2012 Fiscal Year Research-status Report
部位差を考慮した薬物の消化管吸収性評価システムの構築とその製剤設計最適化への応用
Project/Area Number |
23590175
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
白坂 善之 金沢大学, 薬学系, 助教 (60453833)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
玉井 郁巳 金沢大学, 薬学系, 教授 (20155237)
中西 猛夫 金沢大学, 薬学系, 准教授 (30541742)
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Keywords | 薬学 / 薬物動態学 / 経口吸収 / 徐放性製剤 / トランスポーター / 代謝酵素 / 薬物間相互作用 / 生体分子 |
Research Abstract |
平成24年度における研究では、フルーツジュース(FJ)-薬物間相互作用の臨床報告に基づいて、その原因分子と推察される消化管トランスポーターOATPおよびP-gpに着目した検討を行った。特に、グレープフルーツジュース(GFJ)、オレンジジュース(OJ)、アップルジュース(AJ)により生じる薬物吸収変動の相違を基に、トランスポーターの輸送/阻害特性に関する考察を行った。 Fexofenadineのラット小腸膜透過性に対するFJ同時暴露の影響を検討したところ、GFJ、OJおよびAJによって吸収性が有意に低下した。一方、pitavastatinの膜透過性はGFJによってのみ上昇した。ラットOatpおよびP-gp発現細胞を用いた検討により、fexofenadineの膜透過性変動はOatp阻害に、pitavastatinの膜透過性変動はP-gp阻害に起因していることが示唆された。 次に、原因成分の探索を行うために、FJ中成分の濃度とそれら成分によるOATP2B1阻害効果を検討した。その結果、GFJおよびOJによるOATP2B1阻害は、それぞれnaringinおよびhesperidinが関与することが示唆された。AJによる阻害に関しては、複数の成分による相加的効果によりOATP2B1阻害を生じる可能性が示唆された。 FJによる薬物吸収変動はFJを事前投与した際にも観察されている。そこで各FJ事前暴露時のOATP2B1に対する作用を検討した。その結果、OJおよびAJによる阻害作用には、事前暴露時間依存性と長時間 (240分間) にわたる持続性が観察された。しかし、GFJでは事前暴露作用は観察されず、FJ間で影響が異なった。 以上より、薬物の消化管吸収および相互作用にOATPならびにP-gpが関与していることが示され、さらにOATPが多様なメカニズムを有している可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度、使用したモデル薬物の不足を受けて薬物の消化管吸収動態解析およびその規定因子の同定が予想以上に難航した。そこで、本年度では、モデル薬物を追加して検討を行った結果、ラット十二指腸、空腸、回腸、大腸を用いたin situ吸収実験 (closed loop法 [滞留法]あるいはsingle-pass perfusion法 [単回灌流法])による研究内容に関しては、順調に進展した。しかし、昨年度の検討の遅れを受けて、現在も引き続き検討に遅れが生じているのが現状である。また、本年度の検討で、トランスポーターが複雑で多様な輸送/阻害機構を有していることが明らかとなり、単純な薬物動態学的(速度論的)解析では、その薬物の吸収動態を認識できないことが示唆された。したがって、今後も、薬物吸収動態を精度良く理解するためにも、研究進展が足踏み状態に陥ることを覚悟したうえで、これらのメカニズム解明を行うべきだと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の検討結果を受けて、OATP2B1上に異なる特性を有する複数の基質結合部位 (multiple binding sites: MBS)が存在する可能性が考えられた。そこで、今後の方針として、まずこのMBSの存在と機能を解明するための検討を行う。すなわち、OATP2B1を遺伝子導入したアフリカツメガエル卵母細胞(oocyte) およびHEK293/OATP2B1細胞を用いて、数種のモデル薬物、estrone-3-sulfate (E13S)、pravastatinおよびfexofenadineの取り込み活性ならびに阻害剤感受性を評価する。また、HEK293/OATP2B1細胞におけるOATP2B1タンパク質の局在を免疫細胞染色によって評価する。 一方、消化管における薬物代謝に関与するCYP3A4およびCYP3A5についても検討を行う。特に、CYP3A発現は遺伝子多形に起因した個人差が存在することが知られている。そこで、CYP3A4を介した薬物代謝に対するCYP3A5の影響について考察を加える。 これらの情報に基づいて、MBSを考慮したトランスポーター輸送解析の提唱を行うと共に、CYP3A4/3A5を介した消化管代謝の解析を行い、さらに、これら発現量や消化管内薬物濃度をはじめとした消化管部位差の情報を組み込んだ薬物吸収評価法の構築を試みる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(7 results)