2012 Fiscal Year Research-status Report
同一薬効成分の医薬品適用時におけるヒト肝毒性イベントのリスク予測法に関する研究
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23590187
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
中嶋 幹郎 長崎大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (00260737)
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Keywords | 薬剤反応性 / 薬剤性肝障害 / 後発医薬品 / ヒト肝細胞キメラマウス / トキシコゲノミクス / 品質試験 |
Research Abstract |
本研究の目的は、①ヒト肝細胞キメラマウスとトキシコゲノミクスの手法を活用することで、同一薬効成分を有するものの製剤中の添加剤が異なる医薬品をヒトに使用する場合の薬剤性肝障害リスクを予測する評価系を開発すること、ならびに ②その評価系を用いて、重篤な肝障害の副作用が懸念されている後発医薬品のヒト肝障害の発症リスクに関する情報を精査し、臨床現場で必要とされている後発医薬品の品質に関する実用性の高い安全性情報を発信することである。 そのため国内共同研究者である島田卓研究員(フェニックスバイオ)、長塚伸一郎研究員(積水メディカル)ならびに立木秀尚研究員(東和薬品)らと研究チームを組織し、平成 24 年度は、代表的な HMG-CoA 還元酵素阻害薬のプラバスタチンとシンバスタチンの先発医薬品と後発医薬品をモデル製剤に選び、ヒト肝細胞キメラマウスを用いてヒト肝遺伝子発現の変動を解析し、平成 23 年度に得られたアトルバスタチンの実験結果との関連づけを試みた。その結果、ヒト肝細胞キメラマウスへ製剤を投与し、肝毒性イベントの原因ともなる 18 個の主要な代謝経路のヒト肝遺伝子群に関して製剤間の発現パターン変化を比較したところ、どの製剤でも多くの代謝経路でほぼ一致したパターン変化を示し、製剤間での有意差は見られなかった。このことから、3 種類の HMG-CoA 還元酵素阻害薬の先発医薬品と後発医薬品のヒト肝毒性イベント関連遺伝子群の発現変動には同等性が認められた。さらに臨床現場で先発医薬品の薬剤性肝障害リスクが問題となっているモサプリドの後発医薬品の品質試験に本法を応用した。本法は、ヒト臨床試験とは別の方法で製剤由来のヒト肝障害リスクの予測が可能なため、販売開始時に十分な規模の臨床試験データの提供が困難な後発医薬品を臨床現場で安心して使用するための有益な新技術になると期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究計画の遂行に当たっては、ヒト肝細胞キメラマウスを用いた被験医薬品のヒト肝遺伝子発現解析が最も重要な実験であるが、平成 24 年度は研究実施計画に記載したとおりの検討を行うことができたため、「②おおむね順調に進展している。」と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
当初計画どおりに今後も研究を推進していく計画である。しかし万が一当初計画どおりに進まない場合、確実に成果に結びつく研究計画を強力に推進する。また、本研究計画を遂行するための研究体制のなかで、適宜意見交換を行い、本研究計画を効率的に推進していく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究計画では、消耗品の実験用動物の購入費用が研究費の大半を占めているが、平成 24 年度はその購入に別の予算を充てることができたので、研究の推進に支障ない状態で、次年度に使用する予定の研究費が生じた。したがって、今後は当初の計画以上に本研究を進展させることを目標に、次年度の研究費とあわせて使用する計画である。
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