2012 Fiscal Year Research-status Report
副作用マネジメントと毒性回避のための臨床薬物動態研究
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23590173
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
崔 吉道 金沢大学, 大学病院, 准教授 (40262589)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮本 謙一 金沢大学, 大学病院, 教授 (30100514)
西村 友宏 慶應義塾大学, 薬学部, 助教 (40453518)
澤本 一樹 金沢大学, 大学病院, 助教 (80608696)
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Keywords | 個の医療 / 体内動態変動 / 医薬品副作用 / 抗がん剤 / 肥満 / 経腸栄養 |
Research Abstract |
医薬品の副作用マネジメントと毒性回避を目指した患者個々に最適な投与設計法を確立することを目的として、病態時の薬物体内動態に焦点を当て、ヒト臨床試験および動物モデルを用いた検討を行い、本年度は以下の成果が得られた。 1. 抗MRSA薬リネゾリド(LZD)の腎機能障害患者における体内動態変動と骨髄抑制に関する臨床試験について中間解析を行ったところ、LZDおよび代謝物の血中濃度がともに腎機能障害が高度になるほど上昇し、血小板減少率も上昇する傾向が見られた。また、臨床試験中にリファンピシンとの相互作用が示唆される症例が見られたため、そのメカニズムについてラットモデルを用いて予備的な検討を開始し、成果の一部の学会発表を行った。 2. 膵癌肝転移症例に対するゲムシタビン(GEM)肝動注に関する臨床試験は継続中である。ラットを用いた検討から、肝抽出率の非線形性は膜輸送過程の飽和による可能性が示唆され学会発表を行った。さらにヌクレオシドトランスポーターENTの関与について遊離肝細胞を用いた検討を開始した。また、糖尿病モデルでのヌクレオシド輸送については論文発表を行った。 3. 長期経腸栄養療法施行時の強心配糖体ジゴキシンの体内動態変動とトランスポーターおよび薬物代謝酵素の発現変動については論文発表を行った。 4. 肥満病態時にトランスポーター(P-糖タンパク質)と薬物代謝酵素(CYP3A)の発現変動と体内動態変動について免疫抑制剤(シクロスポリン・タクロリムス)および合成オピオイドのフェンタニルについて予備的な成果を得て学会発表を行った。 5. 腹膜播種患者にタキサン系抗がん薬を腹腔内投与後の体内動態について論文発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
リネゾリドとゲムシタビンに関する臨床試験は、おおむね順調に進行しているが、いずれも未だ症例数が不足しており、試験を継続中であるが、期間の延長が必要かもしれない。 リネゾリドの臨床試験においては興味深い相互作用が観察され、研究の新たな進展が期待される。 平成23年度から予備検討を行ってきた長期経腸栄養療法によるジゴキシンの体内動態変動については計画よりも急速に研究が進展し論文発表を行うことができた。 平成25年度に開始予定であった肥満時の薬物動態変動については一部計画を前倒して開始することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
リネゾリドとゲムシタビンに関する臨床試験は、今後も継続して症例を追加してゆく。 リネゾリドとリファンピシンの相互作用については、そのメカニズムについて動物モデルを用いて解明してゆく。ゲムシタビンの肝抽出率の非線形については、ラットの正常肝細胞に加え、ヒトの正常肝細胞や膵癌細胞株を用いて、さらにメカニズムの解明を目指してゆく。 長期経腸栄養療法時の体内動態変動については、ジゴキシン以外の薬物についても変動の有無を検討してゆく。 肥満時の薬物動態変動については、動物モデルおよびヒト試験を展開してゆく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究計画はおおむね順調に推移した結果、研究費総額もほぼ計画通りである。次年度使用となった6,405円は、次年度分と合算して当初の予算計画に従って使用してゆく。
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