2011 Fiscal Year Research-status Report
薬物治療最適化に向けたセルフマイクロモニタリング系の開発と在宅・薬局での実践
Project/Area Number |
23590183
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
池田 佳代 広島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (30379911)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森川 則文 広島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (30346481)
猪川 和朗 広島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 准教授 (40363048)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 薬学 / 医療・福祉 / セルフマイクロモニタリング / 保険薬局 / マイクロTDM |
Research Abstract |
本研究の目的は、患者、薬剤師、医療機関などとの連携を利用し、在宅・保険薬局での薬物動態の把握を通じ、薬物治療の最適化に向けた、簡便かつ低侵襲な自己採取法による微量体液検体を用いたセルフマイクロモニタリング系の開発とその有用性を評価することである。セルフマイクロモニタリングとは、低侵襲かつ簡便な自己採取(セルフ)で数μLの微量体液検体(マイクロ)を用いてモニタリング(薬物濃度測定を行い薬物治療状態を評価する)することであるが、マイクロTDM(Therapeutic Drug Monitoring;治療薬物モニタリング)と呼称した。 研究実施計画の(1)対象患者および(2)対象薬剤の選択については、保険薬局、医院を選定し、慢性疾患でハイリスク薬服用患者をテオフィリン服用患者とし、広島大学疫学研究倫理審査委員会で審査中である。抗けいれん薬のフェノバルビタール、フェニトイン、カルバマゼピンについては、血漿20 μL程度で高速液体クロマトグラフィー(HPLC)法を利用した同時分析を実施可能にした。(3)生体試料については、様々な生体サンプルでの倫理審査を一度に行うのは困難なことから、現在の申請は血液での審査とした。(4)生体試料は、保険薬局からの車での運搬とし、(5)測定方法は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、エンザイムイムノアッセイ(EIA)が微量血液にても使用可能であることを確認した。当研究室で所有するガスクロマトグラフィー質量分析計(GC-MS)を用いて評価するためオランザピンの測定法を開発し、マイクロTDMに対しての有効性が確認できた。(6)測定結果の解析方法についてはPEDAソフトにて、1点のテオフィリン血中濃度からの解析が可能であった。(7)情報の伝達はe-mailにて、必要書式の作成を行った。 以上、マイクロTDMの枠組みは構築済みであり、審査が承認された後すみやかに実施したい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
マイクロTDMの枠組みは構築できたが、広島大学疫学研究倫理審査委員会での審査中であるため、保険薬局における実際の患者でのマイクロTDMの実施が遅れている。本研究の新規性のために、また審査書類の論述法に慣れていなかったため、審査書類の作成に関しての審査が遅れていると思われる。審査が承認された後、すみやかに実施すれば、遅れは挽回できると考えている。 また、様々な生体サンプルでの倫理審査を一度に行うのは困難なことから、現在の申請は血液に絞り込んだ審査となるように変更した。これらのことから、今後の研究の推進方策に若干の変更を行う予定である。 中規模病院での倫理委員会の許可は取得済みである。薬剤師を中心としたワルファリン(経口抗凝固薬)のPT-INR(プロトロンビン時間国際標準比;外因系凝固活性化機序を反映する検査であり、ワルファリンの効果を示す)の測定を実施した。指先穿刺により自己採取した微量血を用いてポイント・オブ・ケア・テスティン(POCT)製品を利用して行った。POCTとは被験者の傍らで医療従事者が行う検査である。従来は外部委託によりPT-INRを得ていたことから、速やかな治療開始や患者からの信頼性の向上などの効果が認められ、治療薬物モニタリングに対しての薬剤師の寄与による効果を高く評価できた。また、POCT機器の利用価値を実感することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24~25年の研究実施計画に、「研究室のような特殊環境ではなく、患者に近い保険薬局等でリアルタイムに定量ができる方法の開発を進める。目視での比色定量や、抗原抗体反応を利用した市販の妊娠診断薬のようなスティック検査薬の作製を目指す。生活習慣病などの自己採血用の検査キット等の簡便検査キットとして有効に活用できれば、実効性もより向上すると考えている。」と記載していたが、方法の開発から実施すると実際の使用がさらに遅くなることから、「保険薬局等でのリアルタイム定量法」として「11.現在までの達成度」に述べた被験者の傍らで医療従事者が行う検査であるPOCT製品の利用を考慮する。PT-INR測定や生化学検査POCT製品、イムノクロマト法による血中テオフィリン濃度目視判定製品など市販品の利用を行うことで、精度高く保険薬局でのリアルタイム定量が可能となる。 保険薬局等でのリアルタイム定量できない薬物については、唾液、尿、浸出液が「11.現在までの達成度」に示した理由により、すぐに得ることができないため、血液を用いたより簡便なサンプル採取法・送付法とする研究の推進を考慮している。最近、乾燥血液スポットによる血中薬物の抽出・保存・移送カードが開発され、液体クロマトグラフィー質量分析計(LC-MS/MS)を利用した定量分析が報告されている。乾燥血液スポットであるため、採取が簡単であり、室温保存であるためドライアイス等が不要である。自己採取した乾燥血液スポットによるがん検査を郵便局が「郵送検診」として実施しているように、遠隔施設からの輸送が容易となる。従って、乾燥血液スポットを用いて当研究室に存在するGC-MSを用いた抗けいれん薬(HPLCでは検出できず免疫学的定量法では血漿量が多い、バルブロ酸ナトリウム、ガバペンチンなど)の定量法の開発を実施する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
広島大学疫学研究倫理審査委員会での審査が承認された後、すみやかに保険薬局におけるマイクロTDMを実施したいと考えている。さらに研究実施計画に述べているように、疾病の種類、対象患者の差異(患者の年齢(小児、成人、高齢者)、病態別(腎機能正常者、腎機能障害患者、肝機能障害患者)の検討を行っていくよう進めていく。この実施のため、採血管や分析試薬の購入を行う。 上記「今後推進方策」に記載している保険薬局でのリアルタイム定量の研究を実施してくため、POCT製品の購入を行う。POCT製品実施器具・試薬の購入を行う。 また、定量分析用の乾燥血液スポットディスク、GC-MS試薬の購入を行う。
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