2011 Fiscal Year Research-status Report
生理活性天然物をシード化合物とした新規抗生物質の創薬研究
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23590139
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Research Institution | Osaka Ohtani University |
Principal Investigator |
広川 美視 大阪大谷大学, 薬学部, 准教授 (40454582)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 抗生物質 / リューロムチリン誘導体 / 多剤耐性菌 |
Research Abstract |
リューロムチリンは、穏やかな抗菌活性と抗マイコプラズマ活性を有する天然の抗生物質であり、非常に脂溶性の高い化合物である。このリューロムチリンにヘテロ環アミンを置換した核酸塩基アナログ(プリンカルボン酸)を導入することにより、高い抗菌活性を持ちながらリューロムチリン誘導体において克服が難しいとされている水に対する良好な溶解性を持たせることに成功している。今年度は、プリンカルボン酸とムチリン環をつなぐスペーサー部位を変換し抗菌活性及び物性の動向と、より高活性な化合物の探索合成を主目的とした。抗菌活性を評価する化合物群の合成は、以下のように行った。ピペリジンチオエーテルをピペラジン環へ変換した化合物および、ムチリン環14位のエステル側鎖を4-ピペリジニルカルボニルカルバメート(CONHCOO)や4-ピペリジニルカルバメート(NHCOO)に変換した化合物の合成を行い、各スペーサー部位変換化合物に対しプリンカルボン酸を導入した。プリンカルボン酸は、3-[2-アミノ-6-[ピペラジン-1-イル] -9H-プリン-9-イル]プロピオン酸、3-[6-[3-アミノピロリジン-1-イル]-9H-プリン-9-イル]プロピオン酸を中心に、プリン環6位ヘテロ環を3-メチルアミノピロリジン、3-ジメチルアミノピロリジン、3-アミノメチルピロリジン、3-メチルアミノメチルピロリジン、3-ジメチルアミノメチルピロリジン、4-アミノピペリジンに変換した化合物を合成した。新規合成化合物に対して、標準的な黄色ブドウ球菌を指標にした抗菌活性を調べた。本研究は、多剤耐性菌に有効かつ交叉耐性がなく、既存の抗菌剤とは異なる新規抗菌剤の創製を目標としているため、感受性菌に対し高い抗菌活性を持つ有望化合物においては、外部機関に多剤耐性菌(S. aureus KMP-9)に対する抗菌活性の測定を依頼した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
プリンカルボン酸とムチリン環をつなぐスペーサー部位の変換における抗菌活性と物性の動向と、より高活性な化合物の探索合成を主目的に、ピペリジンチオエーテル部位をピペラジン環へ変換した化合物および、ムチリン環14位のエステル部位を4-ピペリジニルカルボニルカルバメート(CONHCOO)および4-ピペリジニルカルバメート(NHCOO)に変換した化合物の合成を行い、各スペーサー変換化合物に対しプリンカルボン酸を導入し、合成化合物の黄色ブドウ球菌感受性菌におけるin vitro抗菌活性評価を行った。目的とする化合物群の合成は概ね順調であり、最終生成物を塩酸塩の固体として得ることができた。4-ピペリジニルカルボニルカルバメート誘導体および4-ピペリジニルカルバメート誘導体は、in vitro抗菌活性評価の結果、ピペリジンチオエーテル体に比較し5~20倍抗菌活性が減弱し、唯一、ピペラジン誘導体のみ同等の抗菌活性を保持していた。活性面では、大きな進歩は得られなかったが、水に対する溶解性という観点からは、ピペラジン誘導体が、ピペリジンチオエーテル体より良好な水溶性を示しており、水溶性の更なる向上という目的は達成している。以下、問題点として、プリンカルボン酸誘導体は、水溶性が非常に高い上に、高極性のため純度の高い化合物を得ることが難しいこと、プリンカルボン酸を導入する前の4-ピペリジニルカルボニルカルバメート誘導体および4-ピペリジニルカルバメート誘導体の合成収率が低いため、多様な最終生成物を合成するためには、大量の出発原料からの誘導体合成が必要となることなど、がある。
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Strategy for Future Research Activity |
ピペラジン誘導体では、黄色ブドウ球菌感受性菌に対するin vitro抗菌活性が保持しており、また、水溶性が向上しているため、更なる構造変換を行うものとする。構造変換として、(1)プリンカルボン酸上のヘテロ環の変換、(2)現在、カルボン酸とピペラジン環のアミノ基との間の結合はアミド結合であるが、他の結合様式、例えば、カルバメート体、ウレア体への変換を考えている。但し、結合形式を変えることによりカルボニル基とプリン塩基との結合距離が延長する可能性があるが、炭素鎖2個分の距離が最適と考えているため、結合距離の延長はできるだけ避けたい。しかし、現行法であるプリン体とアルキルハライドとの反応、即ち、ヘテロ原子が置換した炭素1個の試薬を用いた反応では、容易かつ収率よく合成することが困難である。種々合成法の検討が必要である。ムチリン環14位のエステル部位を4-ピペリジニルカルボニルカルバメート(CONHCOO)および4-ピペリジニルカルバメート(NHCOO)に変換した化合物は、黄色ブドウ球菌感受性菌におけるin vitro抗菌活性評価結果から、これ以上の探索合成は行わないこととする。但し、プリンカルボン酸との結合形式を変化させた化合物において抗菌活性の大きな向上が認められた時には、対応する誘導体の合成を検討する予定である。新規合成化合物は、標準的な黄色ブドウ球菌感受性菌を指標にした抗菌活性評価を行い、有望化合物においては、外部機関による多剤耐性菌(S. aureus KMP-9)に対する抗菌活性の測定およびin vivo抗菌活性の測定を依頼する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は、23年度同様、有機合成化学による新規化合物の創製研究および一般的な感受性菌に対するin vitro抗菌活性測定試験、および有望化合物においては多剤耐性菌に対するin vitro抗菌活性測定評価とin vivo抗菌活性の評価を外部機関に依頼する予定である。 参加学会は、日本薬学会、メディシナルケミストリーシンポジウム、化学療法学会を予定している。 また、今年度は、23~24年度に合成した化合物の特許申請を計画している。内訳は、特許申請資料の作成時間を考え、新規化合物合成に使用する試薬等の費用35万円、学会参加費10万円、外部依頼費(謝金)50万円、特許申請費5万円である。
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