2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23590137
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Research Institution | Kobe Gakuin University |
Principal Investigator |
浜田 芳男 神戸学院大学, 薬学部, 研究員 (70424968)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 阻害剤 米国 |
Research Abstract |
日本は急速に高齢化社会に移行しており、アルツハイマー病患者の増加は急を要する社会問題となっているが、未だ根本的治療薬は存在しない。本研究はアルツハイマー病克服を目指し、発症の原因物質であると考えられているアミロイドβペプチド(Aβ)の産生に関与するβ-セクレターゼ(BACE1)の阻害剤およびAβ凝集阻害剤を開発することを目的とする。そのため in-silico 創薬における新しい方法論の導入から、新規骨格を有する阻害剤の探索、アルツハイマー病の発症メカニズムの解明に有用なケミカルバイオロジー研究用ツールの提供、およびこれらを用いた病理解析研究まで、統合的かつ先駆的研究を行ない、アルツハイマー病の根本的治療薬の候補化合物を複数創製することにある。(1) 低分子化BACE1阻害剤の創薬研究 Arg235は阻害剤と相互作用するアミノ酸の中で、唯一フラップの外にあってBACE1と阻害活性発現に重要な役割を持っていると考えられ、Arg235側鎖との相互作用に着目して最適化を進め、新規な非ペプチド型阻害剤を設計・合成した。また、計算化学による阻害メカニズム研究から、阻害剤のP2位に着目することにより、阻害活性を有する低分子ペプチドを設計し、阻害活性を有することを確認した。(2) Aβの凝集阻害剤 報告されているAβ凝集阻害剤はそれぞれAβの特定の部位を認識して結合するが、Aβにはモノマーから凝集体までの会合状態によって様々な分子種が存在し、これらの凝集阻害剤は神経毒性のあるとされているAβオリゴマーを認識しているわけではない。そのため、薬効の評価や薬物としての有効性に大きな問題点がある。本研究代表者はNMRによるAβオリゴマーの立体構造を基にして、Aβオリゴマーをを認識する凝集阻害剤を設計し、凝集阻害活性を評価した。本研究の成果はアルツハイマー病治療薬開発に向けて大きな前進であると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当該年度は本研究課題の最初の年度であるため、阻害剤のin-silico による分子設計に重点を置いた。(1) 低分子化BACE1阻害剤の創薬研究 すでに見出している低分子型BACE1阻害剤KMI-1027やKMI-1036をリードとして、BACE1のS2サイト、特にBACE1のArg235側鎖との相互作用に着目して最適化を進めた。Arg235は阻害剤と相互作用するアミノ酸の中で、唯一フラップの外にあってBACE1と阻害剤もしくは基質との結合に重要な役割を持っていると考えられ、本研究代表はArg235のグアニジル基のπ軌道とスタッキングや σ-π 相互作用のようなごく弱い相互作用をすることが阻害活性発現に必須であることを見出した。これらの知見を基にして、いくつかの非ペプチド型BACE1阻害剤を設計・合成した。また阻害活性を有する低分子ペプチドも設計・合成した。これらのことから当初の計画以上に進展していると思われる。(2) Aβの凝集阻害剤 すでに見出しているペプチド型凝集阻害剤の構造活性相関研究を行なった。最終的にはペプチド結合のない、もしくは減らした阻害剤の創製が目的だが、本研究代表者が設計した阻害剤はまだAβ凝集阻害活性が低い。どの構造が凝集阻害活性に重要なのかを見極める必要があり、本年度ではペプチド型凝集阻害剤に着目して最適化研究を行ない、いくつかの凝集阻害剤を設計した。計画通りの進捗状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
(1) 低分子化BACE1阻害剤の創薬研究 前年度からの阻害剤の最適化研究を引き続き行なうとともに、新規骨格を有する阻害剤を探索する。本研究代表者は阻害剤のP2部分とBACE1のArg235グアニジル平面がスタッキングや σ-π 相互作用のようなごく弱い量子的相互作用をすることが阻害活性発現に決定的に重要であり、しかも阻害剤の分子サイズによりArg235側鎖の位置は動いていることを示した。ところが分子を剛体として処理する一般的な分子設計ソフトウェアではこのような量子的相互作用は正確に評価されない。これらのことは、特定の結晶構造に基づいたin-silico screeningにおいては深刻な問題を提起する。他の研究グループではドッキング計算において、初期に報告された1FKN(PDB ID)のような立体座標を用いてスクリーニングを行なっており、多くの有望なリード化合物を見逃している可能性がある。そこで本研究代表者はin-silico創薬における新規な方法論を導入する。すなわちin-silico screeningの後に、得られた化合物のP2部分の分子軌道計算を行ない、P2部分を最適化後さらにドッキング計算を行なうことでBACE1の動的変化に対応した設計を行ない、多様な骨格を有するBACE1阻害剤を設計する。計算で得られた化合物の中で、合成可能なものに関しては合成を、購入可能なものに関しては購入し、阻害活性を評価する。(2) Aβの凝集阻害剤 平成23年度に引き続き、すでに得られているリード化合物を基に構造最適化研究を行なう。また、並行してペプチド結合を少なくした、もしくは削除した新規な骨格を有する阻害剤を設計する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
低分子化BACE1阻害剤およびAβの凝集阻害剤も、従来の構造最適化研究に一区切りを付け、次年度から医薬としてより実用的な阻害剤を探索・設計するための新規骨格を有する化合物を探索・設計する。新規化合物を合成するための多様な合成用ビルディングブロック、およびガラス器具、装置、試薬の購入を考えている。
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Research Products
(9 results)