2012 Fiscal Year Research-status Report
大腸がん新規薬物療法を目指したAhRリガンドの探索
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23590162
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Research Institution | Research Institute for Clinical Oncology, Saitama Cancer Center |
Principal Investigator |
椎崎 一宏 埼玉県立がんセンター(臨床腫瘍研究所), その他部局等, 研究員 (20391112)
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Keywords | 大腸がん / AhR / βカテニン / CUL4B / 盲腸内容物 |
Research Abstract |
AhRはリガンド依存的にCUL4Bと結合し、標的タンパクをユビキチン化し分解促進すると考えられている。マウス盲腸においてはAhRがβ-カテニンを分解することによって発がんを抑制することが報告された。そこで、核内のβ-カテニンの分解を測定しうるレポーターアッセイ系構築を試みた。しかし、10種のヒト大腸がん由来細胞および20種以上のAhRリガンドを用い、考えられ得る条件を試行したが、レポーター活性の低下は確認できなかった。β-カテニンタンパクの分解は高濃度のDIM(ジインドールメタン)処理でのみ認めらたが、この反応はAhRやプロテオソーム依存的な反応ではなく、細胞接着性の低下によるものであった。また、酵母 two-hybrid法によるCUL4BとAhRおよびβ-カテニン結合を指標としたアッセイ系構築を試みたが修飾介在因子を含め様々な組み合わせを試行したものの、これらタンパクの酵母内での結合は認められなかった。このため、AhRリガンドの活性評価についてはXRE依存的な酵母レポーターアッセイを高感度化することで行うこととした。本研究の最終目標は腸での発がんを予防する安全なAhRリガンドの探索である。マウス盲腸には何らかのAhRリガンドが存在し、AhRを活性化することで発がんを抑制していると考えられるため、盲腸内容物(CC)中に含まれるAhRリガンド様物質の探索を行なった。C18カートリッジにてCCの簡易精製を行い、AhRリガンドの有無を高感度化酵母アッセイにより調べたところ、水抽出画分に活性を認めた。そこで大阪府立大学分子細胞遺伝学研究室(八木孝司教授)に研究協力を求め、簡易精製物をHPLCで分離し、活性画分の同定を行った。その結果、盲腸内容物中のAhRリガンド様活性は複数の画分に認められた。現在、ヒト細胞を用いた活性の確認と対象分画の絞り込みを行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
大腸がん由来細胞でのAhRリガンド処理によるβ-カテニンの分解については、現在のところ再現することができない。この現象は本研究の立案時における重要な実験的根拠の一つであることから、結果を再現するべく、考えられ得るあらゆる条件を試行した。このために研究期間のおよそ半分を費やしたが、実験結果の再現には至らなかった。さらに、この現象について論文発表およびデータを提供した研究室は、昨年4月に研究主催者の辞任により解散した。このため、適切な情報やアドバイスを得ることができなくなり、研究期間内での実験結果の再現は非常に困難な状況になった。また、CUL4BとAhRのリガンド依存的な結合の有無については、酵母 two-hybrid法以外にも、免疫共沈法、mammalian two-hybrid法を試行したが、今のところこれらタンパクの結合を示すデータは全く得られていない。 一方、個体レベルでの表現型であるAhR欠損マウスでの盲腸発がんについても本研究の根幹であることから動物を入手、繁殖させて追試したところ、既報通り回盲部での病変が確認された。このことから、マウス盲腸においてAhRを介した発がん抑制機構が存在していることは確実であり、その分子メカニズムとして盲腸での何らかのAhRリガンドの関与が示唆される。そこでマウス盲腸内容物からのAhRリガンドの探索を本年度より開始した。しかし、所属研究機関ではHPLC等の分離精製機器を保有していないこと、また高感度化した酵母レポーターアッセイについては特許およびライセンスの制約があり、大阪府立大学で機器、実験設備を借用して実験を行った。大阪府立大学での長期の滞在は難しいため、一週間程度の出張実験を繰り返すことで研究を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
リガンド依存的なAhRによるβカテニンのユビキチン化および分解、という仮説をいったん反故にし、盲腸内容物中の内因性リガンドの探索に研究の重点を移す。対象となる物質は腸内細菌による代謝物である可能性が高いため、動物に対して抗生物質投与を行ってリガンド様活性の変化を検討すると共に、盲腸内の嫌気菌培養を行いその培地の活性評価を行う。リガンド様物質の活性測定には改良型酵母レポーターアッセイを用い、分離精製に関しては本年度同様、大阪府立大学での出張実験により研究を進める。最終的には活性分画の選抜、物質の単離精製を行い、目的物質の質量分析による同定を目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
物品費はリガンドの分離精製のためのHPLCに関する試薬の購入、動物の飼育管理に関する消耗品、および嫌気性菌培養のための試薬の購入に充てる。リガンド候補物質の単離精製に成功した場合には、外注により物質の同定を行う費用に使用する。旅費については本年度同様に大阪府立大学での実験を行うための出張旅費として使用する。また、本研究課題の最終年度にあたるため、蓄積したデータの公表として論文作成および投稿に関する費用に使用する。
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[Journal Article] ASC-associated inflammation promotes cecal tumorigenesis in aryl hydrocarbon receptor-deficient mice.2013
Author(s)
Ikuta T , Kobayashi Y , Kitazawa M , Shiizaki K , Itano N , Noda T , Pettersson S , Poellinger L , Fujii-Kuriyama Y , Taniguchi S , Kawajiri K
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Journal Title
Carcinogenesis
Volume: in press
Pages: in press
DOI
Peer Reviewed
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