2012 Fiscal Year Research-status Report
反応動態解析に基づくカタラーゼ阻害剤を併用したヒドロキシルラジカル殺菌技術の確立
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23590144
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
庭野 吉己 東北大学, 歯学研究科(研究院), 教授 (40375184)
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Keywords | カタラーゼ阻害 / ポリフェノール光酸化 / 過酸化水素 / ヒドロキシルラジカル |
Research Abstract |
カタラーゼ阻害作用を電子スピン共鳴・オキシメトリー法で確認したオウゴンおよびリョクチャの2種の生薬のもう一つの特徴として、これら生薬に含有されるポリフェノールの存在がある。ポリフェノールのフェノール性水酸基が光酸化されて放出されるプロトンと電子により溶存酸素が還元されて過酸化水素が生成され、次にこの過酸化水素が光分解されてヒドロキシルラジカルが生成することが想定され、これら活性酸素による抗菌活性の増強も期待されたので、この点を確認した。その結果、これら生薬に光を照射すると過酸化水素とヒドロキシルラジカルの生成が認められた。そこでフェノール性水酸基を分子内に多数保有するプロアントシアニジンを同様に処理した結果、オウゴンおよびリョクチャよりも過酸化水素光分解殺菌法の抗菌効果を強く増強することを見出した。 プロアントシアニジンにはカタラーゼ阻害作用は認められなかったことから、オウゴンおよびリョクチャによる過酸化水素光分解法の殺菌活性の増強は、カタラーゼ阻害よりもこれら生薬に含まれるポリフェノールの光酸化を介した活性酸素の寄与が大きい可能性があることも示唆された。 オウゴン、リョクチャおよびプロアントシアニジンの過酸化水素光分解殺菌法の増強効果については、細菌細胞へ吸着して局所的に活性酸素を産生して細菌細胞へダメージを与えることが想定され、その際にカタラーゼを阻害するとより効果的である可能性はあるが、現時点ではその寄与がどの程度か不明である。 プロアントシアニジンと過酸化水素光分解殺菌法の相乗効果については、論文投稿し、受理された。 薬剤耐性菌に対する殺菌効果を検証する目的で、各種抗生物質に対する耐性誘導試験を実施し、保存株ではあるがStaphylococcus aureus とEnterococcus faecalis の2菌種で複数の抗生物質に対する耐性化に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これら生薬中に含まれる活性成分は、細菌細胞におそらくは吸着し、カタラーゼ阻害作用だけでなくポリフェノールの光酸化とカップリングした溶存酸素の還元により生成する過酸化水素およびヒドロキシルラジカルが細菌細胞に局所的に酸化的障害を与え、これにより過酸化水素光分解殺菌法がさらに増強されるという新たな可能性を見出した点は評価したい。さらに微量な酸化ストレスは、線維芽細胞の増殖を介して創傷治癒促進効果を発揮するという報告があり、細菌感染防止と創傷治癒を合わせもつ技術の応用展開も考えられるので、今後の検討課題としたい。 耐性菌に対する活性を評価する目的で、7種の抗菌剤(アモキシシリン、塩酸セフェピム、エリスロマイシン、オフロキサンシン、塩酸クリンダマイシン、塩酸シプロキサシンおよび塩酸ミノサイクリン)を用い、Staphylococcus aureus とEnterococcus faecalis の2菌種に対する耐性誘導を検証した実験では、S. aureus は5回以内の暴露で7種すべての抗菌剤に対して4 MIC (最小発育阻止濃度)以上に薬剤感受性は低下し、 E. faecalis は10回以内に4種の抗菌剤に対して4 MIC以上、3種の抗菌剤に対して2 MIC以上に薬剤感受性は低下したことから、耐性誘導系は確立できたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
生薬中のポリフェノールが光酸化されて、過酸化水素光分解殺菌法の効果を増強するという新たな知見が得られたため、方向を若干修正し、これら生薬にプロアントシアニジンのようなポリフェノール類も評価の対象に加え、過酸化水素光分解殺菌法の増強メカニズムを解明していく。 局所での過酸化水素やヒドロキシルラジカルによる酸化ストレスは、軽度であるならば線維芽細胞の増殖を介して創傷治癒促進効果を発揮するという報告があるので、これら生薬による線維芽細胞の増殖や細胞外基質の産生に対する影響なども検討していく。 抗生物質に対する耐性誘導試験系を確立できたので、7種の抗菌剤すべてに順番に暴露することにより多剤耐性菌化を誘導し、過酸化水素光分解殺菌法と生薬、プロアントシアニジンのようなポリフェノール類との相乗効果を検証する。 昨年作製したラット創傷感染モデルを用いて、これら生薬とプロアントシアニジンのようなポリフェノール類との効果比較も実施したい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究成果を積極的に学会発表するととも論文化を進めるため、旅費および論文投稿費用が多く発生する。 研究に関しては、菌の培養関係、線維芽細胞とその培養関係、および動物代などの物品費が中心となる。
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Research Products
(8 results)