2011 Fiscal Year Research-status Report
インテグリン依存的ながん細胞の腹膜への接着・浸潤とサイトカインによる修飾
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23590092
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Research Institution | Hoshi University |
Principal Investigator |
辻 勉 星薬科大学, 薬学部, 教授 (00143503)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | がん浸潤 / 細胞接着 / インテグリン / 細胞外マトリックス / メタロプロテイナーゼ |
Research Abstract |
1)腫瘍壊死因子 (TNF-α) による中皮細胞の形態変化とがん細胞の接着性 マウス腹膜より単離した中皮細胞の単層培養系に対してTNF-αを作用させ中皮細胞の形態変化を顕微鏡により観察したところ、中皮細胞の間隙が拡がっていることが認められた。一方、ヒト胃がん細胞株MKN1を蛍光色素であるBCECFで標識した後に、中皮細胞の単層培養系に対する接着性を調べた。その結果、中皮細胞をTNF-α処理することにより細胞接着率が上昇し、この接着増強は抗α3インテグリン抗体の存在下では抑制されることが判明した。また、α3β1インテグリン陰性の白血病細胞株であるK562にcDNAトランスフェクションによりα3インテグリンを強制発現させた細胞を用いて、同様に接着実験を行ったところ、モック細胞に比べて強く接着することがわかった。これらの結果から、TNF-α処理によって生じた細胞間隙に蓄積した細胞外マトリックスに対してα3β1インテグリン依存的ながん細胞の接着が増強されるものと考えられた。2)がん細胞からのマトリックス分解酵素産生の誘導 胃がん細胞とラミニン等の基底膜成分との相互作用によるマトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP-2及びMMP-9)の産生変化をゼラチンザイモグラフィーにより解析した。基底膜の主要成分であるラミニン5をコートした培養プレートでMKN1細胞を培養すると、MMP-9産生の増強が認められた。一方、MMP-2産生量にはほとんど変化が見られなかった。また、MMP-9産生の増強は、プレートにコートするラミニン5の濃度依存的であった。これらの結果は、胃がん細胞が腹膜基底膜に含まれるラミニン5等の細胞外マトリックスとの相互作用を介してマトリックス分解酵素産生を亢進し、組織浸潤が促進することを示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マウス腹膜からの中皮細胞の単離と培養に困難がある可能性があったが、試行錯誤の結果、おおむね順調に達成されている。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、下記の項目について解析する予定である。1)疑似腹膜によるがん細胞の浸潤能の評価系の確立 Boydenチャンバーを用いた疑似腹膜によるがん細胞の浸潤能の評価系を確立する。この疑似腹膜は,チャンバーの上室と下室を隔てるPET膜表面を基底膜成分を含むマトリゲルでコートし,次いでマウス腹膜中皮細胞を単層培養する。下室に線維芽細胞由来の細胞走化性因子を,上室には胃がん細胞株をそれぞれ添加し,培養を続け一定時間後に下室に浸潤する細胞を計測する。この方法で腹膜転移性の胃がん細胞株であるMKN1およびNUGC4細胞の浸潤能を測定する。抗接着分子抗体,ラミニンファミリー分子に対する抗体またはMMP阻害薬の効果やRNA干渉法によりα3インテグリンをノックダウンさせた細胞の浸潤能の変化等を評価し,インテグリンや腹膜のリガンド分子の役割を解析する。2)サイトカインによる接着分子発現およびマトリックス分解酵素誘導 単離した腹膜中皮細胞の炎症性サイトカインに対する応答性を調べる。サイトカインとしては、腫瘍壊死因子 (TNF-α) およびインターロイキン1 (IL-1)を予定している。がん細胞あるいは中皮細胞にサイトカインを作用させた後に、ゼラチンザイモグラフィー法およびELISA法によりMMP-2およびMMP-9を測定する。同時にα3β1インテグリンの高親和性リガンドであるラミニン5産生変化をELISA法および蛍光接着試験により測定し、がん細胞の浸潤に対するこれらの分子群の役割を検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究費の主な使途は、今年度と同様に消耗品となる予定である。購入予定の主なものは、マウス、培養器具、血清、抗体、サイトカイン類などを予定している。特に、多くの部分が浸潤能測定用のチャンバー類、培養用血清に充当される予定である。
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Research Products
(2 results)