2012 Fiscal Year Research-status Report
CYP3A遺伝子クラスター導入マウスを用いたヒトにおける性差の研究
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23590170
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
小林 カオル 千葉大学, 薬学研究科(研究院), 准教授 (30255864)
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Keywords | CYP3A / 遺伝子導入 / 性差 |
Research Abstract |
薬物代謝酵素シトクロムP450 3A(CYP3A)の活性は女性の方が男性より高く、CYP3Aの基質薬物を静脈投与した時のクリアランスには性差が認められるとの報告がある。この理由として、女性の方が男性よりも肝臓におけるCYP3Aの発現量が高く、その発現制御には女性ホルモンが関係している可能性が示唆されている。本研究の目的は、この可能性を、世界で初めてすべてのヒトCYP3A分子種の遺伝子クラスターを上流域を含めて導入発現させた「CYP3Aヒト型マウス」を用いて検討することである。平成23年度は、CYP3Aヒト型マウスの肝におけるCYP3A4の発現量および酵素活性は雌の方が雄よりも高いこと、雌の肝におけるCYP3A活性は加齢にともなって低下することを明らかにした。平成24年度はCYP3A4の発現に及ぼす女性ホルモン(エストラジオール, E2)の影響を検討した。雄性CYP3Aヒト型マウスにE2を投与したところ、肝におけるCYP3A4の酵素活性と発現量は対照群に比較して高い値を示した。しかし、ヒト肝がん由来HepaRG細胞にE2を曝露した場合、CYP3A4 mRNA発現量の増加は認められなかった。E2により制御される成長ホルモンの分泌パターンには性差があることから、HepaRG細胞に雄型あるいは雌型の分泌パターンを模倣して成長ホルモンを曝露した。雄型の成長ホルモンを曝露した場合には、CYP3A4 mRNA発現量の減少が認められたが、雌型の曝露では変化が認められなかった。これらの結果より、雄型のGH分泌パターンが肝におけるCYP3A4の発現を負に制御することが示唆された。以上より、肝におけるCYP3A4の発現量はE2により正に制御されていること、およびE2は直接的な作用よりむしろ成長ホルモンの分泌パターンの制御を介してCYP3A4発現量の性差に関与している可能性が考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画の下記6項目のうち、1)2)の2項目を達成し、3)についてはヒト由来肝細胞を用いて実施した。4)については予備検討を実施したので、平成25年度に本試験を実施する。5)6)については実験に用いるマウス数を十分に確保できなかったため実施できなかったので平成25年度に実施する。 1)エストロゲン投与によるCYP3A発現への影響、2)エストロゲン受容体α発現量とCYP3A発現量との関係、3)CYP3A-HACマウスの初代培養肝細胞におけるCYP3A発現量におよぼすエストロゲンの影響、4)妊娠によるCYP3A発現への影響、5)CYP3A-HACマウスの血中エストラジオール濃度とCYP3A発現量との関係、6)雌雄CYP3A-HACマウスにおける薬物動態の比較
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの検討により、CYP3Aヒト型マウスの肝におけるCYP3A4の発現量に性差が存在することが明らかとなった。しかし、性差を生じる原因がエストラジオールの直接作用ではなく、成長ホルモンの分泌パターンの制御を介することが示唆されたこと。そこで当初計画を変更し、平成25年度は、CYP3A発現量の性差が薬物体内動態に影響を与えるか、および女性ホルモンがCYP3Aの誘導の性差に影響を与えるかを明らかにするための検討を行う。 1)雌雄CYP3A-HACマウスにおける薬物動態の比較:CYP3A基質を雌雄CYP3A-HACマウス(10週令、各3匹)に投与(経口、静脈内)し、それぞれの血中動態を比較する。2)妊娠によるCYP3A発現への影響:妊娠CYP3A-HACマウスの肝および小腸におけるCYP3A分子種の mRNA量を同じ週令の非妊娠CYP3A-HACマウスと比較する。CYP3A4のタンパク量と代謝活性についても比較する。3)CYP3A-HACマウスの血中エストラジオール濃度とCYP3A発現量との関係: CYP3A-HACマウスの血中エストラジオール濃度とCYP3A発現量との関係を調べる。4) 雌雄CYP3A-HACマウスにおける誘導の性差:CYP3A誘導剤を雌雄CYP3A-HACマウス(10週令、各3匹)に投与し、肝および小腸におけるCYP3A4 mRNAの増加を比較する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
連携研究者との打ち合わせ旅費として5万円(羽田-鳥取間の航空券および一泊分の宿泊費)×1回、英文校正費として5万円、試薬、実験器具等の消耗品費として70万円を使用する。
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