2012 Fiscal Year Research-status Report
胃粘膜傷害時における内因性硫化水素の挙動と生理的役割に関する研究
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23590122
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
関口 富美子 近畿大学, 薬学部, 准教授 (90271410)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川畑 篤史 近畿大学, 薬学部, 教授 (20177728)
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Keywords | 酵素 / 細胞・組織 / シグナル伝達 / 硫化水素合成酵素 / 胃粘膜傷害 |
Research Abstract |
H. 23年度において、硫化水素(H2S)産生に関わる酵素cystathionine-gamma-lyase(CSE)による内因性H2Sが胃がん由来細胞株の細胞増殖を促進的に調節していることを示唆する結果が得られた。そこでH. 24年度は、内因性H2Sの増殖促進作用に関与するターゲット分子の検討を行い、Cav3.2 T型Ca2+チャネルが部分的にこの増殖促進作用に関与することを示唆する結果が得られた。また、内因性H2Sによるアポトーシス抑制作用もその細胞増殖促進効果に一部寄与していることが示唆された。さらにH. 24年度は、マクロファージにおける内因性H2Sの機能についても検討を行い、グラム陰性菌毒素のリポ多糖(LPS)がマクロファージ様分化THP-1細胞においてCSEの発現を増加させる傾向を示すこと、また、炎症性サイトカインとして働くことが最近明らかになった核内タンパク質HMGB1(high mobility group box 1)のTNF-α刺激による遊離反応が、内因性H2Sにより抑制的に調節されていることを示す結果が得られた。これらの結果より、内因性に産生されるH2Sは、胃がん由来細胞では細胞増殖抑制的に働いていること、マクロファージを介した炎症反応においては、その炎症反応を抑制的に調節していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の目的は、胃粘膜恒常性維持における内因性H2Sの役割を明らかにすることにある。本研究課題で予定していた実験計画のうち、胃がん由来細胞およびマクロファージ由来細胞を用いた実験はほとんど実施しており、その中で「細胞死と細胞増殖に対する内因性H2Sの関与」に関しては論文としてまとめられる結果がほぼ得られていることから概ね順調に進展しているものと考えている。この内容については、H. 25年度中に論文執筆、投稿を行う予定である。一方、実験計画書にH. 24~H. 25年度の実験計画として挙げていた、様々な胃粘膜傷害モデル動物を用いた実験はH. 24年度にほとんど進めることができなかった。H. 25年度は、細胞を用いた実験に加え、動物実験も積極的に実施していきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
H. 23, 24年度に得られた、CSEを介した内因性H2Sの胃癌細胞増殖促進作用について、実際にCSEが中心的な役割を担っているかを明らかにするため、H. 25年度は、CSEのsiRNAを用いてCSE発現を抑制し、細胞増殖やHMGB1遊離に及ぼす効果を検討する予定である。一方、胃粘膜傷害モデル動物の実験に着手できていないため、H. 25年度は動物を用いた実験を積極的に行う予定である。また、H. 25年度は当該研究課題の最終年度であることから、これまでに得られた実験データをまとめ、論文投稿を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
H. 24年度は、直接経費として1,868,048円(内訳:H. 23年度の繰越667,875円+H. 24年度交付額1,200,000円+利息173円)のうち400,659円を残高としたが、この予算は平成25年3月から4月中にほぼ使用する予定である。薬学部6年制の学生が大部分を占める当研究室では、CBT、OSCEの終了した4年生、病院・薬局実習の終了した5年生が2~3月に研究室に戻り、3~4月期が一年のうちで一番実験を行う期間である。H. 23年度より科学研究助成金の一部繰越が可能となり、実験を遂行する上で大きな助けとなった。H. 25年度は当該研究課題の最終年度であることから、H. 24年度の繰越額400,659円とH. 25年度の配当額1,2000,000円および利息分はすべて試薬や実験器具などの消耗品購入に当て、H. 26年1月中をめどに残額を0円にする予定である。
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Research Products
(1 results)