2011 Fiscal Year Research-status Report
アクアポリン水チャネルの新規機能とそれを応用した抗炎症薬の開発
Project/Area Number |
23590109
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
礒濱 洋一郎 熊本大学, 生命科学研究部, 准教授 (10240920)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | アクアポリン / サイトカイン / 炎症 |
Research Abstract |
アクアポリン(AQP)は細胞膜上に存在する水チャネルであり,原尿の濃縮を始め外分泌および浮腫の形成など,生体内の水分代謝と密接な関係にある.我々はこれまでの研究で,AQP類が単なる水代謝の調節因子としてだけでなく,イオンおよびCO2ガスの透過性,細胞増殖など,基本的な細胞生物学的活性の調節因子となることを見出している.本研究では,AQPを持つ細胞は持たない細胞に比べ炎症生刺激に応じたサイトカイン類の発現がより著明となるという新たに見出した現象に注目し,特に本年度は本作用の特性を明らかにすることと,その機序を解明するための基礎データを取ることを目的とした.まず,AQPによる炎症反応の亢進作用はAQP3,AQP4およびAQP5で生じたもののAQP1では認められず,アイソフォーム選択性があることが分った.これらのAQPを高発現させた細胞では1-3時間と比較的短時間で生じる著明なサイトカイン産生は亢進されたものの,その後約24時間続く持続的で弱い反応には影響を与えなかった.また,AQPを高発現するとTNF―α刺激後の転写因子NF-κBの活性化が著明に亢進し,これがサイトカインの産生亢進に関わると推定された.さらに,AQP類を高発現させただけで,MAPキナーゼの一種,ERKのリン酸化が生じ,AQPによるサイトカイン産生の亢進もERK阻害薬によって抑制された.すなわち,AQP類はERKの活性化を生じ,これによりサイトカイン産生を亢進すると考えられた.本研究の成績は,AQP類が炎症の初期反応の調節機構として機能することを示唆しており,新たな抗炎症の概念を提唱するものである.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
AQP類によるサイトカイン産生の亢進作用の機序がERKリン酸化によることを解明するに至り,当初,目標とした本作用の特性は概ね解明できたと考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
上皮細胞にAQPを発現させただけでERKリン酸化を生じるという興味深い知見を得ており,この機序を解明する予定である.戦略として,AQPの種々の変異体あるいはキメラAQPを作製し,その作用を野生型AQPと比較することでERKリン酸化に重要なAQP分子内の領域を同定でき,本領域に結合するタンパク質を推定できると考えている.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
主として物品費に充てる.具体的には,細胞の培養に用いる種々の試薬および培養器具の他に,分子生物学的な実験に用いる各種キット等の実験用試薬の購入に用いる.その他,研究成果の公表のために国内出張費を一部計上する.
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Research Products
(33 results)