2011 Fiscal Year Research-status Report
新たな天然薬用資源としての高等植物の潜在的二次代謝能の顕在化とその応用
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23590146
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
黒崎 文也 富山大学, 医学薬学研究部(薬学), 教授 (70143865)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
加藤 康夫 富山県立大学, 工学部, 教授 (20254237)
荻田 信二郎 富山県立大学, 工学部, 准教授 (50363875)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | 植物 / バイオテクノロジー / 物質生産 / 遺伝子 / 有用資源 / 情報伝達機構 / 天然物 / 二次代謝 |
Research Abstract |
平成23年度の研究実績としては、Aquilaria microcarpaの培養細胞を材料として、まず、セスキテルペン生合成において共通の前駆体を供給するfarnesyl diphosphate synthaseをコードした遺伝子(Am-FaPS1)の転写活性が、細胞内Ca関連試薬による処理によって顕著に上昇することをRT-PCRによって確認した。次いで、この培養細胞にジャスモン酸、Caイオノフォアあるいはさまざまな情報伝達関連阻害剤を添加し、Am-FaPS1の発現に及ぼす効果を同様に検討した。その結果、Caのほか、Rac/Rop GTPaseやユビキチンープロテアソーム系がジャスモン酸によるAm-FaPS1発現の誘導に関与することを見出している。また、情報伝達関連遺伝子として、4種類のcalmodulin遺伝子のホモログ(Am-cam1、Am-cam2 Am-cam3、Am-cam4)、2種類のRac/Rop GTPase遺伝子のホモログ(Am-rac1、Am-rac2)をクローニングし、さまざまな外部刺激に対するそれぞれの発現特性を解析することで、セスキテルペン生合成の誘導にかかわると思われるものを推定した。更に、レポーターとしてGFPを含む発現ベクターにこれらの情報伝達遺伝子を組み込み、培養細胞への導入のための条件検討を行ったうえで、トランスジェニック植物細胞の作製に着手している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、平成23年度はAquilaria属植物のセスキテルペン生合成をモデルとして、まず、細胞内Ca関連試薬による処理によりテルペン生合成関連遺伝子の転写活性が上昇することの確認を目標としていた。しかしながら、様々な情報伝達関連阻害剤を用いた実験により、ジャスモン酸によるAm-FaPS1の発現誘導には、Caに加えてRac/Rop GTPaseやユビキチンープロテアソームによるタンパク分解系が寄与することを見出すことができた。さらに、組換え植物の作製は平成25年度に取り掛かる予定であったところを、初年度のうちに発現ベクターの構築を完了して、既に遺伝子の導入に着手している。これらの理由から、本研究の達成度は現時点で「当初の計画以上に進展している」と考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究は、まず、平成23年度の基礎的な実験の結果を基盤として、情報伝達系を改変した組換え植物の作成を進めることを最優先とする予定である。既に、A. microcarpa培養細胞からクローニングした4種類のcalmodulin遺伝子ホモログのうちジャスモン酸誘導性の二次代謝において特異的に機能するものを割り出し、これを組み込んだGFPをレポーターとする発現ベクターを構築している。また、同じく、ジャスモン酸による二次代謝能発現に関わることを見出したRac/Rop GTPaseについても、これをコードする2種類の遺伝子のうちAm-rac2の発現ベクターを同様に作製している。これら二つのタイプのベクターを培養細胞に導入するための実験条件を確立し、組み換え体の作製を行うことを当面の目標とする。次に、これらcalmodulinやRac/Rop GTPase遺伝子を過剰発現させた組み換え細胞の諸性質の解析として、まず、導入したレポーター遺伝子によるGFPタンパクの生成を確認する。更に、Am-FaPS1の発現量を、wild type、あるいは、GFPだけを導入したコントロールと比較して、calmodulinやGTPase遺伝子の過剰発現がセスキテルペン生合成能に及ぼす効果について検討する。これら一連の実験によって、情報伝達系を改変するという方法論によりジャスモン酸の作用を代替することができるか否かを判断する。尚、本研究の長期的・最終的な展望・方向性は、「細胞内情報伝達系の改変」という新規に開発された細胞工学的手法が、他の植物の潜在的二次代謝能の誘導についても高い汎用性を持って応用しうる可能性について検討を加えること である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度以降の研究費の使用項目は、昨年度と同様に遺伝子工学関連試薬の購入がメインとなり、現在のところ設備備品を購入する予定はない。また、生合成酵素遺伝子のレベルにとどまらず、化合物のレベルで組み換え植物体の二次代謝活性を分析する可能性があることから、HPLCカラム等の分析関連消耗品についての支出を想定している。更に、先に述べたように、当初の計画以上に研究が進展していることを受けて、しかるべき学会で成果の発表を行い、研究費の一部をその参加費に当てる予定である。また、研究を円滑に進行させるために、初年度と同様、実験補助としての謝金の支出を計画している。
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Research Products
(9 results)