2011 Fiscal Year Research-status Report
脊髄においてグルタミン酸作動性神経伝達の異常を惹起する因子の探索
Project/Area Number |
23590113
|
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
鈴木 岳之 慶應義塾大学, 薬学部, 准教授 (90187740)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
郭 伸 東京大学, 医学部附属病院, 准教授 (40160981)
佐藤 薫 国立医薬品食品衛生研究所, 薬理部, 第一室室長 (10311391)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | グルタミン酸 / 脊髄 / 情報伝達 / 神経変性疾患 / 興奮毒性 |
Research Abstract |
当該年度においては、脊髄における神経変性をもたらす要因としてのグルタミン酸作動性神経伝達の異常が生じる基礎的メカニズムに関して検討を加えた。グルタミン酸が放出されたのちに速やかに不活性化するための取り込み機構と、グルタミン酸受容体機能に関して検討を加えた。まず、グルタミン酸代謝において重要な地位を占めるグリア細胞によるグルタミン酸取り込みに関する研究を行った。基礎的研究として、グルタミン酸代謝において最も重要なアストロサイトによるグルタミン酸取り込みにおいて性差が存在することを示した(文献1)。次に、いくつかの予試験的研究において、細胞外のグルタミン酸濃度が高濃度で維持された場合、グリア細胞によるグルタミン酸取り込み能が低下することを明らかとした。さらに、神経障害は神経における炎症機構が強く関与しているという結果が得られたことから、神経炎症時におけるグルタミン酸の動態に関して検討を加えることとした。人工的に炎症状態を惹起したin vitro細胞培養系で、活性化したミクログリアからグルタミン酸が放出されることを示した。さらに、そのグルタミン酸がアストロサイトのグルタミン酸取り込み機構に抑制的に働くことを初めて示した(学会発表済み)。また、孤発性筋萎縮性側索硬化症の発症要因の一つとして、グルタミン酸受容体のサブタイプであるAMPA受容体の機能異常が存在する可能性を示した。その現認として、グルタミン酸受容体の本薬時におけるRNA編集異常による機能不全が考えられ、その機序を明らかにしつつあり、現在論文準備中である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究においては、脊髄神経細胞の機能障害をもたらす因子、特に興奮毒性を示すグルタミン酸作動性神経に関連する因子を見出し、神経機能障害が生じる機序とその対策を検討することが目的である。まず、シナプス間隙におけるグルタミン酸作動性神経伝達の不活性化に最も多く寄与すると考えられる、グリア細胞によるグルタミン酸取り込みに機構に関して検討を加えた。その結果、グリア細胞に関して性差があることが判明した。これは、今後の研究に際して大きな影響を持つものである。これは、目的達成のための今後の研究の結果の解釈に大きく寄与するものといえる。また、実際の疾患を見据えた研究として、神経における炎症が神経機能障害の原因の一つであるという観点に立ち、その機序を解明することを目指した。本年度の研究により、炎症時において、ミクログリアからグルタミン酸の過剰遊離が生じる可能性があること、また、細胞外のグルタミン酸濃度が高濃度に維持された場合、グリアのグルタミン酸トランスポート活性が低下するという知見を得た。これは、本研究における基幹的で重要な知見であり、順調な研究の進展を示すもので、これにより今後の研究に大きく寄与するものと考えている。また、受容体における機能異常の解明に関しても、RNA編集の相違による受容体機能の変化に関して、ある程度の知見がまとまり、順調に進行している(論文作成中)。以上より、本研究の進捗状況はおおむね順調といえる。
|
Strategy for Future Research Activity |
基本的に、当初の研究計画に従って研究を進める。今回4,272円の次年度使用額が出た。これは、震災の影響で研究開始時期が遅れたこと、さらに、それに伴い補助金減額の可能性があったことから全体的に研究計画を後ろへずらしたことで、消耗品の使用が若干少なくなり、細かい金額の端数が出たことによる。これに関しては、平成24年度研究費と合わせ、消耗品費として使用する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今回のの研究成果から、平成24年度以降の研究においても、当初の計画通りに研究を進める。予算執行に関しては、基本的に年度内での使用とする。計画通り、備品購入は行わず、消耗品、旅費、その他の領域で使用する。なお、国外旅費に関しては、平成24年度は行わない予定とする。
|
Research Products
(2 results)