2012 Fiscal Year Research-status Report
生体膜脂質酸化ホメオスタシスの破綻による新規細胞死の実行経路の解明
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23590089
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
今井 浩孝 北里大学, 薬学部, 准教授 (50255361)
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Keywords | 細胞死 / 脂質酸化 / shRNAライブラリー / 阻害剤 / GPx4 / 心不全 |
Research Abstract |
平成23年度に行った化合物ライブラリー(酵素の阻害剤)のスクリーニングで明らかとなった生体膜脂質酸化ホメオスタシスの破綻による新規細胞死の実行候補蛋白質、CDK4とMEKに対して、平成24年度は詳細な解析を行った。タモキシフェン誘導型PHGPx欠損MEF細胞を用いて、CDK4, MEK shRNA発現レトロウィルスを感染させることによりそれぞれの酵素のノックダウン細胞を作成したところ、タモキシフェン添加でPHGPxゲノム遺伝子の破壊により起こる内在性のリン脂質の酸化が起因となる新規細胞死に対して、抑制効果を示すことが明らかとなった。またこのノックダウン細胞株に、CDK4およびMEKのキナーゼ不活性型と活性型発現cDNA遺伝子を導入したところ、活性型のみ、タモキシフェン添加による新規細胞死の誘導を回復させた。このことからCDK4およびMEKが新規細胞死の鍵となるシグナル伝達酵素であることが明らかとなった。また心臟特異的PHGPx欠損マウスにおけるビタミンE低下による心不全による突然死マウスモデルにおいて、両酵素の阻害剤の致死延長効果を検討したところ、有意に致死日数が延長されることを明らかにした。このことは、In vivoにおいても両酵素が新規細胞死に関与していることを示すことができた。またshRNAライブラリーによりこの新規細胞死を抑制する遺伝子群のスクリーニングを行ったところ、最終的に約120の候補遺伝子を得た。それぞれ単独のshRNA発現レトロウィルス感染系を用いて新規細胞死を抑制出来るのかについてニ次スクリーニングを行ったところ、強く抑制する遺伝子群23遺伝子と弱く抑制できる遺伝子群20遺伝子の併せて43遺伝子を見出した。23遺伝子のうち10遺伝子はほとんど報告がない新規の遺伝子であり、この新規細胞死経路が新しいシグナル伝達経路を構成している可能性を見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の酵素の阻害剤やリン酸化酵素の抗体を用いた解析から、新規細胞死の誘導経路に、PHGPx欠損によるリン脂質酸化反応、その下流にCDK4およびMEKの活性化が関与していることを明らかにしていた。今年度、両酵素のノックダウン細胞および、キナーゼ不活性型および活性型のcDNAの発現ウィルスによるノックダウン細胞の効果の回復実験を行うことにより、確かにCDK4およびMEKがこの新規細胞死の鍵となる酵素であることを明らかにできた。またこのshRNAによる細胞死の抑制効果は、shRNAライブラリーによるスクリーニングが機能することを示した。実際に初年度から引き続き行ったshRNAライブライー感染によるGene chipによる致死実行候補遺伝子群を約120遺伝子見出し、それぞれを単独でノックダウンすることで新規細胞死を抑制出来る遺伝子を強弱併せて43遺伝子見出し、そのうち10遺伝子以上が新規の遺伝子であることが明らかとなり、新規の細胞死シグナル伝達機構の存在が浮かび上がってきた点で大きな進展が得られたと考えている。In vivoでの効果については、当初肝臓特異的PHGPx欠損マウスモデルを用いて解析することを考えていたが、ビタミンE低下による致死が3ヵ月とかかることから、心臟特異的PHGPx欠損マウスに変更して解析を試みた。その結果、心臟におけるPHGPx欠損による胎児死にはCDK4の阻害剤が、成体におけるビタミンEの低下による致死においてCDK4およびMEKの阻害剤に致死抑制効果がみられることを見出し、In vivoでも同様の細胞死経路が関与していることを示すことができた。これらの結果から当初の予定以上に成果が得られているものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度は論文作成を念頭に、In vivoでの心臟特異的PHGPx欠損マウス胎児でのMEKの阻害剤の致死抑制効果、心筋細胞での致死過程でのERKのリン酸化の検出、同様に成体心臓特異的PHGPx欠損マウスにおける心不全による突然死モデルにおいてのERKのリン酸化の検出をまず第一に行う。論文のリバイスの実験が求められた場合その実験を優先して行う。 平成24年度で見出したshRNAライブラリーのスクリーニングで見出した43遺伝子のshRNAによる新規細胞死の抑制部位がどこに位置するのかについての3次スクリーニングを行う。具体的には脂質酸化反応(タモキシフェン添加24時間後)、CDK4活性化あるいはMEKのリン酸化(48時間後)それ以降細胞死課程(72時間後)のどのステップで抑えているのかについて、フローサイトメトリー法、リン酸化ERK抗体やCDK4抗体による免疫染色、およびオールインワン顕微鏡による細胞死観察により明らかにする。また、実際にshRNAで細胞死が抑制された細胞のmRNAを用いて、定量的real time PCR法を用いてノックダウンの効率を調べるとともに、それぞれの責任遺伝子(特に新規遺伝子)cDNAの発現により確かに致死の抑制が解除できるのかについての確証を得る実験を行い、新規細胞死実行因子の全体像を明らかにする予定にしている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度の配分研究費は80万円である。マウスの餌代、床敷き代などに30万円、候補遺伝子の致死抑制部位の生化学的手法を用いた解析に30万円、細胞培養関連に10万円とし、物品費として70万円を使用する予定である。論文投稿、英文校正、別刷り代金等で10万円をあてる予定にしている。
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