2011 Fiscal Year Research-status Report
連続的環化芳香族化反応を用いた多環縮環型フランの合成による抗腫瘍活性化合物の創生
Project/Area Number |
23590143
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Research Institution | Matsuyama University |
Principal Investigator |
波多江 典之 松山大学, 薬学部, 准教授 (30449912)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
日比野 俐 福山大学, 薬学部, 教授 (60112885)
町支 臣成 福山大学, 薬学部, 教授 (10248297)
石倉 稔 北海道医療大学, 薬学部, 教授 (10146011)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 多環縮環型複素環 / 抗腫瘍活性 / イノシトール / Pictet-Spengler反応 |
Research Abstract |
生物活性天然物の多くはその母核中に多環縮環型の複素環を有しており,これら基本骨格の効率的合成法の開発は,新規生物活性物質の創製において,不可欠な課題といえる.なかでも多環縮環型のフラン環化合物や含窒素環化合物は,抗腫瘍活性をはじめとする種々の生物活性天然物が知られているが,その簡便合成法は現在開発段階であるといえる.本研究において,多環縮環型複素環の簡便合成法の開発とともに,開発した反応を応用して化合物ライブラリーの構築しさらにその機能評価を実施しており,特に今期においては,抗腫瘍活性の評価系の確立,および含窒素複素環化合物の合成に成功した.抗腫瘍活性の評価系としては,細胞内ミトコンドリアの電子伝達鎖の活性を指標としたMTT活性の測定に加え,浮遊の癌細胞であるHL-60細胞に対してはWST-1法の測定条件の最適化を実施した.これらの実験系の堅牢性を確認する意味において,多環縮環型複素環以外の化合物よりなるライブラリーにおける抗腫瘍活性を測定したところ,あらたな抗腫瘍活性化合物群として1,3-ジ-O-シリル化-myo-イノシトール類が顕著な抗腫瘍活性を有することを見いだすことに成功した.さらにこれら化合物は癌細胞におけるcaspase-3の活性化が認められたことより,アポトーシスを誘導することで抗腫瘍活性を惹起していることが示唆された.またPictet-Spengler反応を応用した,多環縮環型含窒素インドール化合物の簡便合成法の開発に成功した.塩基性条件下,N(b)ベンジルセロトニンとαβ不飽和アルデヒドとのPictet-Spengler反応を利用して,ピラノ[3,2-e]インドールの合成に成功した.本反応によって得られた化合物の一部は強い抗腫瘍活性を有することが明らかとなったことより,生物活性物質合成のための有用な反応の開発に成功している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の目標は,多環縮環型複素環化合物の簡便合成法の開発と,開発した反応を用いた化合物ライブラリーの構築による生物活性物質の探索の二つである.これらの目標を実現するためには,新規反応開発と生物活性評価系の構築の両者を平行して実施していかなければならない.当該年度においては,新規反応開発,および抗腫瘍活性評価系の両者に関して実践し,一定の成果を得ることに成功した.新規反応開発においては,Pictet-Spengler反応を応用した,多環縮環型含窒素インドール化合物の簡便合成法の開発に成功した.塩基性条件下,N(b)ベンジルセロトニンとαβ不飽和アルデヒドとのPictet-Spengler反応を利用して,ピラノ[3,2-e]インドールの合成に成功した.また多環縮環型含窒素機能分子であるポルフィリンとフラーレンとの複合体合成にも成功しており,種々の反応を開発してきている.一方生物活性評価系の構築に関しては,MTT法による接着性癌に対する抗腫瘍活性の測定のみではなく,浮遊性癌に対するWST-1法を用いた評価系も確立されてきており,これら評価系の構築により多検体に対しても対応可能な1次スクリーニング系の構築が完了したといえる。本評価系の堅牢性は,研究班が所有するランダム化された化合物ライブラリーに対するスクリーニングも可能としたことより実証された.さらに本評価系を適合することにより,あらたな抗腫瘍活性化合物群として1,3-ジ-O-シリル化-myo-イノシトール類での抗腫瘍活性を見いだすことに成功した.またcaspase-3の活性化の評価系の構築にも成功しており、これを指標としたアポトーシス誘導の評価系も確立しており,新規イノシトール誘導体における癌細胞のアポトーシス誘導の解明に成功してきている.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の骨子となる多環縮環型複素環化合物のうち,特に多環縮環型フラン環化合物と多環縮環型含窒素化合物の簡便合成法,およびそれら反応を用いた天然物誘導体などの生物活性物質の合成について検討する.生物活性天然物の多くはその母核中に多環縮環型の複素環を有しており,なかでも多環縮環型のフラン環化合物や含窒素環化合物は,抗腫瘍活性をはじめとする種々の生物活性天然物が知られているため,これら基本骨格の効率的合成法の開発を今後も推進していく.これらにより生物活性天然物などの化学合成が可能となれば,大量供給および誘導体合成が可能となるため,誘導体を含むフォーカスド化合物ライブラリーの構築を推進することで,新規生物活性物質の創製を図る.実際には、連続的環化芳香族化反応利用した多環縮環型フラン環化合物の合成と、マイクロ・ウェーブ照射反応,電子環状反応,金属カップリング法を用いた多環縮環型含窒素化合物群の合成法の開発を実施する.いずれの手法からも,現在までに合成が困難であった化合物群の簡便合成法を開発するとともに,これらの反応を利用して多環縮環型複素環化合物ライブラリーの構築を図る.反応開発と化合物ライブラリーの構築とともに,生物活性評価系の構築を実施する.得られる化合物ライブラリーからは,生物活性として抗腫瘍活性,およびセロトニン受容体活性が過去の報告より期待される.抗腫瘍活性物質の創製は現在死因の一位である癌の治療薬として,またセロトニン受容体制御分子の創製は2010年から推進されている統合失調症の治療薬としての展開が期待される.抗腫瘍活性の評価に関しては、作用機序依存的なアポトーシス解析システムの構築を図る.またセロトニン受容体の活性評価系に関しては,細胞内カルシウムの変化を指標としてGqタンパク質の活性化を評価するシステムの構築を図る.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当該年度は,多環縮環型複素環合成法の開発および化合物ライブラリーの構築と,生物活性評価系の構築を中心に検討する.多環縮環型複素環化合物としては,フラン環含有化合物と含窒素環含有化合物に焦点をあてその合成法の開発を実施する.多環縮環型フラン環化合物の簡便合成法としては,ペリ環状反応を応用した連続的環化芳香族化反応の解析を中心に実施する.一般にフラン環はHOMOのエネルギーレベルが高いため,芳香族としての安定化よりジエンとして反応する性質を有する.現在までの多環縮環型フラン環化合物の合成法のほとんどは,フラン環を骨格構築の初期段階から挿入しているため,多段階反応の後に自身の分解が著しい.これに対して連続的環化芳香族化反応では,反応の最終段階でフラン環を発生可能なため,極めて安定に目的とする多環縮環型フラン環化合物を合成可能である.本反応の反応条件の確立と,得られるフラン環化合物ライブラリーの構築を主として当該年度は実施し,かかる研究費を使用する予定である.また多環縮環型含窒素複素環類の合成としては,抗腫瘍活性天然物であるカルトレキシン類の合成とその誘導体の合成を実施することでカルトレキシン類縁体ライブラリーの構築を実施する.これら新規反応の開発と化合物ライブラリーの構築とともに,生物活性評価系の構築を実施する.抗腫瘍活性評価系としては,多検体の評価が可能なphosflow法を応用した抗腫瘍活性評価系の構築について検討する.検出システムとしてフローサイトメトリー法を利用することで,抗腫瘍活性発現の詳細について短時間で解析可能なシステムの構築を検討する.また統合失調症の原因遺伝子とされるセロトニン受容体に着目し,セロトニン受容体を介したGqタンパク質の活性化を,細胞内カルシウムの変化を指標として評価するシステムの構築を図る.当該年度は,これらを中心に研究費の使用を予定する.
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[Journal Article] A novel synthesis of 3,4,5,6-tetrahydro-7-hydroxy-1H-azepino[5,4,3-cd]indole derivatives from serotonin2011
Author(s)
Yamada, Koji; Teranishi, Sakiko; Miyashita, Ayako; Ishikura, Minoru; Somei, Masanori
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Journal Title
Heterocycles
Volume: 83
Pages: 2547-2562
DOI
Peer Reviewed
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