2012 Fiscal Year Research-status Report
異物代謝能の個人差を考慮した化学物質のリスク評価法の開発研究
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23590148
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
埴岡 伸光 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 准教授 (70228518)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
成松 鎮雄 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (20113037)
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Keywords | 異物代謝酵素 / フタル酸ビス(2-エチルヘキシル)(DEHP) / モノ(2-エチルヘキシル)フタレート(MEHP) / HepG2細胞 / シトクロムP450(CYP) / 転写制御因子(NR) |
Research Abstract |
生体異物を解毒・活性化する「異物代謝酵素」の機能の個人差に着目し、ヒトを取り巻く化学物質のリスク評価法の開発を目指す。(1)ヒト人工多能性幹細胞(iPS細胞)や哺乳動物由来の不死化細胞における異物代謝酵素の環境的要因による変動メカニズムを分子レベルで解明する。(2)メタボロミクス手法を用いて異物代謝酵素の補因子の生合成経路に関与する生体内物質の化学物質による量的変動を網羅的に解析する。(3)モデル化学物質に内分泌化学物質などを用いてそのin vitro代謝の遺伝的要因に基づく異物代謝酵素の機能変動を多角的に解析・整理して各個人の体質を考慮した化学物質のリスク評価法を開発する。 本年度は、ヒト肝癌由来のHepG2細胞におけるフタル酸ビス(2-エチルヘキシル)(DEHP)及びその加水分解反応により生成するモノ(2-エチルヘキシル)フタレート(MEHP)によるシトクロムP450(CYP)及びその発現制御を担う転写制御因子(NR)のmRNA変動を分子種レベルで詳細に検討した(CYP: 1A1, 1A2, 1B1, 2A6, 2C8, 2C8, 2C19, 2D6, 2E1, 3A4, 3A5; NR: AhR, CAR, GR, PXR, RXR)。リアルタイムRT-PCR解析の結果、MEHP処置細胞のCYP1A1、CYP2B6及CYP3A4 mRNAレベルは、DEHP処置細胞のそれぞれ約4倍、6倍及び3倍であった。また、MEHP処置細胞におけるAhR、CAR及びPXR3 mRNAレベルもDEHP処置細胞のそれぞれ約3倍、4倍及び12倍高かった。しかし、CYP1A1、CYP2B6及CYP3A4以外のCYP分子種のmRNA発現レベルは、MEHP処置細胞の方が低かった。これらの結果から、DEHPの代謝的活性化は各CYP分子種の著しい発現変動により惹起される可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請者は、これまでにヒトにおけるDEHPの加水分解反応に関与する酵素の特性をin vitro系で追究してきた。これらの成果を踏まえて、本年度は、ヒトにおけるフタル酸エステル類のリスク評価法を確立するための一環として、DEHP及びMEHPのHepG2細胞におけるCYP及びNRのmRNA発現に及ぼす影響について検討した。リアルタイムRT-PCR分析の結果、HepG2細胞においてDEHP及びMEHPは、CYP1A1、CYP2B6及CYP3A4並びにAhR、CAR及びPXR3 mRNAレベルを増加させることが明らかとなった。これらの検討は、ヒト由来細胞株におけるフタル酸エステル類の影響を異物代謝酵素の見地からの初めて網羅的発現解析であることを示すものである。従って、本年度の検討及びそれらの成果は、本課題の当初の計画を概ね達成したものと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、以下の研究を推進する予定である。 1)化学物質の毒性発現及び代謝の標的臓器として小腸を想定し、iPS細胞を腸管に分化させた細胞及びCaco-2細胞における異物代謝酵素の発現解析並びに対象化学物質による異物代謝酵素の変動をmRNA、タンパク質及び酵素機能の観点から多角的に解析する。 2)化学物質の代謝の個人差を明らかにするために、(1)個人小腸ミクロゾーム(市販;すくなともそれぞれ5例以上)を及び小腸発現異物代謝酵素のリコンビナント酵素を用いて対象化学物質のin vitro代謝試験系を構成し、酵素反応を行う。(2)小腸における代謝プロファイル(経路及び生成物)の個人差を整理し、その規則性を解析する。 3)異物代謝酵素の補酵素(NADH及びUDPGA)の生合成に及ぼす対象化学物質の影響についてメタボローム解析を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当研究室には細胞培養のための設備並びに異物代謝酵素の発現解析(mRNA及びタンパク質)のための装置などは所有している。一方では、細胞培養及びリコンビナント酵素の作製などの試薬や器具、並びに個人肝・小腸ミクロゾームを十分量必要とする。そのため、平成25年度の研究費のほとんどは消耗品に充てる。研究成果は学会や国際誌に発表する予定であり、旅費(学会参加のための旅費)やその他(英文校正料)にもそれぞれ5万円以下ずつ充てることを検討している。
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Research Products
(15 results)