2012 Fiscal Year Research-status Report
アクアポリン水チャネルの新規機能とそれを応用した抗炎症薬の開発
Project/Area Number |
23590109
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
礒濱 洋一郎 熊本大学, 大学院生命科学研究部, 准教授 (10240920)
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Keywords | アクアポリン / サイトカイン / 炎症 |
Research Abstract |
アクアポリン(AQP)は細胞膜上に存在する水チャネルであり,原尿の濃縮を始め外分泌および浮腫の形成など,生体内の水分代謝と密接な関係にある.我々はこれまでの研究で,AQP類が単なる水代謝の調節因子としてだけでなく,イオンおよび二酸化炭素ガスの透過,細胞増殖など,基本的な細胞生物学的活性の調節因子となることを見出している.本研究では,AQPを持つ細胞は持たない細胞に比べ炎症生刺激に応じたサイトカイン類の発現がより著明となるという新たに見出した現象に注目し,その特性や薬理学的応用の可能性について追求している.本年度は,抗炎症薬に対する感受性に注目して検討を進めた.AQP類の中で最も強力な炎症半応亢進作用を示したAQP5を発現させた細胞とAQP5をもたない細胞間で,抗炎症薬の作用を比較検討すると,NF-κB抑制作用をもつdexamethasoneおよびCAPEによるサイトカイン産生の抑制作用は両細胞間に違いは認められなかった.そこで,抗炎症作用をもつと考えられる種々の生薬エキスの作用を調べると,桂皮のメタノール抽出物だけが,AQP5をもつ細胞でより高感受性にサイトカイン産生を抑制し,IC50値はAQP5のない細胞の約1/10であった.桂皮に含まれるAQP5による炎症亢進の抑制物質は未だ未同定であり,今後の課題である.しかし,これらの成績は,AQP5が存在する外分泌腺,粘膜組織および肺胞上皮などに選択的に作用させ得る新たな抗炎症薬の概念を強く示唆するものである.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
AQP機能阻害を通じた新たな抗炎症薬を見出すことが目的であったが,本年度は,その有力な候補薬物として桂皮エキスを見出している.未だ,その活性成分の同定には至っていないものの,当初の目標としていたAQP5存在部位選択的なユニークな抗炎症薬の提唱に近づいている.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度に見出した桂皮エキス中の活性成分の同定が課題であり,天然薬物学的手法を駆使して本エキスを分画,活性成分の同定を行う.また,in vivoでの実効性を検証するために,気道炎症モデル動物をもちいて桂皮エキスまたはその活性成分の抗炎症効果を調べる.さらに,アクアポリンによる炎症応答亢進作用の詳細な機序の解明についても,種々の分子生物学的手法を駆使して検討する予定である.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(13 results)