2012 Fiscal Year Research-status Report
連続的環化芳香族化反応を用いた多環縮環型フランの合成による抗腫瘍活性化合物の創生
Project/Area Number |
23590143
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Research Institution | Health Sciences University of Hokkaido |
Principal Investigator |
波多江 典之 北海道医療大学, 薬学部, 准教授 (30449912)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
日比野 俐 福山大学, 薬学部, 教授 (60112885)
町支 臣成 福山大学, 薬学部, 教授 (10248297)
石倉 稔 北海道医療大学, 薬学部, 教授 (10146011)
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Keywords | 多環縮環型複素環 / 抗腫瘍活性 / calothrixin |
Research Abstract |
生物活性天然物の多くはその母核中に多環縮環型の複素環を有しており,これら基本骨格の効率的合成法の開発は,新規生物活性物質の創製において,不可欠な課題といえる.なかでも多環縮環型のフラン環化合物や含窒素環化合物は,抗腫瘍活性をはじめとする種々の生物活性天然物が知られているが,その簡便合成法は現在開発段階であるといえる.本研究課題において,多環縮環型複素環の簡便合成法の開発とともに,開発した反応を応用して化合物ライブラリーの構築しさらにその機能評価を実施しており,特に今期においては次年度に引き続き,抗腫瘍活性の評価系の確立,および含窒素複素環化合物の合成に成功した.抗腫瘍活性の評価系として,前年度までの検討により,細胞内ミトコンドリアの電子伝達鎖の活性を指標としたMTT法およびWST-1法の測定条件の最適化を成功している.しかしこれらの方法は,DNAインターカレーターに対しては不充分であることが当該年度の検討で明らかとなり,インターカレーターに対する両評価法の最適化を実施した.インターカレーターとしてはcalothrixin類を用いたところ,2回の分裂に相当する時間の薬剤処理によってのみ,充分な抗腫瘍活性を発揮することが明らかとなった.これら評価系の堅牢性を確認する意味において,類似の作用を有するbenzo[c]phenanthridine類についても抗腫瘍活性を測定したところ,前年度までで確立した方法では不充分であった結果が改善され,充分な抗腫瘍活性を認めることに成功した.これら多環縮環型含窒素天然物であるcalothrixin類, benzo[c]phenanthridine類,yuehchukeneやisocryptolepineの全合成法の開発に成功しており,これら合成法を駆使してそれらの誘導体よりなるライブラリーの構築に成功している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究課題の目標は,多環縮環型複素環化合物の簡便合成法の開発と,開発した反応を用いた化合物ライブラリーの構築による生物活性物質の探索の二つである.これらの目標を実現するためには,新規反応開発と生物活性評価系の構築の両者を平行して実施していかなければならない.当該年度においては,新規反応開発として,多環縮環型含窒素天然物の全合成法の開発,ならびにそれらの誘導体合成を行うことで,特に含窒素複素環化合物ライブラリーの充実に成功した.また前年度に成功していた抗腫瘍活性評価系が、化合物の作用機序に依存して不充分であることが明らかとなったため,さらに詳細なる最適化を実施し,一定の成果を得ることに成功した.新規反応開発においては,calothrixin類の全合成,yuehchukeneの全合成,およびisocryptolepineの全合成に成功した.またcalothrixin類の全合成においては,生合成模倣型合成法を展開させた誘導体合成,および全3工程による簡便合成法の開発に成功しており,これらの方法を駆使して、構造的多様性を有するcalothrixin誘導体の化合物ライブラリーの構築に成功してきている.Calothrixin類およびbenzo[c]phenanthridine類は,ともに転写・複製にの際にDNA複合体を形成することでその機能を発揮することが知られている.これら化合物群による抗腫瘍活性の測定は,若干の最適化が必要であり,最適化も含めて,これら化合物群による抗腫瘍活性の評価を達成した.当該年度初頭の予定では,多環縮環型フラン環化合物群の合成法を完成させることを予定していたが,当該課題の担当者の所属変更のため,若干の遅れが生じている.合成法の構築は既に終了し,化合物ライブラリーの構築途中である.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の骨子となる多環縮環型複素環化合物のうち,特に多環縮環型フラン環化合物と多環縮環型含窒素化合物の簡便合成法,およびそれら反応を用いた天然物合成とその誘導体などの生物活性物質の合成について検討する.次年度が最終年度となるため,全体の中で進捗が遅れている,多環縮環型フラン環化合物の合成法の完成を優先課題として,研究を推進する.生物活性天然物の多くはその母核中に多環縮環型の複素環を有しており,なかでも多環縮環型のフラン環化合物や含窒素環化合物は,抗腫瘍活性をはじめとする種々の生物活性天然物が知られている.これらの誘導体を含むフォーカスド化合物ライブラリーの構築を推進することで,新規生物活性物質の創製を図る.実際には、連続的環化芳香族化反応利用した多環縮環型フラン環化合物の合成と、マイクロ・ウェーブ照射反応,電子環状反応,金属カップリング法を用いた多環縮環型含窒素化合物群の合成法の開発を実施する.いずれの手法からも,現在までに合成が困難であった化合物群の簡便合成法を開発するとともに,これらの反応を利用して多環縮環型複素環化合物ライブラリーの構築を図る.反応開発と化合物ライブラリーの構築とともに,生物活性評価系の構築を実施する.多様性をもった化合物ライブラリーを構築することで,抗腫瘍活性の評価系も多様化させる必要がある.現在,即時型評価系と遅発型評価系の2種類の構築に成功しており,両評価系を使い分けることで,現在所有する化合物ライブラリーより,抗腫瘍活性物質の創製を志向する.またセロトニン受容体評価系に関しては,受容体安定発現細胞株の樹立に成功したため,これら細胞を用いた評価系の構築を志向するとともに,現在所有の化合物ライブラリーにおける活性評価を推進する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度が最終年度となるため,初期計画のうち現在も進行中である,多環縮環型複素環合成法の開発および化合物ライブラリーの構築と,生物活性評価系の構築を中心に検討する.多環縮環型複素環化合物としては,特にフラン環含有化合物と含窒素環含有化合物に焦点をあてその合成法の開発を実施する.これら化合物群の合成にあたり,化学合成用消耗品を中心として研究費を執行する予定である.また合成された化合物ライブラリーを評価するための評価系の充実も,本件研究課題の完遂において重要な課題である.現在所有の抗腫瘍活性評価系に加え,抗腫瘍活性発現機序の解明するための評価系の構築も併せて実施する.この手法として,フローサイトメーターを利用した評価系の構築を主に実施するため,蛍光抗体等のフローサイトメーター用の消耗品を購入予定である.また当該年度が最終年度であり,前年度までの課題遂行により得られた成果について,研究論文,学会発表等を通じて積極的に情報公開を広く図るため,次年度においてはこれらにかかる論文投稿料,学会発表費,および旅費等の費用も併せて計上する予定である.
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[Journal Article] Synthesis and Antimalarial Activity of Calothrixins A and B, and their N-Alkyl Derivatives.2012
Author(s)
Matsumoto, Kohji; Choshi, Tominari; Hourai, Mai; Zamami, Yoshito; Sasaki, Kenji; Abe, Takumi; Ishikura, Minoru; Hatae, Noriyuki; Iwamura, Tatsunori; Nobuhiro, Junko; Hibino, Satoshi
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Journal Title
Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters
Volume: 22
Pages: 4762-4764
DOI
Peer Reviewed
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