2013 Fiscal Year Research-status Report
新たな天然薬用資源としての高等植物の潜在的二次代謝能の顕在化とその応用
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23590146
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
黒崎 文也 富山大学, 医学薬学研究部(薬学), 教授 (70143865)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
加藤 康夫 富山県立大学, 工学部, 教授 (20254237)
荻田 信二郎 富山県立大学, 工学部, 准教授 (50363875)
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Keywords | 植物 / バイオテクノロジー / 物質生産 / 遺伝子 / 有用資源 / 情報伝達機構 |
Research Abstract |
平成25年度の研究として、Aquilaria microcarpa培養細胞の情報伝達系を改変したmutant群を作成し、そのfarnesyl diphosphate synthase (AmFPPS)の転写活性を比較・検討した。A. microcarpaからクローニングした情報伝達関細胞内連遺伝子のうちセスキテルペン生合成の誘導にかかわると思われるものとして、calmodulin遺伝子 Am-cam1とRac/Rop GTPase遺伝子 Am-rac2、更に、Am-rac2の翻訳産物にGTPまたはGDPが結合したままとなるconstitutive active (CA)とdormant negative (DN) の2種類のmutated geneを作成してGFP-発現ベクターに組み込み、A. microcarpa培養細胞を形質転換後、選抜によってmutant strain を確立した。その後、それぞれの組み換え体のセスキテルペン生合成能を評価するため、RT-PCRによってAmFPPS遺伝子の転写活性を比較した。その結果、Am-cam1によって形質転換した細胞でのAmFPPS遺伝子転写活性が最も高く、ジャスモン酸処理したpositive controlの約1.2倍程度のレベルであった。Am-rac2並びにCA-Am-rac2の組み換え体も高い活性を示したが、Am-cam1のmutantの50%程度であった。また、DN-Am-rac2変異体におけるAmFPPS発現はpositive controlの約40%程度にとどまった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、組換え植物の作製は、本来、平成25年度に取り掛かる予定であったが、平成24年度のうちに発現ベクターの構築・組み換え体の作成を開始して選抜をほぼ完了し、解析のための変異体株を確保することができた。これを踏まえて、平成25年度には細胞内情報伝達系を改変したA. microcarpa細胞中のセスキテルペン生合成能のメルクマールとして、FPPS遺伝子転写活性の測定を行うことができた。当初の予定を大幅に上回る進展度で研究を遂行することができており、本研究の達成度は現時点で「当初の計画以上に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究は、平成24年度の「Ca-カスケード関連遺伝子による細胞内情報伝達系の改変によって、高等植物内の潜在的二次代謝活性を顕在化させることが可能である」という実験結果を基盤として、同様の方法論によって、植物が生産する多様な二次代謝物の生合成能を活性化することができるか否かを明らかにすることを計画している。すなわち、適切なモデル植物から単離したCa-カスケード関連遺伝子、とりわけcalmodulin やRac/Rop GTPaseを、全く種の異なる薬用植物に導入・過剰発現させることで、組み換えの対象となった植物種に固有の二次代謝が活性化される可能性を検討したい。現在、ゴマノハグサ科の植物であるScoparia dulcisから単離したRac/Rop GTPaseとそのCA型、DN型をAtropa belladonnaの幼植物体に導入した組み換え体についてトロパンアルカロイドの蓄積量を検討しており、上述の目的に沿った研究が進行中である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度の予算執行分についてごく少額の残が生じたが、研究計画の上で予定した試薬類・器具類の購入は済んでおり、執行計画に大きな変更が生じたものではない。 次年度の研究費の使用計画は、これまでと同様に遺伝子関連試薬と細胞培養関連試薬等の購入を主とする予定である。本年度の支出予定に小額の残が生じたが、研究費の使用計画に特に変更を必要とするものではないと考えている。次年度は、研究の総括として標的となる天然物の分析が求められることから、HPLCカラム及び溶媒、更にはGC-MSカラムとキャリアーガス等の分析関連消耗品についての支出を予定している。また、先述のように、当初の計画以上に研究が進展していることを受けて、しかるべき学会で成果を発表することを目指し、研究費の一部を学会参加費に当てる予定である。また、論文投稿にあたっての英文校閲費用、並びに、これまでと同様、実験補助としての謝金の支出を想定している。
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Research Products
(9 results)