2011 Fiscal Year Research-status Report
免疫機能調節における液胞型プロトンポンプとコリン作動系の相互作用に関する研究
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23590121
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Research Institution | Doshisha Women's College of Liberal Arts |
Principal Investigator |
藤井 健志 同志社女子大学, 薬学部, 准教授 (80255380)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高鳥 悠記 同志社女子大学, 薬学部, 助教 (90411090)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | アセチルコリン / リンパ球 / 液胞型プロトンポンプ / ニコチン受容体 / ムスカリン受容体 / コリンアセチルトランスフェラーゼ / ラジオイムノアッセイ |
Research Abstract |
免疫機能調節における役割を解明していく目的で,液胞型プロトンポンプ(V-ATPase)によるリンパ球コリン作動系活性調節メカニズムを検討した.1.ヒト白血病細胞株におけるV-ATPaseの発現の検討:Tリンパ球のモデルとして用いたヒトT細胞系株白血病細胞株MOLT-3およびCCRF-CEM細胞におけるV-ATPase cサブユニットの遺伝子発現をRT-PCR法により確認した。さらに、V-ATPase cサブユニットに特異的な抗体を用いて免疫組織学的にタンパク質が発現していることも確認した。MOLT-3およびCCRF-CEM細胞のフィトヘマアグルチニン(PHA)による活性化に伴いV-ATPase cサブユニット発現量が増大することが明らかになった。V-ATPase cサブユニット以外のサブユニットの遺伝子発現を確認した。現在、ウェスタンブロティング法によりタンパク質の発現を確認しているところである。2.siRNAによるV-ATPaseノックダウンのリンパ球系細胞における情報伝達系への影響の検討:siRNAによるV-ATPase cサブユニットのノックダウンは、MOLT-3およびCCRF-CEM細胞の生存率および増殖には影響を与えなかった。PHAにより、両細胞株におけるアセチルコリン(ACh)産生および遊離、およびACh合成酵素コリンアセチルトランスフェラーぜ(ChAT)の遺伝子発現および酵素活性が増大した。一方、siRNAによるV-ATPase cサブユニットのノックダウンにより、ChAT遺伝子発現および活性には影響することなくACh遊離が減少した。 以上のことから、Tリンパ球からのACh遊離にはV-ATPase cサブユニットが関与していること、Tリンパ球活性化によるコリン作動系の活性化には、V-ATPase cサブユニットの機能亢進も重要であることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、液胞型プロトンポンプ(V-ATPase)のうちcサブユニットが、おそらくmediatophoreを形成してTリンパ球からの遊離に重要であることを初めて明らかにすることができた。神経系ではアセチルコリン(ACh)のシナプス小胞への輸送にV-ATPaseが関与していることからも重要な知見であることが考えられ、V-ATPaseの免疫系における役割の解明に向けて今後のさらなる進展が期待できる。 前年度(平成23年度)の終了時期間際にAChの測定に用いているラジオイムノアッセイの測定感度が低下してしまったため、種々のマイトジェンあるいは表面分子(CD3, CD11aなど)に対する抗体によるTリンパ球刺激後の変化などの検討できない項目が生じてしまった。現在は、連携研究者の川島紘一郎博士(元武蔵野大学・客員教授、現北里大学客員教授)より新たに抗ACh抗体の供与を受けることができ、この問題はすでに解決し、ACh産生量への影響に関する検討を進めている。研究成果については、2報の欧文論文(1報は印刷中、ともに査読有)として公表することができた。また、国際シンポジウムにおいても最新の研究成果として発表することができた。しかしながら、種々のサイトカイン遺伝子の発現調節変化や細胞内シグナル伝達系への影響などの検討は十分に実施することができなかったので、平成24年度はこれらの解析を中心に進めたいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
アセチルコリン(ACh)は,リンパ球やマクロファージなどの免疫系細胞の機能に対してACh受容体(AChR)を介して促進的あるいは抑制的に調節していることが明らかなことから、これまで以上に研究を推進することは新たな作用メカニズムをもつ免疫調節薬の創薬や免疫疾患の治療戦略の構築には大変重要である. 研究に従事する研究者の人員の確保は研究のさらなる推進に重要であるが、今年度は、共同研究者・高鳥悠記博士(同志社女子大学)、連携研究者・川島紘一郎博士(北里大学)に加えて、3名(4,5、6年次生各1名)の卒業研究生との研究が可能になった。現在、総研究着手時間も十分に確保され、新たな結果が随時得られていることから、平成24年度はさらに研究の進捗状況が向上することが期待できる。 今年度は、薬学部内に共通機器として新たに最新の共焦点レーザー顕微鏡が設置されたため、これを利用することにより、計画立案時とは違った新たな手法を用いた研究推進も可能になった。したがって、今年度の後半には着手できるように研究計画に追加したいと考えている。現在はリンパ球のモデル系(ヒト白血病細胞株)を用いて検討を行なっているが、今後は、免疫異常マウスより調製した末梢血リンパ球やヒト末梢血単核白血球(倫理的な問題をクリアしたものを購入する)を用いて、液胞型プロトンポンプ(V-ATPase)とリンパ球コリン作動系活性の関連を検討する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究課題を遂行するために必要な最新の設備・備品などは基本的にすべて整備されている.今年度は、新たに最新型の共焦点レーザー顕微鏡が薬学部共通機器として導入され、新たな手法での研究も可能になった。したがって、平成24年度についても、研究費は試薬および消耗品の購入、成果発表(学会発表、英文校閲代などを含む)に係る経費のために使用する. 顕微鏡観察や細胞を培養する上で必要なチップ、遠沈管や培養ディッシュ・フラスコ、フローサイトメトリー解析で必要なプラスチック器具類の費用は「プラスチック製消耗器具類(消耗品費)」に計上する.実験に用いる動物代は「実験動物(消耗品費)」に計上する.実験に用いるピペット、ビーカーやフラスコなどのガラス器具類の費用は「ガラス製消耗器具類(消耗品費)」に計上する. ラジオイムノアッセイ、RT-PCR、ウェスタンブロティング解析、フローサイトメトリー解析などの各実験で必要な酵素・試薬類は「薬品類(消耗品費)」に計上する.必要に応じて倫理的な問題についてクリアしているヒト末梢血単核白血球(主としてKAC社より入手)を購入する。siRNAおよびPCRプライマーの受託合成費は「消耗品費」に入れる. 国内学会での研究成果発表の経費を「国内旅費」に計上する. 論文での研究成果発表の経費において,外国語論文校閲費を「謝金」へ,学会発表のためのポスター代を「印刷費(その他)」および論文別刷代の経費を「研究成果投稿料(その他)」へ計上する.
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