2011 Fiscal Year Research-status Report
胃粘膜傷害時における内因性硫化水素の挙動と生理的役割に関する研究
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23590122
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
関口 富美子 近畿大学, 薬学部, 准教授 (90271410)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川畑 篤史 近畿大学, 薬学部, 教授 (20177728)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 酵素 / 細胞・組織 / シグナル伝達 / 硫化水素合成酵素 / 胃粘膜傷害 |
Research Abstract |
平成23年度は初めに、数種のヒト胃がん由来細胞株細胞を用いて、硫化水素(H2S)の内因性産生に関わる酵素cystathionine gamma-lyase (CSE)およびcystathionine beta-synthase (CBS)の発現量におよぼす細胞傷害性刺激の影響を検討したが、いずれの細胞株においてもこれら酵素の明らかな発現量変化が認められなかった。そこで、次に胃がん由来細胞株の増殖に対する内因性H2Sの効果を検討するため、CSE阻害薬およびCBS阻害薬の細胞増殖に対する効果を観察したところ、いずれの阻害薬によっても増殖が抑制された。しかし、CSE阻害薬による増殖抑制効果はH2S donorのNaHSにより消失したが、CBS阻害薬の効果はNaHSの影響を受けなかった。一方、ヒト肺胞上皮癌由来A549細胞では、CSE、CBSいずれの阻害薬も増殖に影響しなかった。これらの結果より、胃がん細胞の増殖に、CSEにより内因性に産生されるH2Sが大きく関与する可能性が示唆された。また、内因性H2Sの細胞増殖促進作用はすべてのがん細胞で共通したものではないことも示された。内因性H2Sの増殖促進作用に関与するターゲット分子の検討を行った結果、部分的ではあるが、H2Sが活性化することが知られているCav3.2 T型Ca2+チャネルの関与が示唆される結果が得られた。さらに、H2Sによるsulfhydrationの関与が示唆される結果も得られているため、平成24年度以降は、sulfhydrationを受けるタンパク質を明らかにしていく予定である。 本年度は当初の計画通りに進まなかった部分もあるが、今後の検討を行うための基礎的データを得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の目的は、胃粘膜恒常性維持における内因性H2Sの役割を明らかにすることにある。平成23年度に予定していた計画(1)CSE、CBS発現量の検討、についてLPSやTNF-alphaの影響を観察し、胃がん由来細胞、マクロファージ由来細胞で明らかな発現量変化がない結果を得た。計画(2)細胞死と細胞増殖に対する内因性H2Sの関与、については興味深い結果が得られており、今後の研究の伸展が期待できる。計画(3)CSE、CBS活性測定、については計画(1)で明らかな酵素発現増加が見られなかったため実験を行っていないが、活性測定法は研究室内ですでに確立している。計画(4)胃粘膜傷害モデル動物の作製と組織におけるH2S合成酵素発現量の検討、についてはまだ実験に着手できておらず、遅れている実験計画であるが、平成24年度には積極的に動物実験を取り入れていく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度で得られた内因性H2Sの胃癌細胞増殖促進作用について、その作用に関与しているターゲット分子の検索および細胞内情報伝達系の検討を進めていく。また、平成24年度の計画に挙げていた、「CSE、CBSの強制発現系および発現抑制系細胞を用いた検討」について、siRNAによるCSEおよびCBSノックダウンの増殖に及ぼす影響を検討したい。さらに、平成23年度で実施できなかった胃粘膜傷害モデル動物を用いた実験を実施し、平成24年度に予定していた「胃粘膜傷害モデル動物の胃傷害に対するH2S合成酵素が医薬の影響」および「胃粘膜傷害モデル動物の胃平滑筋標本の収縮反応に対するH2S合成酵素阻害薬の影響」の実験を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度は、1,700,096円(利息を含む)のうち667,875円を残高としたが、この予算は平成24年3月から4月中にほぼ使用する予定である。薬学部6年制の学生が大部分の当研究室では、CBT、OSCEの終了した4年生、病院・薬局実習が終了した5年生が2~3月に研究室に戻り、3~4月期が一年のうちで一番実験が進む期間である。平成23年度より科学研究助成金の一部繰越が可能となり、実験を遂行する上で大きな助けとなった。平成24年度の配当額1,200,000円についても平成25年3月初旬(実支出額報告時)に一部予算を残し、平成25年3~4月の研究費に当てる予定である。
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Research Products
(2 results)