2011 Fiscal Year Research-status Report
新規時計機能欠損マウスを用いた生物時計の階層性とリズム調整薬の探求
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23590107
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山口 賀章 京都大学, 薬学研究科(研究院), 助教 (30467427)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 視交叉上核 / サーカディアンリズム / 生物時計 / 組織特異的Cre / リズム異常 |
Research Abstract |
覚醒・活動・睡眠という生活リズムは、社会生活や個人の健康の基盤である。この24時間リズムを司る概日時計システムの中枢は脳の視交叉上核(SCN)にある。私は、SCNの分子研究から、概日時計システムの入出力に直接関わる分子として、SCNに極めて強く発現し、24時間周期でリズミックに発現振動する機能未知の低分子量Gタンパク質(GXと記す)を見出した。そこで私は、SCN特異的なGXのノックアウトマウスを作出し、GXの概日時計システムにおける機能の解明を試みる。またGXは、他の組織においても発現している。そこで、組織特異的なGXノックアウトのリズム異常モデルマウスを作出することで、種々の病態の解明に時間生物学の観点からアプローチを行う。[GXコンディショナルノックアウト(GX-CKO)マウスの作出] Cre-loxPシステムを用いて、GX-CKOマウスを作出した。続いて、全身にCreを発現するマウスと交配させて、全身GXノックアウトのホモマウスを作出した。今後、このGX-/-マウスの、概日行動リズムや光応答性といった時間生物学における基本的な行動解析を行う。[GXの転写制御機構の解明] SCNにおいてGXのmRNAは、朝から昼にかけてピーク値をとる24時間周期のリズムを示す。この振動パターンは時計関連遺伝子発現の制御で主要なエレメントであるE-box配列による制御を示唆する。実際、私はE-box配列がGXのプロモーターに存在することを確認した。そこで、GXのプロモーターでルシフェラーゼを発現させるコンストラクト(GX-luc)を作成し、E-box活性化因子と共に培養細胞に発現させたところ、発光量が上昇した。この上昇はE-box配列に対する抑制因子により、GX-lucのみと同程度まで低下した。よって、GXのmRNAの発現リズムは、E-boxによって制御されることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の当初の計画通り、GXのリズミックな発現振動が、そのプロモーター領域にあるE-box配列によって制御されていることを見出した。また、GXコンディショナルノックアウトマウスの作出を完了し、さらに全身でCreを発現するマウスと交配させることで全身ノックアウトマウスを作出し、GXのホモノックアウトマウスがアダルトにまで生育し、行動解析が可能であることがわかった。以上の点より、本研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
[抗GX抗体を用いたタンパク質実験]独自に作成した抗GX抗体を用いて、GXタンパク質のリズミックな振動をウェスタンブロッティング法やSCNの免疫組織化学により検討する。ウェスタンブロッティングは、CT4(体内時計の夜明けから4時間後)とCT16(体内時計の夜開始後4時間後)に脳を摘出し、ホモジェナイズした試料を用いる。免疫組織化学には、ウェスタンブロットと同じ時間に脳をパラホルムアルデヒドで固定後、凍結後クリオスタットで切片を作成するものと、パラフィンで固定し、ミクロトームで薄切したものの2通りを行う。この昼夜2点での検討で所見が出れば、4時間毎、一日6点でGXタンパク質の変動を見る。特に注目する領域は、生体リズムの中枢のある視交叉上核であるが、その他の脳領域に存在するGXが時計にコントロールされているなら、逆位相を示すはずなので、これの有無を詳細に検討する。また、抗体を用いた染色結果は、抗体の性質に左右されることが多いが、私は別個体のウサギから精製した抗体を保有しているので、複数の抗体を用いて検討する。吸収実験等、抗体の検定も当然注意して行うが、これには、先述の通り、GXノックアウトマウスがネガティブコントロールとして使用可能であるので、この実験は飛躍的に進むと期待できる。[組織特異的なGXノックアウトマウスの作出]作出したGXコンディショナルノックアウトマウスを、組織特異的なCreマウスと交配させ、組織特異的GXノックアウトマウスを作出する。続いて、このマウスを用いて、GXの概日時計システムにおける各組織での生理的役割を解明する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
SCN特異的に概日時計システムが破綻したマウスを作出するために、SCN特異的Cre発現マウス(SCN-Cre)を複数購入する。続いて、それらのSCN-CreとRosa26マウスを交配させ、SCNにおいてCreの活性が最も高いSCN-Creを同定する。その後、最もCre活性が強いSCN-CreとGXコンディショナルノックアウトマウスと交配させ、SCNのおいてGXがノックアウトできたかをin situ hybridization法、レーザーマイクロダイセクションとRT-PCR法によるSCN特異的mRNA定量法、抗GX抗体によるSCN免疫組織化学等により確認する。最後に、SCN-GXノックアウトマウスの概日行動リズムを測定する。以上の通り、SCN特異的Cre発現マウスの購入費用として、25万円を使用する。マウスの飼育費用として、床敷きおよび飼料として年間10万円、in situ hibridization法の染色実験の試薬(RI標識塩基・ジゴキシゲニン標識塩基・アルカリホスファターゼ標識抗ジゴキシゲニン抗体・発色基質(NBT/BCIP))として年間10万円、レーザーマイクロダイセクション(ライカ社製特製スライド)とRT-PCRを用いたmRNA定量実験(RNA精製試薬、逆転写酵素、SYBR Green)に年間25万円、抗GX抗体による染色実験の試薬(ビオチン化2次抗体、3,3'-Diaminobenzidine)として年間10万円を使用する。
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[Journal Article] Circadian regulation of intracellular G-protein signalling mediates intercellular synchrony and rhythmicity in the suprachiasmatic nucleus2011
Author(s)
Doi M, Ishida A, Miyake A, Sato M, Komatsu R, Yamazaki F, Kimura I, Tsuchiya S, Kori H, Seo K, Yamaguchi Y, Matsuo M, Fustin JM, Tanaka R, Santo Y, Yamada H, Takahashi Y, Araki M, Nakao K, Aizawa S, Kobayashi M, Obrietan K, Tsujimoto G, Okamura H
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Journal Title
Nature communications
Volume: 2
Pages: 327
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Accurate Determination of S-Phase Fraction in Proliferative Cells by Dual Fluorescence and Peroxidase Immunohistochemistry with 5-Bromo-2'-Deoxyuridine (BrdU) and Ki67 Antibodies2011
Author(s)
Tanaka R, Tainaka M, Ota T, Mizuguchi N, Kato H, Urabe S, Chen Y, Fustin JM, Yamaguchi Y, Doi M, Hamada S, Okamura H
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Journal Title
J Histochem Cytochem
Volume: 59
Pages: 791-798
DOI
Peer Reviewed
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