2011 Fiscal Year Research-status Report
好中球をターゲットとした重症喘息と慢性閉塞性肺疾患(COPD)の制御に関する研究
Project/Area Number |
23590093
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Research Institution | Kyoto Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
奈邉 健 京都薬科大学, 薬学部, 准教授 (40228078)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
水谷 暢明 神戸薬科大学, 薬学部, 講師 (90340447)
藤井 正徳 京都薬科大学, 薬学部, 助教 (40434667)
安井 裕之 京都薬科大学, 薬学部, 教授 (20278443)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 気管支喘息 / 慢性閉塞性肺疾患 / 好中球 / マクロファージ / 気道リモデリング / 遅発性喘息反応 / アレルギー / IL-33 |
Research Abstract |
本研究では、難治性喘息および慢性閉塞性肺疾患 (COPD) の病態における好中球の役割について、マウスモデルを用いて検討することを目的に研究を実行した。 気管支喘息に関しては、難治性病態の特徴である気道リモデリングの形成について検討したところ、CD4+細胞は一部関与することを示す知見が得られたが、好中球の関与については否定的な成績が得られた。そこで、自然免疫系に関与する別の主要な細胞であるマクロファージに着目したところ、気道リモデリングの形成と時間的に一致して、肺組織にM2マクロファージの増加が観察された。さらに、M2マクロファージへの分化を促進することが報告されているIL-33が気道上皮や肺組織に浸潤した炎症細胞に強発現することが明らかとなった。 一方、難治性喘息のもう1つの特徴である遅発性喘息反応の発症には好中球が大きな役割を演じ、内因性に抗原刺激により産生されるIL-10が好中球浸潤を負に制御していることをこれまで明らかにしてきた。今回、IL-10産生細胞を同定したところ、Tr1細胞であること、また、IL-10の標的細胞はマクロファージであることを示唆する成績を得た。 一方、COPDの動物モデルとして、これまでモルモットモデルで培ってきた経験をもとに、BALB/cマウスにタバコ煙抽出液を、約1ヶ月間、連日気管内投与を行ったところ、肺への好中球浸潤は認められなかった。そこで、感染因子を想定してリポポリサッカライド (LPS) とタバコ煙抽出液を併用して投与したところ、肺への好中球浸潤は認められたが、この反応はLPS単独処置群と比較して強いものではなく、COPDの特徴であるタバコによる増強は観察できなかった。また、いずれの処置によっても慢性的な呼吸機能の低下は認められなかった。したがって、タバコ煙の長期投与によってマウスにCOPD様病態を形成することは困難であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
気管支喘息モデルに関しては、当初のスケジュール以上に研究が進行している。すなわち、平成23年度における当初の研究計画であった「気道リモデリングにおける好中球の関与」について検討し、成績はネガティブであったものの、自然免疫系に関わる別の炎症細胞であるM2マクロファージの関与の可能性を示唆する成績が得られ、さらにM2マクロファージへの分化をコントロールする分子としてIL-33の関与の可能性が示唆された。これらは当初の計画にはなかった事柄であり、好中球に代わる気道リモデリングのターゲットとなりえる細胞・分子として、今後の展開が期待できる。 さらに、難治性喘息のもう1つの特徴である遅発性喘息反応 (LAR) の発症に対する制御因子としてIL-10が産生されることを明らかにしてきたが、このIL-10の産生細胞の同定は平成24年度以降の予定であったが、平成23年度において、ほぼTr1細胞であることを突き止めることができた。今後、当初の計画には記載しなかった研究、すなわち、Tr1細胞を試験管内で増殖させ、これを生体内に戻すことによって難治性喘息が制御できるか否かを検討することを新たに計画したい。 他方、COPDに関しては、マウスにおいてタバコ煙抽出液を投与すること、さらにこれに感染因子を想定してエンドトキシンを併用することなど、いくつかの試行錯誤を行ったが、結果的に、タバコ煙に特異的な好中球浸潤や慢性的な呼吸困難症状を呈するモデルを作成することは困難であった。この点に関しては、当初の計画を変更し、難治性喘息における自然免疫系の細胞の関与を検討することによって好中球やマクロファージの浸潤・活性化機構を明らかにし、その結果より間接的にCOPDの病態の理解に繋げていくこととしたい。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は重症喘息とCOPDという2つの呼吸器疾患を制御する目的で、好中球に着目して研究を進めて行くことを計画した。しかしながら、これまでの成績と2011年度の研究成績をまとめると、(1)好中球は遅発性喘息には大きく関与するが、気道リモデリングに関与しなかった、(2)マウスのタバコによるCOPDモデルの作成は困難であった。したがって、今後の計画は、以下のように変更することとしたい。(1)気道リモデリングの発症におけるマクロファージを軸とした発症機構の解析:好中球と同様に自然免疫系において中心的な役割を演じるマクロファージに着目し、M2マクロファージへの分化過程や気道リモデリングへの関与について検討する。とくに、M2マクロファージの分化におけるIL-33の役割について着目するとともに、近年明らかにされつつある骨髄系細胞の一種であるニューオサイトとの相互作用についても明らかにする。さらに、M2マクロファージやニューサイトなどからから産生される機能分子(活性酸素・窒素種、酵素、増殖因子など)についても着目したい。これらの自然免疫系の細胞や分子の役割を明らかにすることができれば、難治性喘息のみならずCOPDの治療薬の開発にも間接的に貢献できると考えられる。(2)培養Tr1細胞による喘息制御の試み:難治性喘息を制御する治療法の開発の一環として、IL-10を高産生するTr1細胞をin vitro培養系で効率よく増殖させ、これを喘息の個体に移入することで喘息を制御する試みを計画する。まずは、マウスの系とし、感作マウスの脾細胞および末梢血単核球からin vitroで抗原および種々増殖因子の存在下にTr1細胞を分化・増殖させ、これを喘息モデルマウスに移入することにより、喘息反応の制御が可能か否か検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
2012年度以降は、新たにM2マクロファージやIL-33の役割を検討する計画を追加したが、これは研究分担者の水谷が一部担当するため、20万円の研究費を配分する。また、マクロファージなどの炎症細胞由来の機能分子として、活性酸素・窒素種、酵素、増殖因子の測定に関しては、研究分担者の安井が一部担当するため、20万円の研究費を配分する。気道リモデリングの組織学的解析の一部は、当初の計画通り、研究分担者の藤井が担当するため、20万円の研究費を配分する。 研究代表者の奈邉は、60万円で研究の統括、ならびに培養Tr1細胞による喘息制御の試みを検討する。
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[Journal Article] Regulatory role of antigen-induced interleukin-10, produced by CD4+T cells, in airway neutrophilia in a murine model for asthma.2012
Author(s)
Takeshi Nabe, Ayumu Ikedo, Fusa Hosokawa, Maki Kishima, Masanori Fujii, Nobuaki Mizutani, Shin Yoshino, Keiichi Ishihara, Satoshi Akiba, David D. Chaplin
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Journal Title
European Journal of Pharmacology
Volume: 677
Pages: 154-162
DOI
Peer Reviewed
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