2011 Fiscal Year Research-status Report
オピオイドκ受容体サブタイプと受容体ダイマーの関連の解明
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23590133
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
藤井 秀明 北里大学, 薬学部, 准教授 (30458757)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | オピオイド / κ作動薬 / ファーマコフォー |
Research Abstract |
平成23年度は、結合様式1~3に属する化合物の設計・合成を行う計画となっている。このうち、結合様式1の化合物(TRK-820, TAN-821, NS-22, KNT-63)については、文献記載の方法により合成済みである。結合様式3の化合物は、オピオイド受容体との結合に必須と考えられてきたフェノール部分が無いという特徴を有する。そこでTRK-820のフェノール環を除去した化合物を設計し、合成を達成した。その化合物の受容体結合実験を実施したところ、TRK-820自身と比較すると親和性はかなり低下するものの、κ受容体に対する親和性および選択性を示した。この化合物は、結合様式3でκ受容体と結合していると推察される。この結果より、フェノール環部分はκ受容体に対しては必須ファーマコフォーではないと考えられ、今までの常識を覆す結果であった(Chem. Pharm. Bull. in press)。さらに、フェノール環をシクロヘキセン環に変換した化合物も設計・合成し評価したところ、TRK-820に匹敵するκ受容体親和性を示し、κ受容体選択性も向上した。κ受容体に対する親和性の向上は、シクロヘキセン環により、TRK-820の活性型立体配座と同様の立体配座を取りやすくなったためと考えている(論文投稿中)。 非標識化合物による活性評価システム(CellKey SystemTM)を用いた検討も開始した。オピオイド以外のG-タンパク共役型受容体への適用に関する報告例はあるが、オピオイドに関しては前例がなかった。そこで標準薬を用いての検討を開始し、作動活性の応答を感知できることを確認した。今後、既存の方法(GTPγS結合試験、cAMP評価系など)との相関を確認する必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初より結合様式2の化合物は市販品(U-50,488HやU-69,593)を用いる計画であったため、予定通り、結合様式1~3の化合物をそろえることができた。結合様式3の化合物としてはブレマゾシンなどのベンゾモルファン類もある。これら化合物については未合成ではあるが、「9.研究実績の概要」に記載したように、TRK-820から設計した結合様式3の化合物は合成済みである。また、シクロヘキセン誘導体(フェノール環に相当する嵩高さはあるが、フェノール環に由来するπ-π相互作用およびフェノール性水酸基との水素結合は期待できない)がTRK-820に匹敵するκ受容体親和性を示し、κ受容体選択性も向上したという結果は、結合様式3の存在を支持していると考えられる。なお、今後ベンゾモルファン類が必要となった場合には、文献記載の方法による合成または市販化合物を購入することにより対応可能である。結合様式1~3の化合物はそろえることができたが、作動薬か拮抗薬かの評価が遅れ気味である。CellKey SystemTMを用いた基礎検討を早期に終え、種々の化合物評価を実施できる体制にする必要がある。また、今ひとつの評価系として、GTPγS結合試験についても新たに立ち上げ、化合物評価に用いる目処が付いた。
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Strategy for Future Research Activity |
結合様式3の化合物はオピオイド受容体に結合する際に必須と考えられてきたフェノール環(いわゆる3点相互作用のうちの2つに関与している)を持たないため、この化合物がオピオイド受容体、特にκ受容体に結合するかどうかは、本研究を推進する上で、ひとつの大きな判断点であった。もしκ受容体にほとんど結合しないという結果が得られた場合には、本研究の基本的な考え方である「κ作動薬の結合様式は4種ある」が否定された事になるからである。しかし、結合様式3の化合物の一つであるシクロヘキセン誘導体が高いκ親和性、κ選択性(主に、μ受容体親和性の低下に起因する)を示した結果は、フェノール環(π-π相互作用と水素結合)は、μ受容体への結合には重要であるがκ受容体への結合には必須ではないことを示唆しており、本研究の基本的な考え方を支持した。よって、引き続き結合様式4の化合物(いわゆる3点相互作用の一つに関与する塩基性窒素がない)の合成、評価に着手する。化合物評価については、受容体結合実験は継続すると共に、作動活性か拮抗活性化の評価については、CellKey SystemTMを用いた評価系とGTPγS結合試験を適宜使用していく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
結合様式4の化合物合成を中心に行う。具体的には、塩基性窒素をアシル化する、またはペルフルオロアルキル基を導入することにより、窒素の塩基性を低下または消失させた化合物を合成する。また、結合様式4の化合物の一つであるサルビノリンは合成報告もあるが、全合成となるため、市販品の購入での対応も検討する。化合物評価(受容体結合実験、CellKey SystemTMを用いた評価、GTPγS結合試験)に関しては、継続して実施する。
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