子群の網羅的解析である。いずれの研究課題についても、当初の予定した結果を得ることができ、まず新規細胞死の実行因子としてCDK4とMEK-ERK系が関与していることを明らかにした。このシグナル系は通常細胞の増殖、生存に関与する経路であり、細胞死の実行経路としても利用されることは興味ぶかい。またこのIn vivo の解析からもこのMEF細胞でみられた新規細胞死が実際の臓器でも起きていることが確かめられた。来年度は阻害剤のIn vivoでの効果やshRNAを用いた解析を行い、この現象についてさらに確固たるデータを得る予定にしている。shRNAライブラリーのスクリーニング系も立ち上げることができ、1次スクリーニングとしての候補遺伝子の絞り込みはできたと考えている。以上の様に本年度は計画していた課題内容はすべてクリアしており、ほぼ満点の達成度であったと考えている。来年度はさらに新規細胞死の実行経路の詳細を明らかにしたいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は、1)MEF細胞を用いた細胞死のシグナル伝達経路の解析では、CDK4及びMEK,ERKに対するshRNAを用いて、ノックダウン細胞を用いて、これらの酵素が本当にシグナル伝達経路に関与しているのかどうかについて明らかにする。またCDK4はサイクリンD1とともに通常RB蛋白質をリン酸化することが知られている。CDK4がこれらの分子を介してシグナル伝達を下流に伝えているのかをノックダウン細胞を作製し解析する。またそれぞれのノックダウン細胞に対して、酵素活性のある遺伝子と酵素活性の無い変異体を再導入したときに細胞死のシグナルが流れるのかについても明らかにする。 2)個体レベルでの解析では、心臓特異的PHGPx欠損マウスを用いて、ビタミンEを通常食に換えた時に約10日後に突然死をおこす系を用いて、実際に阻害剤がIn vivoでも個体の致死に対して抑制効果あるいは寿命の延長効果がみられるのかについて明らかにする予定である。 3)shRNAライブラリーを用いた細胞実行因子の同定の解析では、ウイルスshRNAライブラリーを感染させたタモキシフェン誘導型PHGPx欠損細胞に対して、タモキシフェンを添加し、4日目まで生き残った細胞に濃縮されているshRNAをGene chipで検出した。この候補遺伝子について、まず再現性がみられるのかを明らかにし、再現性の得られた候補遺伝子について、実際に単独のshRNAを細胞に感染させることにより、タモキシフェン添加による細胞死を抑制できるのかについての2次スクリーニングをすすめる予定にしている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度の配分研究費は140万円である。マウスの餌代、床敷き代などに50万円、候補遺伝子やCDK4やERKなどのshRNAレトロウィルスベクターの作製、及び細胞への感染に必要な遺伝子関連の試薬代に50万円、あとは、抗体や蛍光プローブ等を用いた生化学的解析の実験に30万、細胞培養用の試薬に10万で合わせて、140万円をすべて物品費として使用する予定である。もし、論文投稿できそうな場合、物品費の中から10万円を目処に、論文投稿、別刷り代金等にあてる予定にしている。
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Research Products
(8 results)