2012 Fiscal Year Research-status Report
薬用植物の活性酸素代謝機構に関する構造生物学的研究
Project/Area Number |
23590149
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
森元 聡 九州大学, 薬学研究科(研究院), 教授 (60191045)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
玉田 太郎 独立行政法人日本原子力研究開発機構, その他部局等, 研究員 (50391248)
安達 基泰 独立行政法人日本原子力研究開発機構, その他部局等, 研究員 (60293958)
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Keywords | パーオキシダーゼ / モルヒネ / バイカレイン / ケシ / コガネバナ |
Research Abstract |
昨年度は、大腸菌及びカイコを用いてバイカレインパーオキシダーゼとモルヒネパーオキシダーゼの大量発現系の検討を行った。この結果、大腸菌の系で両者の大量発現に成功したが、いずれも活性のない不溶性タンパクとして発現したので、巻き戻し条件を検討することにより両組み換えタンパク質を活性化させた。平成24年度は、巻き戻しに成功したモルヒネパーオキシダーゼMP-2の精製条件を検討したところ、リソースQを使用することにより電気泳動上単一バンドまで精製することに成功した。そこで精製したMP-2を用いて結晶化条件を検討したところ、pH6.5、PEG8000を用いた条件で、結晶を獲得した。ケシのパーオキシーゼの結晶化に成功した例はこれまでなく、研究目的であるモルヒネパーオキシダーゼの反応メカニズムの解明に大きく貢献すると思われる。しかしながら、結晶が針状晶のためより大型の結晶を獲得する条件検討を進めている。 さらに平成24年度はケシのパーオキシダーゼと思われる他の2種の遺伝子の発現検討を行った。MP-1についてカイコで発現を検討した結果、モルヒネの酸化は確認されなかったが、ABTSやグアイヤコールなどの人工基質を酸化することが確認された。しかしながらカイコの発現系では少量しか組換え酵素が発現しないことから、大腸菌を用いた発現系を構築を行っており、現在至適発現条件を検討しているところである。またMP-3に関しても同様の発現系の構築を行っている。 コガネバナのパーオキシダーゼに関してはBP-1及びBP-2の大量発現条件や巻き戻し条件の再検討を行った。すなわち大腸菌を用いて発現した後、システイン及びシスタミンを用いて巻き戻しすることにより活性酵素を得ることに成功した。現在イオン交換カラムを用いて精製を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成24年度では、パーオキシダーゼのX線結晶回折実験を行う計画であったが、このためには結晶を獲得することが不可欠である。本年度末にようやく結晶の獲得に成功したが、当該年度内に回折実験を実施できなかったので、目的の達成度は当初の実験計画よりやや遅れていると評価した。しかしながら、結晶が得られているので回折実験の実施や反射データの解析をはじめとする以降の実験計画は平成25年度に達成すると思われる。 また、X線結晶解析は行うことはできなかったが、平成24年度ではケシパーオキシダーゼのアイソザイムであるMP-1の発現に成功し、その性質を解明した。すなわち本酵素がモルヒネを酸化することができないが、グアイヤコールなどの基質を酸化することを初めて明らかにするなど重要な知見も本年度の研究によって得られている。さらにコガネバナのパーオキシダーゼBP-1及びBP-2の大量調製にも成功しており、両酵素の結晶化も比較的容易に行えると思われる。以上のことから、X線回折実験を実施していないが、全体から見れば研究目的の達成に向かって着実に進展していると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
MP-2については結晶の獲得に成功しているので、速やかにX線解析実験を遂行する計画である。良好な反射データが得られれば、位相の決定、電子密度の計算およびモデル構造の構築を行う。これらのデータを基に活性アミノ酸の同定を試みる。必要あれば基質複合体の結晶構造の解析も検討する。また、X線結晶解析により適した結晶条件の検討も同時並行で遂行する計画である。最終的にはMP-2の阻害剤の設計も検討する。 MP-1及びMP-3については結晶の獲得を目指し、結晶化に成功次第、MP-2と同様の実験を行う予定である。 BP-1やBP-2については、発現条件をすでに決定しているので、速やかに精製条件の検討、次いで結晶化条件の探索を行う計画である。結晶が得られ次第、上記に示したMP-2の実験と同様の操作を進める計画である。 なお、X線回折実験に関しては、日本原子力研究開発機構に所属する分担者が専門家であるので、密に連絡を取りながら実験を遂行する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度では①阻害剤の設計用試薬②酵素活性測定試薬③蛋白質発現用試薬・器具④植物二次代謝産物分析試薬⑤植物組織・細胞培養用試を計上しているが、当該年度の実験において計画通りこれらを使用することによって、目標を達成する予定である。 またこれらに加え研究分担者との打ち合わせのための旅費も計上しているが、これも予定通り使用する。
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