2013 Fiscal Year Research-status Report
胎児GC曝露に及ぼす環境化学物質の影響評価とヒト胎盤HSD11B2の関与
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23590154
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Research Institution | Hoshi University |
Principal Investigator |
大野 修司 星薬科大学, 薬学部, 准教授 (20233223)
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Keywords | HSD11B2 / HSD11B1L |
Research Abstract |
ストレスホルモンであるコルチゾールは、脂溶性のため胎盤を容易に通過し母体から胎児側へと移行する。しかし胎児にとって高濃度のコルチゾールに曝されることは、正常な発育を妨げることになり、特に近年、子宮内発育不全で出生した子供では若年性成人病発症リスクが高くなることが明らかになり問題視されるようになった。胎盤の栄養膜中には、コルチゾールからグルココルチコイド受容体との親和性が低い不活性型のコルチゾンへの代謝を触媒する酵素であるHSD11Bアイソザイムが発育ステージ依存的に発現しており、これにより胎児へのコルチゾール曝露を防いでいると考えられている。活性型のコルチゾールからコルチゾンへの代謝を触媒するのは、タイプ2型のHSD11B2アイソザイムと考えられているが、近年体内では新規タイプ3型のアイソザイム(HSD11B1L)も同様の触媒活性を持つことが推定されつつある。本研究の目的は、これらの酵素活性または発現を抑制するような環境中の化学物質の推定にあり、HSD11B2を第一ターゲットとして環境化学物質の評価系の構築を試みてきたが、ヒトの培養細胞を用いた評価系として十分な酵素活性を持った評価システムを構築するには至っていなかった。そこでヒトHSD11B2遺伝子のコドンの最適化を行い、再度十分な酵素活性を持つ評価系構築を試みた結果、現在活性発現を確認し評価系として再構築中である。一方でヒトにおけるHSD11B1Lについては、10種類の転写バリアントの存在がわかっているが、これらの中で酵素活性を持つことが推定される3種に絞り発現の検討を行っている。これまでヒトの脳内に特異的に発現していると考えられてきたHSD11B1Lは、性腺や胎盤中にも多く発現しており、これらの発現がバリアントの種類に依存している可能性を見いだすに至った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
環境化学物質の影響を評価するのに十分な酵素活性を持つ評価系が構築できず、試行錯誤を繰り返したこと。これは、HSD11B2遺伝子の塩基配列特異性から生じていると考えられたため、コドンの見直しを行い再構築中を試みた。その結果、高い酵素活性を示すことが確認されており、現在評価するための新システムとして準備中である。一方で、HSD11B1Lの発現も、バリアントが多いことや遺伝子の塩基配列の特殊性が推定され、活性確認に手間取っていることが上げられる。しかしながらその一方で、リアルタイムPCRを利用した発現定量を行い、その体内分布の情報から本アイソザイムの重要性が明らかにされつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
本来のHSD11B2に対する影響評価はもちろんであるが、これまでその関与が明らかにされていなかった新規アイソザイムについて発現させて解析を進めることでHSD11B2に対する影響と並列に評価する、またはそれができるように進めていきたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額として12026円が生じたが、さらに必要試薬を購入するには額面が不足していたため、敢えて使用しなかったものである。従ってほぼ予定通り全額を使用したものと認識している。 使用計画に変更が生じる額ではないため、特に変更なく次年度に使用させていただく予定である。
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