2012 Fiscal Year Research-status Report
マイクロダイセクション法を用いたメチル水銀による選択的神経細胞障害に関する研究
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23590167
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Research Institution | National Institute for Minamata Disease |
Principal Investigator |
藤村 成剛 国立水俣病総合研究センター, 基礎研究部, 室長 (20416564)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
臼杵 扶佐子 国立水俣病総合研究センター, 臨床部, 部長 (50185013)
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Keywords | 国際情報交換 / フランス / メチル水銀 / 選択的神経細胞障害 / マイクロダイセクション / 中毒学 / 環境系薬学 / 薬学 |
Research Abstract |
本研究の目的は、メチル水銀による選択的神経細胞障害の決定因子を確定し、メチル水銀中毒の診断、予防および治療において有益な情報を得ることである。そのためにマイクロダイセクション装置を用いて、メチル水銀毒性の発現する部位と発現しない部位について個々の細胞を分離し、選択的神経細胞障害に関与する可能性のあるmRNA量について解析を行う。小脳神経細胞には主に3種類の神経細胞(顆粒細胞, プルキンエ細胞, 分子層細胞) が存在し、メチル水銀曝露によって小脳顆粒細胞特異的に神経変性が生じる。 今年度は、ラットを用いたメチル水銀曝露モデルの小脳において、小脳顆粒細胞特異的に神経病変 (神経細胞核の濃縮, TUNEL陽性神経細胞, GFAP陽性アストロサイト, およびIba1陽性ミクログリアの発現) が起こることを確認した。さらに、マイクロダイセクション装置を用いてラット小脳の各神経細胞層 (プルキンエ細胞、顆粒細胞、分子層神経細胞) を分離し、抗酸化酵素であるCu, Zn-SOD, Mn-SOD, GPx1, TRxR1およびCatalaseのmRNA発現量について検討した。その結果、メチル水銀毒性に対して脆弱な顆粒細胞層において他の神経細胞 (プルキンエ細胞, 分子層神経細胞) よりもMn-SOD, GPx1およびTRxR1のmRNAが少ないことが明らかになった。この結果は免疫組織染色による各蛋白質の分布と一致し、メチル水銀による顆粒細胞の脆弱性にMn-SOD, GPx1およびTRxR1発現量の少なさが関与することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
現在までの検討によって、メチル水銀毒性に対して脆弱な顆粒細胞層において他の神経細胞 (プルキンエ細胞, 分子層神経細胞) よりもMn-SOD, GPx1およびTRxR1のmRNAが少ないことを明らかにすることができた。 本年度の目標は、マウスを用いたメチル水銀による神経変性因子の検討(大脳皮質深部神経細胞と海馬神経細胞の比較) であるが、ラットを用いたメチル水銀による神経変性因子の検討(小脳顆粒細胞と小脳プルキンエ細胞および後根神経と前根神経の比較) までしか進捗しなかった。 今年度の検討において、酸化ストレスの防御因子であるMn-SOD, GPx1およびTRxR1がメチル水銀の神経毒性に対する防御因子の一つであることを明らかにできたことは、一定の成果といえると考える。しかしながら、メチル水銀による神経毒性に対する防御因子は数多く存在することから、抗酸化酵素以外の因子についても、今後、検討を行う必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までの検討によって、メチル水銀曝露による小脳顆粒細胞の選択的神経細胞障害がその防御因子であるMn-SOD, GPx1およびTRxR1の不足に起因することが示された。しかしながら、このような因子毎の検討では網羅的な因子解析を行うには限界がある。そこで、マイクロダイセクション装置を用いて得られた各種細胞からのmRNAについて、マイクロアレイを用いた網羅的な因子解析を行う予定である。マイクロアレイの解析項目は神経変性に関与する遺伝子群 (抗酸化酵素, Ubiquitin-proteasome経路, Autophagy-lysosome経路, 神経栄養因子等) を予定している。 上記の方法を用いて、小脳神経細胞だけではなく、大脳, 海馬, 末梢神経系についても解析を行う予定であり、マイクロアレイによって特定因子の絞込みを行った後、定量PCRによって正確なmRNA含量を測定する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
まず、実験動物(Wistarラット: 3千円X30匹=9万円, C57BKマウス: 2千円X30匹=6万円) を使用する。次にメチル水銀中毒モデルを作成した後、組織学的検討を行うが、その際に抗体 (13万円) およびその他消耗品(包埋剤, スライドグラス, カバーグラス, 溶媒, カッティングブレード, 染色液, 免疫染色キット) (7万円) を使用する。マイクロダイセクション用の切片には専用の凍結切片を作成しなければならないので、上記とは別の消耗品(包埋剤, フォイル付きスライドグラス, 染色液, 免疫染色キット) (5万円) も使用する。また、mRNA発現を網羅的に検出するためにマイクロアレイ解析(外注) に50万円を使用する。さらに、mRNA発現量の正確な定量のためにmRNA抽出キット(5万円)、cDNA作成キット(5万円)、PCRキット(5万円) およびその他消耗品(PCRプライマー, PCRチューブ等) (5万円) を使用する。今年度未使用額の7,430円については、チップ等の消耗品代に使用する。
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Research Products
(2 results)